表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流浪荘の管理人  作者: 中酸実
第三荘 隣人の事情
23/33

倉庫Ⅰ 当直の医者

学園祭は楽しいけど疲れる・・・そうしみじみと思っている中酸実です。

今回は閑話と言う形で入来院先生視点、大櫻さんが寝ている間に何があったのかと言う話です。

 私はその日、当直であり愛する夫との時間を裂かれ非常にイライラしていた。

 しかも、その当直はあらかじめ決められたものではなく急に入れられたものであり、そのことが殊更苛立たせていた。

 ・・・因みに何故、急に当直が入ったかと言うと本来当直の人が男性との出会いの為に奔走していたからである


「はぁ、何が悲しくて夫がいるのに当直しなきゃならないんだよ・・・」


 私のふとした呪詛は白い壁に吸い込まれて消える。

 本当なら今頃、私は夫とイチャイチャできていたはずなのに・・・

 壁に掛けられた時計を見ると日付が変わり、土曜日になっている。


「もうこんな時間か・・・」


 今頃夫は何をしているだろうかと考えを張り巡らせていると急に卓上電話が鳴りだす。


「まったく、こんな時間に急患かよ」


 今日から休日だと言うのに不幸な患者だなとか思いながら私は受話器を取った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私は運ばれてきた女性患者を診て思わず呟く。


