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18.魔法を使いました。

すみません。また更新前に寝落ちしました。

 お義父様が難しい顔をして無言で考え込んでいる。

 その様子をじっと見ていると視線に気付いたお義父様が口を開いた。


「……どの領地に行くつもりなんだろうか」


「基本すべて回るようですよ。古参貴族派も含めて」


 先ほど聞いた情報を伝えると、お義父様が頭を抱えた。


「完全にアウェーじゃないか。命が惜しくないのか?」


「私もそう思うのですが、本人は死なない自信があるそうです。詳しくは今後に差し障るので言えないそうですよ」


「…………」


 お義父様が迷っている。何をどう選択してもエリファレット様は危険でしかない。

 視察をやめるよう説得したところで、もう陛下に話は行ってしまっている。


「彼は……王を目指すそうです。リスクを取ってでも得たいものがあるのでしょう」


「……!そうか。そう決められたんだね……」


 それは母である王妃との完全な決別を意味する。お義父様が悲しそうな顔をした。


「これはもはや彼の生き様の話です。家族ではない私達が彼の選択に口を出すことはできない。よって責任もない。……そんな顔しないで下さい、お義父様」


 お義父様が悲しそうな顔から辛そうな顔になってしまった。

 しかし人には領分というものがあるのだ。

 孤独な子供を手助けしたいという気持ちはわかるが、危険だからお前の願いを諦めろとは、保護者でもないお義父様は言ってはいけない。

 だからエリファレット様の生死に責任を感じる必要もない。


「!……誰か来ました。とりあえず、私はお義父様の決定に従いますので」


 こちらに歩いてくる音が聞こえる。この話を誰かに聞かれるわけにはいかないので、早急に話を終わらせる。


「え、そうなの?すごいな全然わからないや」


「少しだけですが、身体強化で聴力を上げていますので」


「ずっと上げてるの?大変じゃない?」


「本当に少しだけです。ちょっと耳がいい程度ですよ。あまり上げると雑音が響くので」


「えぇぇ……道具も使わず魔法を常時展開するなんて聞いたことないんだけど」


 身体強化は外部に事象を起こすわけではなく、さらに己の魔力しか干渉しない体内でしか使わないので、使う魔力が極端に少なくて済む。その為、魔力だけを見るなら常時展開が可能だ。

 その代わり通常の魔法では補助装置であるスロットで行っている出力や位置指定の演算を自分の感覚のみで行う為、技術の習得が難しく、ゴールがない。


 執事長のケネスが来たようで、お義父様が入室を促す。


「恐れ入ります。ルートレッジ様が旦那様にお願いがあるそうです」


 執事の影に隠れていたレイモンド様がぺこりとお辞儀をした。






 何の話かと思えば、夕食までの間、体を動かしたいから庭を貸してくれとのことだった。

 客人だけで走り回られても皆が困惑するので、私が家人として付くことになった。

 エリファレット様も来るとのことなので、部屋まで迎えに行く。一日中ほとんど彼と一緒にいる気がするな……。


「悪いな、付き合わせて」


「いえ、お気になさらず。ただ、武器を使っていただくわけには行きませんが」


「走り込みさせてもらえるだけでいいよ。昨日は馬車での移動ばっかりで、全然訓練出来なかったし」


 第一王子の側近候補になっても訓練を続けるのか。ということは側近にはなる気はないのか?


