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14.自己紹介してもらいました。

 とりあえず殿下たちを大人数用の応接室に案内し、互いに自己紹介することになった。

 ホスト役の私たちから挨拶を行い、次に殿下たちに自己紹介してもらう。


「知ってると思うけど、私はエリファレット。で、彼ら3人は私の側近候補だよ」


「ユリシーズ・アップソンです」


「ヴィクター・ベルナッザです」


 同じ馬車から降りてきた15,6歳くらいの青年二人が名乗る。アップソン家とベルナッザ家は古参貴族派……つまり彼らは王妃の意向で付けられている者たちだろう。


「……レイモンド・ルートレッジです。3日間お世話になります」


 エリファレット様より少しだけ歳上に見える少年が言った。ルートレッジ家は確か代々優秀な騎士を輩出している家系で、派閥争いからは距離を置いている中立派だ。……なんだ。孤立してたわけでは無かったのか。


「ルートレッジ?……ということはトレヴァーとステラのご子息かな?彼らとは学友だったんだ。……お互い忙しくて卒業後は全然会えていないけれどね。まさか殿下の側近候補になっているなんて知らなかったな」


 お義父様とルートレッジ様のご両親はお知り合いのようだ。しかし側近候補だったことは知らなかったみたいだ。

 エリファレット様が孤立させられてるという情報を持ってきたのはお義父様だものな。


「えぇ……2日前からですけど。というか殿下と初めてお話ししたのも2日前ですけど」


 は?話してすぐ側に置いたのか?しかも2日前に?


「え?2日前?……え?」


 お義父様が困惑している。それはそうだろう。普通ありえないことだ。


「いきなり側近候補にと言われて、視察に付いてくることになりました……。至らないところも多いと思いますが、よろしくお願いします」


 よく見るとルートレッジ様はかろうじて笑みを浮かべている状態で、目から生気が失われている。

 私達はそっと殿下の方を見た。


「うん。スカウトしちゃった。話は通してあるから問題はないよ?じゃあ次の人いこうか」


 エリファレット様がいい笑顔でにっこり笑って次を促した。

 ……ルートレッジ様、頑張ってください。






 自己紹介が終わった後は、全員とりあえず夕食まで部屋で休んでもらうことになった。

 5台の馬車のうち3台は護衛が乗っていたので、実質視察に来たのは殿下たち以外では5人だ。

 そのうちの4人は、殿下とお近づきになるべく、高位貴族の子弟で下位爵位を持っている人間がねじ込まれていた。全体的15歳から20歳くらいで若い。

 しかし1人だけ、もともと視察に来る予定だった者がそのまま残っていた。

 つまり、お義父様に難癖をつけたい人間ということだ。


「アリア嬢、聞いているのか?」


 部屋で休んでいろと言ったのに勝手にうろついていた上に私に絡んできたこの男は、隣の領地の領主の息子で、ザン・イェーツという。

 お義父様と年が変わらないので視察団の中では一番年上だが、一人だけ爵位が無いため、先ほどまで借りてきた猫のように大人しかったのだが……自分が企画した嫌がらせが上手くいかなくて鬱憤が溜まっていたらしい。

 そこにたまたま通りかかった私に絡んで、なんとかイクスベリー家にケチをつけたいようだ。しかし……


「やはり元が平民だと我々貴族の高尚な話は理解できないか。どうせ魔力が高いだけの親に捨てられた子供だろう。言っとくが貴族になったからと言って浮かれるなよ。お前の居場所なんてどこにもないのだから――」


 ……すごく的外れなことを延々と言われる身にもなってほしい。

 全く意識に引っかからないからリアクションが取りにくいんだ。笑って聞いてるしかない。

 しかも相手は爵位持ちでもない子爵家の次男坊。大した権力もないから全然危機感が湧かない。

 腕力で敵わなくても逃げればいいしな。人目もあるし、私を捕まえられる人間はそういない。


「しかし殿下もわざわざ視察に付いて来られるなんて……領民を付けあがらせる施策ばかり行う領を見たって何にもならないだろうに」


 イェーツ子爵領は豊かではない。いや、貧しいと言ってもいいくらいだ。町で暮らしていた時もいい噂を聞いたことがない。

 先ほどからの選民思想の発言と平民から金を集めるのは当然といった施策ばかりの領、典型的な無能な貴族というやつだな。


「つけ上がらせてなにか不都合があるのですか?」


「は?当然だろうが」


 私が言った言葉に一瞬不愉快そうな顔をしたが、リアクションを返したことでこちらを傷つけることに成功したと思ったのか、にやりと笑った。


「あぁ、お前は平民だもんな。でもな平民なんて貴族様の為に存在してるんだよ。代わりなんていくらでも湧いてくるんだから、きちんとしつけて上下関係わからせて反抗しないようにしないと」


 ……馬鹿のさえずりがうるさいな。

 役割り上で代えのきかない人間なんているわけないだろ。貴族も平民もあるか。お前の代えだっていくらだって湧いてくるわ。

 役割り上で代えがきいても関係性の上で代わりがいないんだよ。だから失えないし、大切にしなきゃいけない。

 むしろ貴族の方が世の中を回すためだけの歯車だから、いくらでもすげ替え可能だろ。


「そうですか」


 はぁ。馬鹿と関わるのは疲れる。早く終わらないかな。


「おい!聞いてるのか平民風情が……」


「アリア」


 私たちに掛けられた声の先にはエリファレット様がいた。というかさっきから物陰にいた。

 何してるんだ彼は。視察のためにイェーツの人となりが知りたいのかと思ってたのに途中で止めるのか?


「あ……殿下これは……」


「お茶でもどう?レイモンドを紹介したいんだ」


「はい、ありがとうございます。光栄です」


「じゃあ行こうか。あ、イェーツ殿は疲れてるだろうし部屋に戻ったら?」


 青い顔をしたイェーツを残してエリファレット様の後に付いていく。


「途中で止めるとは思いませんでした。人となりはわかりましたか?」


 エリファレット様はちょっと驚いた表情で振り返って、花が咲いたように可憐に笑った。


「うん、そうだね。参考になったよ」


 相変わらず綺麗に笑うな彼は。これは為政者として彼の武器になるだろうなと、歩き出した姿を見ながら思った。






 客間の方に向かおうとしたら、速足で歩くルートレッジ様を見つけた。

 同時に向こうもこちらを見つけ、速足、というかほぼ走って駆け寄ってきた。


「どこに行ってたんですか!」


 まさか……何も言わずに出てきたのかこの方は。護衛も側近もいないからおかしいとは思ったんだよ……。


「アリアをお茶に誘いたくてさ」


「俺も連れてってくださいよ!いや、ていうかむしろ俺が呼んできますから」


「それは駄目でしょ。側近候補なんだから側から離れず手配しないと」


「いや、実際離れてる上に殿下が呼んで来ちゃってますから。より悪い方選んでるのに何で俺が注意されてるんですか」


「ふふ、彼面白いでしょ?」


 殿下が楽しそうにこちらを見て話す後ろで、ルートレッジ様の目からまた生気が失われている。

 ……ルートレッジ様、本当に、頑張ってください。






エリファレット様のフルネームはエリファレット・セシル・フラムスティード=フェザーです。でも王族はあんま苗字使わないです。必要な時はエリファレット・ガレリアと名乗ったりもします。どっちでもいい系です。

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