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16.さらにお茶をしました。

 扉がノックされ、お義兄様とジョシュが来たことを伝えられた。

 エリファレット様が許可を出し、2人が入室する。


「お茶にお招きいただきありがとうございます。エリファレット殿下」


 お義兄様とジョシュが頭を下げて挨拶をする。エリファレット様が席を勧めて、メイドのノエルが手早くお茶を用意した。


「学園に入ったらランバート殿とは同学年になるかな。ジョシュア殿は後輩になるね。よろしくしてくれると嬉しいよ」


 殿下から話題を振ってくださった。やはり視察先の情報は頭に入れてあるみたいで、9歳なのにさすがだなと思った。


「はい、そうなる予定です。ありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します」


「あ、ありがとうございます!よろしくおねがいします!」


 お義兄様は普通だが、ジョシュは緊張して固くなっているのがわかる。その様子をほほえましい気持ちで見る。


「さっきまで勉学の話をしていたんですよ」


 私も二人が話しやすいよう話を振ることにした。そしてさっきと同じような展開になった。


「へぇ、私よりも進んでるのか。教育熱心だったんだな」


「え、兄様よりも……?姉様の方が年下なのに?」


「普通じゃないのはアリアの方だから。ランバート殿は普通だ」


 驚いたジョシュにレイモンド様が話しかける。やっぱり前世の国の方が教育スピードが速かったらしい。

 完全に失敗したが、やってしまったものは仕方がない。どうせ最終足並みは揃うのだから問題ないだろう。


「私はこれから仕事と訓練で勉学の時間があまり取れなくなるので、勉学の習得スピードは皆さんに抜かれていくと思いますよ」


「仕事って?」


「現在義父に頼んで領府で雑務をさせていただいております」


「え、姉様そんなことしてるの?」


「すげぇ。フォローのつもりっぽいけど斜め上すぎる。全力で凡人を置いていくスタイル。あと訓練って何?」


 お義兄様とジョシュがいるからか、同じ流れでもレイモンド様は元気そうだ。ただ順応力が高いだけかもしれないが。


「義父に頼んで魔法と剣と徒手格闘技を学ぼうかと」


「え、魔法はまだ早いんじゃないか?他の二つも怪我をするし危ない」


 お義兄様が心配そうにこちらを見て言った。心配してもらえるのは嬉しいが、安心してもらいたい。


「いえ、魔法はもう使えるので問題ありません。ですからイクスベリー家に迎えられたのです。私が現在使える魔法は身体強化魔法なので、剣と格闘技を習いたいと思ったのです。怪我をしても自分のものなら治せるので大丈夫ですよ」


「………………」


 みんな黙ってしまった中、エリファレット様だけが楽しそうに笑っている。


「わぁ。思ったより規格外だね」


「それはその通りですが、殿下も十分規格外ですからね」


 さっきも言ったが私は普通の範囲内の人間だ。ただ中身が年相応ではないだけで。

 しかし前世の記憶があることを説明する気はないので、もうその評価は甘んじて受けようと思う。


「レイモンド様は殿下にもはっきりとものを言うんですね。2日前に初めて会ったとの事だったけれど、まるで昔からの知り合いのようだ」


 お義兄様に指摘されて、レイモンド様はしまったという顔をしている。


「えーっと、いや、一応殿下のお許しはいただいてて……。というかそもそも最初側近候補って言われた時、俺は騎士達に囲まれて育ってきて言葉遣いが荒いし、丁寧に話してもボロが出るからって辞退を申し出たんだ。でも気付いたら根回しされて断れなくなってて、殿下に直談判したら、別に話し方は気にしなくていいって言われたからさ。てか本当はこれ建前上の断り文句だったんだけど、黙ってたって殿下には何考えてるか大体わかっちゃうし、もう折角だしお言葉に甘えようかなと。だからあんまり深く考えずに思ったことは言うことにしてるんだ。言っても言わなくても変わらないなら俺は言っちゃった方が断然気が楽だし」


