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極秘戦隊マスクトナイツ  作者: 筆折作家No.8
序章 ジオファイターズ
1/44

第一話 「次回、最終回!」

ジオファイターズは未曽有の大ピンチを迎えていた。


吹き荒ぶ熱風が、地面を、そして街を容赦なく叩きつけている。赤く輝くガラス、枯れ果てた街路樹。わずかに残っていた噴水池の水も枯れ、大きなうねりとなった熱気が炎を巻き込んで火災旋風を巻き起こす。その炎の竜巻が街を更なる焦土に変えていく。


「ちょっと、何この臭い!」

「見ろ! 道路のアスファルトが溶けだしているんだ!」

「嘘でしょ、つい10分前までは普通の街だったのに……」


 街の中心部の広場には巨大な鉄塔、街のシンボルでもあった電波塔が建っている。その頂上付近から、空一面に不可思議な幾何学模様が並んでいる。模様全体は淡く発光しているように見えるが、実際は細かく振動する発光体が、幾何学模様の“亀裂”の先に無数に存在しているのだ。


「おいおい、まじかよ……! 向こうに見えてる、あれが全部≪時空鋼機ディメンション・ライダー≫だっていうのか!」


 ジオブルーは空を見上げ、叫んだ。フルフェイスのヘルメットのようなバイザー付きのマスクにより、表情を読み取ることはできない。それでも、驚きが声に混じり震えていることから彼の表情はおのずと想像できる。


 目の前に広がる異様な光景を見て、ジオホワイトは言う。


「あれはおそらく、竜人軍の第零大隊(ゼロだいたい)。王族直属の精鋭のはず」

Shitシット! あんなもの、どうやって止めればいいんデスか!」


 ジオホワイトの台詞に対し、ジオイエローは苦々しく吐き捨てた。


「どどど、どうしようホワイト! とにかくあのゲートを閉じないと、あそこにいる全員がこっちに来ちゃうよ!」

「落ち着いて、ブラック。まずはジオベースを奪い返すこと。たどりつければゲートに干渉できるわ」


 慌てふためくのはジオブラック。やはり表情は見えないが、キョロキョロとあたりを警戒してせわしない。


「ちくしょう、なんでこんな時にアイツは……!」

「言い出したってキリがないわよブルー。もう私たちでどうにかするしかないんだから。」

「そうだよっ! ……そりゃあ悔しいけど、もう頼れる人はいないんだっ!」

Rightライト、そのトオリ。──行きましょう。まずはジオベースを取り返して次元ゲートを閉じるのデス!」


 悔し気に歯噛みするジオブルーに対し、ジオグリーン、ジオピンク、ジオイエローの3人はそれぞれの思いを口にした。ジオブルーは彼らの言葉に強く頷き、今は電波塔の頂上部に位置しているジオベースを目指すべく、駈け出した。


「――待ってくれ!」


 突如、先ほどまでその場にはいなかった“もう一人の男”の声がした。ジオファイターズの全員が彼の方を見る。全身を真っ赤なボディスーツで包み、いたるところに強化プロテクターを装備している。身長が高く、外国人であるイエローに及ばないものの、180センチ強はあるだろう。ほかの隊員と同じバイザー付きのマスク。


「……てめぇ!」

「おっす、ケガはないか? 渦軌(うずき)。」


 ジオブルーをカラーではなく本名で呼んだその男こそ、この戦隊の特攻隊長ことジオレッドである。何事もないかのよう歩み寄ってくるが、その場の全員に緊張が走る。


「近寄るなよ、太陽。カムイににビビッて俺たちを裏切ったお前が、今更何の用だ!?」

「決まってる。俺も戦いに来たんだよ。」


 ジオファイターズがここまで追いつめられた背景に、ジオレッドの裏切り行為があった。敵の総司令官カムイの強さに恐れをなしたジオレッドは、仲間を裏切って一度戦線を離れたのだった。ジオレッドの力を欠いたメンバーは満身創痍、一時変身機能を失う事態にまで追いつめられた。


