もうエンディング?
説明を入れた為、少し長くなってしまいました。
いつも通り自由気ままな家族を見て気が抜けるような気もするが、一人じゃないという事が分かったからか心が落ち着いてきた。
(さてと、気持ちを切り替えなきゃな!)
今の状況を確認しなければならない。
母は相変わらず「お城では夜会が開かれるんですって!素敵じゃない?豪華なドレスを着て踊るんですってよー!!やっぱり幾つになってもドレスって女の憧れなのよー」なんて話している。
(うん、母さんに聞くのはダメだな。
と、なると…)
俺はエリザベスに目を向ける。
エリザベスは俺と目が合うとにこりと笑った。
(か、かわいい…いや、綺麗っていう方が正しいのか?…って違う違う。
エリザベス…さん?はこの国のお姫様だって母さん言ってたよな。エリザベス様って言った方がいいのかな?お姫様だもんな。
この人に聞けば状況がわかるかも知れない。)
そう考えるとエリザベスに話しかける。
「エリザベス様、先ほどは失礼いたしました。
重ねて申し訳ないのですが幾つか質問させていただいてもよろしいでしょうか。
ご存知の通り私は今目覚めたばかりで状況がよく分かっていないので…」
そう言うとエリザベスは微笑みながら答えてくれた。
「なんなりとお聞きください。私が知ることでしたら何でもお答え致します。
それと、そんなにかしこまらないで下さい。私のことはリズとお呼びください。アキラ様達はこの国の…いえこの世界の救世主なのです。アキラ様達より尊い人などこの世界に存在しません。」
(ええぇ…そんなこと言われましてもー。
というか救世主って…。
やっぱりこの世界ヤバいの?救世主って勇者よりも凄そうな響き。)
「じゃ、じゃあリズ…さん。えっと、救世主ということはこの世界は危機に瀕しているってことでいいんですよね?
俺たちは魔王かなんかと戦うために召喚されたってことですか?」
そう聞くとリズさんは小さく笑った。
(…眩しい!)
「アキラ様、魔王はもういません。皆様のおかげで世界は既に救われているのです。」
(どういうことだ?全くと言っていいほど身に覚えがない…というか寝てたし!)
顔に疑問の表情が浮かんでいたのだろう。
リズさんはこれまでの事を丁寧に教えてくれた。
ー世界は魔王の手により絶望に沈み、崩壊を待つのみだった。
しかし突如空に魔法陣が現れ、そこから召喚された我が家が魔王を押し潰し倒したー
と、いうことらしい。
(空から家が落ちたのか…
よく無事だったな…というか…よく寝てたな、俺)
そこでさらなる疑問が浮かぶ。
(魔王って…基本的にラスボスだよな。
ラスボスって強いよな。めちゃ強だよな。ラスボスだから。
空から家が落ちてきたからってそう簡単に倒せるものなのか?)
浮かんだ疑問をリズさんに聞いてみた。
「魔王は確かに倒されました。これがその証です。」
そういうと拳大の宝石を見せてくれた。
宝石には全くと言っていいほど詳しくないが不思議な美しさを持つ石だと思った。
基本的に美しい翠に見えるのだがチラチラと燃えるような赤が揺らめくのだ。
「…この世界では生きとし生けるもの皆平等に死ぬとその魔力が石として遺るのです。
魔石とも呼ばれるこの石は種類はその血に、大きさはその魔力を表すと聞きます。
この魔石は他に類を見ないほどの大きさです。
普通の人間が遺す魔石は大抵小指の爪程の大きさなのですから。」
そう聞くとこの魔石がいかに強大な魔力を持った者のものだと分かる。
(確かにそれなら納得か…)
しかしリズさんはさらに続ける。
「それと……先程石の種類は血を表すと申し上げたのですが、血筋によってある程度石が定められているのです。もちろん変異や例外もありますが。
例えば、あの者は我が国の騎士団長なのですが…」
と父と話している騎士を指差す。
「彼はガーネット家の者です。その名の通り彼らの一族の者は亡くなるとガーネットの魔石を遺します。
このように魔石の大きさや種類によってその魔石の生前の姿が浮かび上がるのですが…」
リズさんはなにか思うところがあるのか手の内の魔石をじっと見つめながら続ける。
「……この魔石はアレキサンドライトいう宝石の一種です。
これは変わった石で、普段はピーコックグリーンに見えるのですが、魔力を込めると紅く色が変化して見えるのです。
もうお分かりになられましたか?私の名前はエリザベス=アレキサンドライト。
魔王は我が一族の者だったのでしょう。
確かに幼い頃にお伽話として聞いた事があります。遠い昔、力を持っていたが為に道を誤った王子の話を。」
そう話すとリズさんはぎゅっと魔石を握りしめた。
(確かにこの魔石の翠はリズさんの瞳の色に似ているな…)
「そういう訳でこの魔石が魔王のものであるという事が分かり、魔王が倒された事が証明されたのです。皆様のおかげで世界に平和がもたらされました。」
そう言ったリズさんの顔には先程までの陰りは消え、元の美しい微笑みが戻っていた。
目が覚めたらラスボスはすでに倒されていました。