「全然不幸じゃないやんか、患者さんよ・・・」


 心拍数正常、血圧良好、血糖値は少しだけ高めだがおおむね良好・・・ただの栄養失調と過労。


 だけど、一つだけ他の患者と違うのは付き人として『男性』が付いている事だ。

 女性の患者で付き人として男性が来るなんて珍しい、といっても患者の女性との関係が夫婦や恋人、身内と言った関係しかないが。

 そのせいで救急隊員(勿論女性しかいない)からは嫉妬に満ちた視線を一心に患者は受けていた。

 ふと、救急隊員の一人(婚活は連敗中)から耳打ちされる。


「入来院先生、(手術を)サクッとやっちゃいましょうサクッと」


 おい、何不穏なこと言ってんだ。この患者には手術が必要ない事はあんたも分かっているだろう。・・・まあ、気持ちは痛いほど分かるが。

 私も夫がいなかったら暗黒面(ダークサイド)に落ちてそうだ。むしろ本来当直の人だったらやばかったな。


「はいはい、患者の対処は私がやっておくから。後はご苦労様」


 このまま放って置くと患者の女性だけじゃなくて付き人の男性も危ないので救急隊員を解散させる。

 不満げな顔で救急隊員は戻っていくが、この判断は当たり前と言えば当たり前だろう。


 男性が付き人としているので流石に一般病棟だとまずいか・・・と考えていると付き人の男性から声がかかる。


「あの、大櫻さんは大丈夫なんですか?救急車の中で隊員さんに聞いても答えてくれないので心配なのですが」


 まさか救急車に一緒に乗ったのか?流石に警戒心がなさすぎだろう、襲われる可能性もあったのに。

 実際の所、今回の救急隊員は男性経験が零と言っても良かったので初めての男性に舞い上がってしまい、何もできなかったことは当の本人である彼女らしか知らない。


「ああ、大丈夫だよ。ただの過労と栄養失調だ。点滴でも打っとけば治る・・・と言うか、ええと、君大丈夫なのか?」

「何がですか?」


 あ、これ考えてない感じだ。


「だから、隊員に襲われる可能性があるんだぞ。男性が気軽に救急車に同乗するもんじゃない」


 確か、10年位前に救急車に同乗した男性が襲われる事件があったな。


「な、なんていう世界だ・・・」


 目の前の男性はちょっとひきつった顔でぼそりと呟いた。

 やはり、予想していなかった様だ。これで一つ賢くなっただろう。

 さすがに命に関わらないとはいえ患者をこのままにしておくわけにはいかないので一先ず看護婦をよび患者を特別病棟に移動させる。ついでに点滴も用意させておく。


「ああ、大丈夫。患者を病棟に運ぶだけだ」


 心配そうな顔をしていたから軽く説明する。


「とりあえず、移動しながら説明しようか」


 運ぶ病室は指定しているのでそちらに向かって歩いていく。

 私たちの足だと10分くらいだろうか。


「あ、ええと・・・君」

「自分の名前は逆水(さかみず)椿樹(つばき)です」


 少し気を使わせてしまったかな。とりあえず自己紹介を返しておこう。


「そうか、私は入来院(いりきいん)(あきら)だ。一応この病院で医者をやっている」

「は、はい。よろしくお願いします」


 流石に見知ぬ女性と二人っきりと言うのは男性にとっては酷だろうか・・・


「ま、安心してくれ。別に取って食おうってわけじゃないんだ。それに私には心に決めた男性が居るから、な」


 そう言いながら左手を見せる。女性の前でやるのは流石に性格が悪いが男性を安心させるためには別にいいだろう。


「そうなんですか、結婚されてたんですね」


 驚いたように逆水君がいう。

 そんなに既婚者には見えなかったのか・・・少しショックだ。


「驚くことじゃないだろ。それより逆水君の方はどうなんだ?」

「『どうなんだ』とはなんですか?」


 鈍い奴だな・・・


「これだよこれ、彼女とはこの関係じゃないのか?」


 左手の小指だけを立てて反応を見る。

 と言うか小指を立てるのは初めてかもしれない、いつもこの系統の質問するときは親指しか立ててなかったからな。


「そ、そんな関係じゃ無いですよ!大櫻さんとは隣人なだけです」


 顔を真っ赤にして慌てて否定の意思を示すが、全く説得力のないな。

 それよりも、隣人ってだけで心配されるとか。患者さんよ羨ましすぎるぜ。


「ま、そう言う事にしといてやるよ。それより目的地に着いたし」


 さて、逆水君も無事病室に送り届けたし。患者に『いたずら(と言う名のいやがらせ)』されてない事も確認済み。


「あれ、何処に行くんですか?」

「カルテを作らないけないからな、それに患者の方も大丈夫そうだし」


 患者は当分起きなさそうだし、起きたところで体は思うようには動かないだろう。


「ま、安心してくれ。この特別病棟はセキュリティが万全だ、なんたって男性を置いておくからな。このセキュリティ強度によって病院の沽券に関わるほどだから、な」


 そう言って、部屋を後にする。

 ホント夜の当直はきついね・・・主に精神的な方面でも。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 患者(大櫻)との一悶着があったその後



 時間が時間だけに病室よりも静けさがある廊下。

 そんな廊下を歩きながらさっきの患者が頭に浮かぶ。


「はぁ、やっぱ他人の男女関係を見てると砂糖吐きそうになるね」


 これまでも男性患者を診てきたが、大抵の場合、妻や恋人が付属品としてついてくる。

 そして(主に妻や恋人が勝手に)イチャラブ空間を病院内に発生させるので、女性しかいない医者や看護婦の立場からしたら「いや、もういいです」って気分になる。


「あとはカルテを書き上げるだけで終了!」


 やっとこの業務から解放されて愛しの夫との時間が取れる。

 そう思いながら当直室に戻るとスマホに新しいメッセージが入っていた。


「お、夫からの励ましのメッセージ!!!」


 夫からのメールではしゃぎまくる姿に


「ふふふ、これでご飯三杯はいける!」


 ・・・他人のふり見て我が振り直せと無性に突っ込みたくなるの何故だろうか

流石に男女比1:10だから既婚者はこれぐらいは出してもいいよね。

今回は入来院先生視点と言うわけで番外編です。これからはメインキャラ以外の視点だと番外編って事にしようかな。

そういえば恋人のジャスチャーって小指で彼女、親指で彼氏らしいですね・・・作者は知らなかったです。

何時もの事ですが感想や意見などあればどしどし下さい、作者が喜びます。後、批評とかここ直したらいいよ~とかありましたら指摘してください。

てなわけで、今回のキャラ紹介はこの人です!


入来院 麗 イリキイン アキラ


年齢・35歳

職業・外科医師

趣味・昔;料理 今;夫との時間

好物・夫の作る物なら何でも

家族・夫 母 妹 弟

誕生日・6月14日


 絵に描いたような姉さん女房。だけど怒った夫には全然かなわない。

 周囲から見ても砂糖を吐くようなラブラブカップル・・・なので同僚からは嫉妬されているようだ。

 外科医としての腕は一級品、一人暮らしの時は料理をしていたが今では夫の料理を食べたいがために今は料理はしていない。


 ≪作者の一言≫


 姉萌っていいですよね、妹萌とは違う趣があって自分は好きですよ。

 でも、やっぱり妹は良いもんですよ。作者はリアルでお兄ちゃんなのですが妹とは歳が離れているので仲は良いほうです。

 やはり、兄弟姉妹は歳が離れていた方が仲がいいのでしょうか・・・

 あ、麗さんの出番はまだまだあります、これだけははっきりと伝えておきたかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