奇談 ー温泉ー
先日温泉に行って思い出した話を一つ。
私が物心つくかつかないくらいの年齢の頃の話なので、父親から聞いた話です。
ある日、家族で家族旅行に行って温泉に入りに行くと、わりと賑わっていたらしいです。
私は大きなお風呂ではしゃいでいたらしく、気が休まらなかったと父親にいわれました。
まぁ、小さな子供ですし昔は大人も子供には寛容でしたので父親以外には怒られなかったらしいです。
温泉といっても子供にとってはお風呂。
体を洗うのが目的ですから体を洗い始めます。
私一人で体を洗っていると近くにいた中年の男性が私を褒めてくれました。
「お、偉いなぁ。おっちゃんと背中洗いっこしようか。」
私は背中を洗って貰ってからおじさんの背中を洗いました。
力一杯洗ったのはうる覚えで覚えてはいますが、中々おじさんの汚れが落ちなくて私は泣いたらしいです。
「おっちゃん、いっぱい洗ってるのに背中の絵落ちへん。」
私が泣きながらそういった瞬間、風呂場に居た客達が一斉に慌てて風呂場から出て行ったそうです。
その光景を想像すると可笑しくて、今でも笑ってしまいます。
もう既に私が泣き、客達が逃げたのかお分かりの方もいてると思いますが、おじさんの背中の汚れは汚れではなく刺青です。龍を入れていたと思います。
その他にも若い人が桜吹雪とか色々入れていて5人ぐらいいてたかもしれません。
私が泣いた後どうなったかというと、おじさんは笑い、夜中にどんちゃん騒ぎして寝ました。
この話を友人にすると、父親が気の毒だとかよく生きていたものだとかいわれますが、当時住んでた家の近所にあった組事務所の人で知り合いでしたからね。
私が小さな時は事務所の人みんな知ってましたし優しかったですからね。
今でもタトゥーとかしている人を見るとこの話を思い出してしまって笑いそうになってしまいます。