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19.弟を部屋まで送りました。

すみません。更新間に合わなくて日付越えました……。

 2日目は領軍の視察だったので、レイモンド様は朝からとてもいい笑顔で過ごしている。

 ちょっと訓練に参加したいとか言い出した時は驚いたが、エリファレット様が止めてくれた。視察だということを思い出してくれたようで、レイモンド様もすぐに引いてくれた。


「すみません。他の領地の軍を見る機会なんてなかなかないもので、つい浮かれてしまいました」


「また来ればいいよ。視察じゃない時に」


 また来る気なのか?とレイモンド様以外の周りの人間が皆思ったようで、殿下を見た後私の方をじっと見ている。

 そんなに第一王子の友人の地位が羨ましいなら、もっと好かれるように頑張ってくれとしか言えない。


「……領軍基地に入るには色々と準備がいるので、次は早めにお知らせいただけると有難いです」


 来るなと言っても無駄そうなので、せめて2日前に知らせるのは今回だけにして欲しい。






 本日の予定も無事に終わり、今回の視察の全行程が終了した。

 今日もエリファレット様に呼ばれているので、終わったといっても全く気が抜けない。

 昨日庭で、お義父様へ伝えることは全部伝えたと言っておいたので、今日は返事を聞いてきて欲しいとのことだった。

 まずお義父様のところへ行こうと廊下を歩いていると、誰かが話しているのが聞こえた。

 私が義母に似ていると話すこの声は……


「イェーツ様。……義弟が何かいたしましたか?」


「……アリア嬢」


 私を見て顔をしかめたイェーツの前に、壁際に追いやられて顔色を失くしているジョシュがいた。

 2日前にエリファレット様にビビってから大人しくなったと思っていたのに、この男はまた我が家の人間にちょっかいをかけているのか。


「いやいや、ただ世間話をしていただけだよ。君が亡くなったイクスベリー夫人にとても良く似ていると話していたんだ」


 ……確かにそんな話をしていた。

 ジョシュは全く話していなかったので、一方的にイェーツが話していただけだが。

 しかしジョシュの様子が尋常ではない。

 顔色が悪いし、よく見ると大量の汗をかいている。

 大人の男性に壁際に追いやられて恐怖を感じたのだろうか?とりあえず割って入ることにする。


「そうなのですか。義母に似ているのは偶然とはいえ嬉しいです」


「果たして偶然だろうか?イクスベリー卿にとって君は娘ではなく女なのではないかな?そのうち夜伽を命じられるかもな」


 ニヤァと嫌な笑いを浮かべながら低俗なゴシップ誌のようなことを話す男を、愛想笑いを浮かべながら内心冷めた目で見る。

 7歳の子供に何を言っているんだこの男は。


「申し訳ありません。どういう意味なのか分かりかねるのですが……」


「はっ。話が通じないとは、やはり育ちが育ちだと教養もないようだな」


「では私の友人に尋ねてみることにします。彼なら教養も最高のものを身に着けておられるでしょうから」


 イェーツの顔がさっと青くなり、顔を引きつらせた。


「で、殿下に尋ねるなど……己の無知をさらすようなことは慎め!」


「誰とは申し上げておりませんが、私の友人は無学な私を責めたりは致しません」


 にこりと笑うとイェーツは後ずさり「とにかく恥だから言うな!」と捨て台詞を吐いて去っていった。


 後ろにいたジョシュの方を見ると、両腕で自分を抱きしめるようにして俯いていた。


「ジョシュ?大丈夫?……何か言われたの?」


「……僕も……せめて母様に似ていれば……」


 普通は聞こえないようなとても小さな声だったが、私の耳は拾ってしまった。


「……ジョシュ」


「何も言われてないよ……大きい大人の人にびっくりしただけ……」


 そんな顔色で引きつるように無理に笑わなくてもいい。私は何も聞くつもりはない。


「そう……それは怖かったでしょう。部屋まで送るわ」


 部屋まで送る間ジョシュはずっと顔を下に向けて、一言も話さなかった。

 私はジョシュの部屋の扉が閉まるのを見届け、お義父様の部屋へ向かった。


 エリファレット様の件を話した後、私はジョシュがイェーツに絡まれていたことをお義父様に報告した。


「そんなことが……!……はぁ。彼は何故かいつも私を目の敵にしてくるんだ」


「コンプレックスが刺激されるのでしょうね」


 同い年にもかかわらず、片や評判も良く領民の数も税収も右肩上がりの領地の領主で伯爵、片や活気もなく周りから見向きもされない領地の子爵家の次男坊。本人はもちろん爵位は持っていない。