「レイモンド様は騎士を目指してらっしゃるんですか?」


「そ。家族もほとんど騎士だし。頭使うのも苦手だからさ。王子の側近とかマジ向いてねぇの」


 まぁ向いてるか向いてないかで言えば確かに向いてはなさそうだが、第一王子との相性はいいと思う。


「そうですか。まぁ護衛を兼ねていると思えば……」


「護衛出来るほど強くねぇよ」


 おや、意外と謙虚だ。この年の子だと自分を過大評価しがちなのに。自分を客観視出来るのは強みになる。


「まだ10歳ですものね」


「おう。今後の成長にご期待いただきたいね」


 ニッと笑ってこちらを見た彼が、何かを思い出したような顔をした。


「そういやアリアは身体強化魔法が使えるんだよな。7歳で使えるとか焦るわ。俺もじいちゃんに頼んで練習し始めようかなぁ」


「あまり早くから魔法を使おうとすると暴走の危険性が高まりますから、許可は降りないかもしれませんね。実際、事故も多かったはずです」


 魔法は12歳から習い始めるのが普通だ。

 貴族は半年早めたりもするが、たまに見栄の為にそれ以上早く習わせようとする親がいて、子供の魔法暴走事故は結構起きている。危険なのであまり勧められない。


「アリアは使ってんじゃん」


「私は……たまたま運良く暴走しなかっただけです」


 前世の記憶があるから使えるだけだ。言わないけれど。真似して暴走されても困る。


「……ふーん。なぁ、使うのに抵抗がないなら、ちょっと使ってみてくんない?」


「は?」


「鬼ごっこしよう!」






「マジかよ、全然、捕まんないんだけど……。俺、結構訓練してんのに……」


 レイモンド様が息を切らしながら庭に手足を付いている。少し離れてみていたエリファレット様も近づいてくる。


「ええっと……逃げるのは得意なんです。加減はするなとのことでしたので……」


「7歳の子に手加減されたらショックすぎるだろぉ」


 ゴロンと転がって仰向けに寝転びながらレイモンド様が言った。確かにそれもそうだな。


「あーでもこんだけ体格差があっても捕まえられないんだな。息も切れてねぇし。すげぇな身体強化魔法って」


「そうですね。使えると便利だと思いますよ」


 10歳と7歳では体の大きさや身体能力が全然違う。

 普通に鬼ごっこなどすればものの数秒で捕まるだろう。

 大の大人からすら逃げることができるこの魔法は本当に便利だと思う。


「上位騎士くらいしか使える人見たことなかったからさ、どんだけのもんなのかよくわかんなくて。使えたら強くなるって話は聞いてたけど、もともと強い人が使ってても実感わかなかったんだよな。習得が難しすぎて結構諦める騎士も多いんだけど……こんだけすごい魔法だって見せられたら絶対習得したくなったわ。ありがとな」


「いえ」


 寝転がっていたレイモンド様が起き上がる。

 もう息が整っているところを見ると、普段からよく訓練していることがうかがえる。


「殿下もお付き合いいただきありがとうございました」


「いや、私も興味深いものが見られたから」


 レイモンド様の様子を見ていたエリファレット様が薄く笑ってこちらを向いた。


「本当に魔法が使えるんだね。身体強化ってすごく便利そうだけど、コツとかってあるの?」


「コツ……とかはないですね。ただただ訓練するしかありません」


 そう、3年くらいひたすら訓練してやっと簡単な身体強化魔法が使えるようになる。便利だが訓練は大変だ。

 しかし諦める騎士が多いというのは……ちょっと情けないな。


「いつの頃から訓練してるんだ?」


「……覚えてません」


 前世からですとも言えず、具体的な年数を言うわけにもいかないので、とりあえずぼやかして答える。


「マジかよ。そんな前から?」


「……へぇ。そっか。見せてくれてありがとうアリア。急に側近候補とか頼んじゃったし、レイモンドにもメリットがないとなと思ってたんだ」


「そんなこと考えてたんですか」


 レイモンド様が驚いた様子でエリファレット様に言った。すごく意外だったようだ。


「うん。期間限定とはいえ、急な話だったし」


「期間限定なのですか?」


「レイモンドは王子の側近には向いてないよ。そもそも騎士になりたいんだし。ね?」


「あぁ。本格的に側近にって話だったらそもそもじいちゃんが断ってる。俺が騎士になりたいことも、勉強が苦手なことも知ってるしな。王族ってのがどんなもんなのかを知って、今後に生かすための研修みたいなもんだ」


 知らなかった。仲のいい様子から、てっきりずっと側近として使っていくのだと思っていた。彼の意志を無視してでも。


「1、2年くらいかな?ちゃんとした側近が決まるまでの期間限定。その後は、そうだな。レイモンドと話すのは楽しいから、いい友人になれたらいいと思ってるよ」


 ふわっと笑ったエリファレット様の顔が年相応に見えた。


「……………………走ってきます。訓練の、続き」


 そう言って勢いよく駆けていったレイモンド様の顔が赤いように見えたのは気のせいではないだろう。

 エリファレット様も気付いていたのか隣でクスクス笑っている。


「彼を側近候補にしたのは一番都合が良かったからなんだけれど、こんなに楽しくなるとは思ってなかったんだ。前を向いているといいことあるね」


「そうですか。それは良かったですね」


 隣から聞こえるのはとても穏やかな声だったので、彼に気の合う友人が出来て良かったと心から思った。


「アリアと会えて良かった」


 どうやら私のこともいいことに入れてもらえるらしい。


「光栄です」


 すごい勢いで庭を走りまわっているレイモンド様を見ながら答えた。






アリアは発想が貴族なので、王族が貴族の意思を無視するのは普通のことだと思っています。

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