かくかくじかじか
後に聞いたところ、ここはパン屋らしい。
パン屋といっても先に出会ったマダムの大きなパン屋とは別のパン屋。
ここは安価で素朴なパンを売る小さな店だ。
売っているパンは一種類のみ。
手のひらサイズの丸いパンは日々の食卓に欠かせないもので、小さいながらも近所の主婦に愛されている店なんだそうだ。
しかし不運にも1週間ほど前、店を切り盛りしていた父親が荷下ろし際に馬車から落ち大怪我をしてしまう。
もともと細々と商売をしていたため、長期に渡って父親が仕事が出来ないとなると次第に生活も苦しくなってしまう。
そんな時この祭が開催された。
少しでも生活の足しになればと思い屋台にパンを並べたのはいいが…
素朴なパンは単に並べたところで飛ぶように売れるはずもなく、
店番をしていた子供たちは泣きそうな顔をしていた。
そこに通りかかったのはお節介…もとい心優しい我が母上一行。
暗い顔をして今にも泣き出しそうな兄妹の手助けをすることにしたのだそうだ。
と、いうのがかくかくじかじからしい。
近くにいた兄も有無を言わさず手伝わされたようだ。
しかし呼び込みをしても依然としてパンを買う人は増えない。
姿の見えない妹達はカゴにパンを入れて歩き売りしに行ったそうだがそちらもあまり期待は出来ないだろう。
なにせ普通のパンなのだ。
祭で売るにはそぐわないだろう。
俺はしばし考える。
パンを使った…
簡単…食べ歩きに適した軽くて食べやすい…
この街に売ってなかったもの…
悩みに悩んで出した答えは…
揚げパン…?