 隣の領地というだけで目に入るのだろうけれども、器が違いすぎてよく比べようと思ったなというレベルだ。


「放っておいても大きな問題はないでしょう。ですがいつだって嫌がらせの標的になるのは、その時一番弱い人間です」


「……そうだね。視察が終わるまでジョシュアには執事を一人付けることにするよ。アリアは大丈夫?」


 お義父様が肩を落としながらそう言った。子供のことまで気が回らなかったことを気にしているのだろうか。

 仕事が忙しかったのだから仕方がない……とは大人だけにしか通じない言い分か。


「はい。彼は貴族であることだけが誇りのようなので、友人の名を出せばすぐに終わります。お義父様はお義兄様とジョシュのことだけフォローしておいてください」


 イクスベリー家には執事は3人しかいない。執事は一人雇うごとに税がかかるので、あまり数がいない。

 私にまで付けたら家を管理してくれる者がいなくなる。そもそも付ける必要もない。


「そうか……。ありがとう」


 お義父様が力なく笑う。

 何かを言おうか迷っているような様子なので言葉を待ってみたが、沈黙が続くだけだった。


「お義父様」


「ん?」


 何かあることはわかっているが、私がここで聞くことが、果たして最善なのか判断が付かない。

 けれどこれだけは確認しておきたい。


「お義父様はジョシュアを愛していますか?」


 お義父様が驚いたように目を見開いた後、しっかりと私を見つめた。


「もちろん愛している。ジョシュアは私の可愛い息子だ」


「そうですか……それは良かった」


 それだけが知りたかった。他を知らなくても何の問題もない。


「では私はもう行きます。エリファレット様をお待たせしていますので」


 結構な時間が経ってしまった。これ以上第一王子をお待たせするわけにはいかないだろう。

 退出するため扉へと向かう。


「君は大人びているけれど……この件に関してはどこまで話していいのかわからないんだ……」


 部屋から出る前に途方に暮れたような声でお義父様が言った。


「私はお義父様の判断に従います。話すも話さないも、お義父様にとって最善だと思われる方を選んで下さい。……失礼いたします」


 扉が閉まる声と重なって、お義父様が礼を言う声が聞こえた。






 エリファレット様の部屋を訪ねた私は、まず彼にとって良い知らせを告げる。

 きちんとした調査結果を伝えること……これに関しては本当に上手くやられてしまった。9歳の子供だからと侮ってしまった。

 まぁもう仕方がないので彼が命を落とさないことだけ祈っておこう。

 お義父様が気にするし、私も友人を全く心配しない程薄情ではない。

 伝言は終わったので立ち去ろうとしたが呼び止めらた。

 そのままお茶をすることになったので、レイモンド様も呼ぶことになった。


 お茶を飲みながらニコニコ笑って機嫌が良さそうなエリファレット様の様子を眺めつつ、私はイェーツとのやりとりの話をした。

 もちろんジョシュの詳しい様子は話さずに、だ。


「下世話だな」


 エリファレット様の機嫌が急降下したらしく、真顔でそう言った。イェーツの人格の酷さに気分が悪くなったのだろうか。

 しかし意味が分かるのか。さすが王族。


「7歳の女の子に言うことじゃねぇな……絶対意味わかんないだろ……」


 おや、レイモンド様もわかるようだ。まあ騎士に囲まれていればこんなものか。


「大したこと言ってないから気にすんなよ。忘れて良いから」


「そうなのですか」


 ふふ、気遣ってくれているのか。格好いいな。

 小さな紳士に温かい気持ちになっていると、エリファレット様と目が合ったのでにっこり笑っておいた。

 彼はおそらく私が分かってることに気付いている。


「でもアリアはイクスベリー卿の奥方にそっくりなんだな……」


 あ、レイモンド様がちょっと不安そうな顔になっている。

 おそらくお義父様に不名誉なことを考えて心配しているようだが、それはない。

 前世でそう言った視線を向けられることが多かったので、欲のある目で見られればすぐにわかる。

 まだ7歳だし、お義父様が子供にそのようなことをするはずがないのだ。

 成長した後でお義父様が私と結婚したいのなら、別にそれはそれで構わないしな。血は繋がってないし。

 しかし意味が分かってない体で話していたので、どうやって誤解を解こうか……。


「心配しなくても大丈夫だよ。そもそもイクスベリー卿と夫人は完全な政略結婚だったから、恋愛感情なんてなかった。夫人はどうだったか知らないけれど、イクスベリー卿は家族愛しかなかったようだよ」


 思わぬところからフォローが入った。

 そうか、恋愛感情はなかったのか。まぁ貴族の結婚なんてそんなものだよな。


「なんでそんなこと知ってるんですか?」


 レイモンド様が不思議そうに尋ねる。確かに何で知っているんだ?


「だって夜会で二人揃って挨拶に来たことがあったから。第一王子だからね。それにあの世代は特定の女性を想っている人が多いから目立つんだよね」


「え、ま、まさか」


 レイモンド様が顔を引きつらせている。どうしたんだろうか?


「そう。イクスベリー卿は君のお母上、ステラ・ルートレッジ夫人に好意を抱いていたんだ」


 レイモンド様が頭を抱えて動かなくなってしまった。






何でそんなに執事がいるんだよ!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、乙女ゲームの世界なのでいっぱいるんです。家の出納管理もハウスキーパーではなく女主人か執事がやります。ハウスキーパーとか言われても大半の乙女ゲームユーザーは、え?家政婦さん?くらいにしか思わないのでそんな役職はカットカット。


アレクシアは口元にほくろがある巨乳のお色気系という外見設定の為、そういう目でよく見られていました。



―――――――


※追記です。「片や活気もなく周りから見向きもされない領地の子爵の無爵位の次男坊。」→「片や活気もなく周りから見向きもされない領地の子爵家の次男坊。本人はもちろん爵位は持っていない」に修正しました。

ご指摘ありがとうございました!




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