「私も側近に四六時中肩肘張られても息が詰まるしね。彼には悪意がないし、あと面白いから」


 すごい持論が出てきたが、エリファレット様が納得しているならそれでいいと思う。子供同士のことだしな。


「黙っててもわかっちゃうんですか?」


「あぁ。殿下は人の感情がわかるんだ。ガチで。今も全員の感情読んでるはず」


「え……」


「……」


 お義兄様とジョシュの顔に怯えが浮かんだ。その反応を見て、ちらっと殿下の方を覗ったが平気そうな顔をしていたのでホッとする。

 少しでも気持ちが軽くなればと、私はジョシュに話しかける。


「感情がわかるだけで細かいところは伝わらないようだから、安心して。エリファレット様は慣れてらっしゃるし、嘘さえつかなればどうということはないと思うわ」


「そうだね。犯罪に関わることとか、余程変なこと思ってない限り、慣れてるからいちいち過剰反応したりしないよ」


「そうなのですか……」


 私とエリファレット様の言葉で、お義兄様とジョシュは困惑しつつも少し警戒を解いてくれたように見える。


「……姉様は、殿下とお友達だから平気なんだね」


「友人じゃなくても別に平気よ?上は有能な方が下は働きやすいもの」


「……?」


「やっぱり感性が奇抜でフォローになってないし。弟がよくわからないって顔しちゃってるだろ。しかしアリアも殿下に対して遠慮がなくなってきたよな」


 ……確かにレイモンド様に引きずられていらないことを言い過ぎたかもしれない。指摘されて初めて気付いた。

 第一王子相手に砕けて話しすぎた……。


「そうだね。順調にアリアと親しくなれて嬉しいな」


 ……当の本人が嬉しそうなので良しとしよう。しかし周りに部外者がいるときは気を付けなければ。


「あの……殿下、一つお聞きしても?」


 お義兄様がえらく真剣な様子でエリファレット様に問いかける。


「何かな?」


「今回の視察はアリアに会いに来たんですか?」


「そうだよ」


 エリファレット様はにこやかに断言したが、私は多分それだけではないと思っている。


「殿下は婚約者はもうお決めに……?」


「それは私の一存で決められることではないから」


 何故いきなり婚約者の話題?お義兄様、話飛びすぎじゃないか?

 隣でジョシュもちょっと不思議そうな顔してるから。普通そうに見えていたが、王子相手だから緊張してるのか?


「第一王子殿下はやはり上位貴族の方とご婚約されるのでしょうね」


「まぁ、そうなる場合が多いかな。そうじゃないことも結構少なくないけど」


 お義兄様とエリファレット様がお互いの顔をじっと見つめ合っている。何だこの空気は。


「私のことを警戒したって意味がないよ。まだ土俵にすら乗ってないから。君も、もちろん私もね」


「それは……」


 コンコンコン

 お義兄様の言葉を遮るようにノックの音が響いた。扉の向こうからお義父様が来たことを告げられる。

 エリファレット様が許可を出し、お義父様が入ってきた。夕食の用意が出来たのでエリファレット様を案内するためにやってきたらしい。


「仲良くなられたようで何よりです」


「うん。歳が近いもの同士で楽しい時間を過ごさせてもらったよ」


 では行こうかとみんなで食堂に移動し始める。レイモンド様が今日一番の笑顔になっている。どうやらお腹が空いていたようだ。

 色々と、そう色々と疲れているだろうから存分に食べてほしいと思う。


「ランバート殿」


 応接室から出る前にエリファレット様がお義兄様に声をかけた。


「今のところ私よりも、彼の方が大きな壁なんじゃないかな」


「……」


「殿下?」


 お義父様に目線をやりながら話すエリファレット様の言葉をお義兄様がじっと聞いている。

 お義父様がすごく不思議そうだし、黙ってないで返事してほしいが……これは、あれかな?ちょっと良くわからないが、警戒とか壁とか言ってるし、ライバル的な友情が結ばれようとしているのか?

 男同士の話は難しいことがあるからな……人生も2度目だというのにまだ読めないとは、やはり私もまだまだだな。


「やべぇすげぇ面倒くさいことになってる。巻き込まれたくないな……」


「あ、そういえばさっき2回も呼び出しちゃって悪かったね。レイモンドはうっかりさんなんだ」


「……そうなのですか。いえ、お気になさらず」


 エリファレット様の言葉にやっとお義兄様が言葉を返す。まさかここでその話を出すとは。

 レイモンド様が驚いたように殿下を見た後こちらを見てきた。さっと目を逸らすことしかできない。

 彼が小声で「うおおお……」と言っているのは聞かなかったことにした。






1日目終了です。登場人物めっちゃ増えましたね。配慮はしてるつもりなんですが、誰が誰だか混乱するようなら教えてください。私はあまり読まない、というか全力ですっ飛ばすんですが、人物紹介がいるようならどっかに入れます。

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