見た目はぬいぐるみ、中身は魔王
「あ、リズちゃんだわ!昨日チャイムの位置を教えたのよ!」
母が玄関へパタパタ走っていく。
しばらくしてリズさんとウィリアム先生を伴って帰ってきた。
「おはようございます。」
リズさんとウィリアムさんが挨拶をすると家族の面々も次々と挨拶を交わす。
「おはよう!エリザベス!」
俺の腕の中でマオが親しげにそう返すとリズさんはキョロキョロと辺りを見回した。
声の主がわからなかったのだろう。
(やばっ…流石に魔王がまだ生きているってバレるのはまずいだろ…)
生きているというのは微妙だが、存在はしている。
しかし前のような力が出せるわけでもないが、俺たちの助けとなってくれるとも言っている。
むざむざ渡せばすぐに滅せられてしまうだろう。
それはそれで寝覚めが悪い。
まだ数時間の付き合いだが、魔王はなかなか気のいい奴であった。
(どう切り抜けるか…)
頭をフル回転させる俺をよそに、
「エリザベス、こっちだ!
ここ!ここだってば!」
ぴょこぴょこと手を動かして猛アピールするマオ。
「あら?まぁ!かわいいお人形さんですね!」
リズさんはマオのほっぺを指先でつんつん突く。
マオは俺の腕から抜け出してリズさんの胸へと飛び込んだ。
(ケッ!野郎に抱かれる趣味はねぇんだよ!
ふぉぉぉ!女の子やわらかぁい!)
とでも言ってそうな表情に内心イラっとする。
後で覚えてろよ…
「アキラ様、この子は…」
マオをじっと見ながらそう聞いてくるリズさんを見つめながら考えに考えた結果出たのは、
「…つ、使い魔です。」
それっぽい答えが出来たんじゃないか?
内心ヒヤヒヤしながらリズさんの反応を待つ。
リズさんはなおもマオを見つめている。
「…………」
(だめか…リズさんはお姫様だけど魔王討伐の最前線に出られる程の手練れだからな…)
沈黙が続き誤魔化しきれなかったかと諦めかけたその時、
「すっごく…かわいいです♡」
……へ?
「かわいいですっ!」
そう言ってぎゅーっとマオを抱きしめる。
マオは幸せそうに目を細めていた。
そこ代わってくれませんかね?
「エリザベスよ、我はロッ…「リズさん!マオちゃんはユイが作ったんだよー!」
名乗ろうとしたマオを遮りユイがリズさんに話しかける。
妹よ、ナイスなタイミングだ!
「まぁ、ユイ様が!とってもかわいいです!
降魔の術は存在しますが、人形を依り代にしているのは初めて見ました。
こうやって動いたり話したりする姿が…
なんとも愛らしいです!
でもそれ以上にそのお姿が可愛すぎます〜
ユイ様すごいです!」
乙女モード全開でリズさんはマオをうっとり見つめていた。
マオはなぜか自慢げに胸を張っていた。
「そんなに気に入ってもらえるなんて嬉しいなー。
あ、そうだ!じゃあさ、リズさんにもぬいぐるみ作ってあげるよ!
マオちゃんみたいに動かすことはできないけど…」
妹が照れながらそういうとリズさんは目を輝かせて
「本当ですか!?是非お願いします!」
食い気味にそう答えた。
「それじゃあどんな感じにするか相談しよっか!」
妹とリズさんは食卓の方へ向かっていった。
と、その前に…
「リズさんすみません。
ちょっとマオには用事があるのでこっちでもらっていいですか?」
そう言うと少し寂しそうにしてマオを返してくれた。
(おい、マオ。こっちを睨むんじゃないよ。まったく…)
呆れながらリズさんとウィリアムさんの目の届かないキッチンの隅に移動する。
「おい、マオ。街づくりに協力してくれるのはいいけど流石に正体がバレるのはまずいんじゃないのか?
さっきは誤魔化せたけどこれから先、気をつけないとダメだぞ。」
と釘をさす。
「む…そうだったな。気をつけよう。」
マオは真面目な顔でそう頷いた。
「ちょっとマオちゃーん。来てもらってもいいー?」
妹から声が掛かると、
「はーい♡ユイちゃんまっててね〜!今行くよ〜!」
デレデレしながら食卓へと向かって猛ダッシュで走って行くマオを見送る。
(…大丈夫かな…?
いやでも、あんな中身で魔王って言われても信じられないか…。)
デレデレしながらリズさんとユイちゃんと話すマオを見ながらため息を吐くのであった。
リズは乙女趣味です。