 やっとのことで乗っ取られたシステムを奪い返し、敵の本拠地を前に最後の決戦へ挑もうというこの時になってようやくジオレッドが帰ってきたのだ。


「今までどこに行っていたのよ、レッド!」

「まったくっ! 大変だったんだからねっ!」


 不満を口にするジオグリーンとジオピンク。そんな愚痴を前にして、ジオレッドは不思議そうに首をかしげるのだった。


「あれ、ひょっとして――皆なんか、勘違いしてないか?」

Whatワット? どういうことデスか?」


 実は、ジオレッドが姿を消している間に、戦隊の今後を左右する重大な出来事が起きていたのだ。そのことをメンバーが知るのは、直後のジオレッドのセリフを聞いてからだった。


「俺はお前たちと戦いに来たんだよ、ジオファイターズ!!」


 刹那、ビリビリと大気が震える。ジオレッドの放つ強烈な殺気が灼熱の空気の層を叩いたのだ。炎は爆風が生じたかのような勢いでジオレッドを中心広がっていく。ジオファイターズのメンバーたちは腕をクロスさせてガード。何とか熱に耐えている状態だ。


「さあ、覚悟はいいか? みんなには死んでもらうからな!」


 こうして、ジオファイターズVSジオレッドの戦いの火ぶたが切って落とされたのだ。



――――――


――――


――



 ジオレッドの力は強大だった。気が付けば、ジオブルーの周りには倒れ伏す仲間の姿。気を失ってしまった瞬間に変身が解除され、高温の炎が間近に迫る中、生身の状態を晒されている。大変危険な状態だった。一刻も早くジオレッドを倒さねばなるまい。


「本当に、操られているわけじゃないんだな? 太陽。」

「当たり前だろ? あんなに強い奴に逆らったところで無駄死にだ。だったら、逆に仲間になれば命は助かるじゃねぇか。」

「クズが……! 俺は一時でもお前のことを相棒だと思った自分が恥ずかしいぜ!」


 ジオブルーが大地を蹴る。ノーモーションからの突撃に、ジオレッドの反応がわずかに遅れる。ジオブルーの放つ突きをジオレッドは紙一重で回避。しかし剣の勢いは衰えず、超高速での連続突きは続く。これも自分の武器で弾いて直撃を避け、凌ぎきった。スーツに破れが生じたものの、ジオレッド本人に大したダメージは無い。


 一瞬、ぴたりと止まったジオブルーの剣が、今度は水平に薙ぐようにして振るわれた。ジオレッドがしゃがんでそれを避け、逆に懐に飛び込むと腹に強烈なタックルを食らわせた。


「ウグッ!?」


 ジオブルーは間一髪、タックルの瞬間にバックジャンプして衝撃を逃がすことには成功する。それでも受けたダメージは大きく、腹を押えてよろめいてしまう。目には闘志が残っているが、戦いを続けるのは困難に違いない。


「く……そ……!!」

「じゃあな、渦軌。」


 ジオレッドは、剣を振りかぶって上段に構える。すると、周囲の熱気が収束して彼の剣にまとわりついた。まばゆい光を発しながら超高密度に練られたエネルギーの塊を、ジオブルーに向かって振り下ろす。


 その時。


「まあ待て、ジオレッド。」


 野太い男の声。ジオレッドは声に従い攻撃モーションをキャンセルした。


「カムイ。どうして止めたんだ?」


 カムイと呼ばれた黒い外套の男は、ニヤリと笑うと腕を前にかざす。すると、彼の腕が見る見るうちに肥大化し、手首から肘にかけて巨大な棘が出現した。ウロコのような黒い装甲に覆われ、棘の先端は怪しく赤い光を放つ。


「やはり、こいつらは我の手で始末したいのだ。」

「―――なるほど。そう言うことなら、任せるぜ。」


 ジオブルーに背を向けて、去っていくジオレッド。その向こうでは、体全体を怪物の姿に変えて、禍々しいオーラを放つ敵の大将・カムイの姿が。


 絶体絶命のジオファイターズ。一体どうなってしまうのか!?



【第49話 裏切りの太陽】


【次回へつづく】




 (子供たちの掛け声)

 G!E!O!G!E!O!じ・お・ふぁいたー!


 メラメラ()えるぜ太陽(たいよう)SUN(サン)  空高(そらたか)(あつ)くシャイニング!

 グルグル渦潮(うずしお)うずき()す ぜんぶ()()めストリーム!

 ヒラヒラとコノハ(かぜ)()う (もり)のはぐくむエネルギー!

 カチカチロックだ大砂漠(だいさばく) 地割(じわれ)れだ地震(じしん)だエスケープ!

 (かお)るアロマに気を付けて 人類(じんるい)知恵(ちえ)さケミストリー!



 (子供たちの掛け声)

 G!E!O!


 (ひかり)(とびら)()こうへと かけだそう時空(じくう)旅人(たひびと)

 この地球(ほし)のパワーを(あつ)めて

 ひとつになって(たたか)おう (ぼく)らみんながジオファイターズ


 (子供たちの掛け声)

 G!E!O!G!E!O!じ・お・ふぁいたー!


 G!E!O!G!E!O!じ・お・ふぁいたー!



 ◇ ◇ ◇



 白い部屋。窓から吹き込む風に揺れるレースのカーテン。列になって並べられている多機能付きベッドも、それら一台一台を囲むように設置された仕切りも、全て白を基調としたものである。ベッド脇に置かれたプラズマスクリーンだけが場違いに鮮やかな色を映す。


 そのスクリーンに映し出された映像に釘付けになっている子供たちもまた、部屋に彩を添える存在であった。赤い短髪の少年と、紫色のツインテールの少女。年の頃は小学校に上がるか上がらないか、といったところだ。


 赤髪の少年の瞳は澄んだブラウン。スクリーンの中のヒーローに熱中しているのかその瞳は輝いて見える。紫の少女の瞳は、美しいイエローであった。同じく番組をみて興奮しているのだろう、少し肌が上気している。ただ、少し戸惑っているような表情も見せていた。


「ねえみーくん。太陽くんって、本当に敵になっちゃったの?」

「うーん、どうなんだろ? 来週には仲間に戻るのかもね!」

「だといいんだけど……。」


 どうやら少女は、ジオレッド――空知そらち 太陽たいようのファンであるらしかった。主人公が敵に回ったことについて驚きを隠せないのだろう。いや、彼女だけでなく全国の子供たち、その親たちもきっと驚いているはずだ。特撮ヒーローシリーズで、ここまではっきりと主人公が敵対したことはないのだから。


 プラズマスクリーンの中ではCMが次々と流されている。その中には新番組の宣伝もある。やがて画面が切り替わり、再びジオファイターズの映像が流れた。


『次回の竜人戦記ジオファイターズ!』


「ほら、次回予告が始まるぞ」


 少年に促されて、少女はスクリーンの方へ向き直る。だがそれを遮るかのようにスクリーンの前に立ちはだかる人物がいた。桃色がかったナース服。黒髪の女性。彼女は腰に手を当て、子供たちの方へ上半身を乗り出す形で語りかけた。


「こーらー、いい加減テレビは消すわよ! もうジオファイターズ終わったんでしょ?」

「予告が見たーい!」

「駄々こねないの!早くしないと検査始まっちゃうんだからいい子にしなさい!」

「……はぁい」


 ナースは部屋の―――病室の入口へと目をやると、優しく微笑みながら


「お母さま方は、検査が終わるまでもうしばらくお待ちくださいね」


と告げるのだった。



 この二人の子供たちの運命は、のちに伝説となるヒーロー番組≪竜人戦記ジオファイターズ≫をきっかけとして、大きく捻じ曲げられていく。




 ◇ ◇ ◇




『太陽との戦いのさなか、ついに姿を現した敵司令官カムイの前に、次々と倒れていく戦士たち!』


「弱い弱い弱い!我こそが最強、王国の誇る無敵の武人なのだ!」


  (激しい爆発)


「太陽おおおおおお!!」


「渦軌いいいいいい!!」



『次回! 最終話! “ジオファイターズよ永遠に”!』



「―――この瞬間を待っていたんだ!」


 竜人戦記ジオファイターズは楽しい時をつなぐ企業ミッドガルデと、ご覧のスポンサーの提供で、お送りしました。



6/27 大幅改稿

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