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流浪荘の管理人  作者: 中酸実
第一荘 あべこべ世界の管理人
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第二室 この世界に来た理由

 二話目、物語のプロローグ部分です。主人公が管理人になるのは、まだもう少し先の話になりそうです。

 人生28年、俺はずっとこの変わりのない世界で生きてそして朽ちていくんだと信じて疑わなかった。

 小中高を通して地元で学を積み、田舎から上京してそこそこの大学に進学。

 そして、きっちり4年間で卒業単位を取り何処にでもありそうな会社に就職。

 そう、俺の人生はこうして文字に書くと変わり映えのない白紙のような人生だ。

 そしてこのまま白紙のように真っ白な道を歩んで真っ白な灰になると思っていた・・・



「うそ・・・だろ・・・」


 いつも通りの会社前で唖然とする。

 人生は何があるか分からない、それを今思い知らされている。



 昨日、寝苦しさで目を覚ますとあからさまに感覚で熱があると実感する。体温計と思い体に命令を下すと四肢が思うように動かない。「本格的にヤバいな」と感じつつ体温計で熱を測ると案の定、熱は39,4℃。

 流石に会社に行くわけにも行かず。勤め先に一報入れその日は休むことにした。そして今日、上司から休んだ分、何を言われるか戦々恐々しながら出勤したわけだが・・・



 会社の前にはパトカーがひしめき合い、警察官がぞろぞろと勤め先の会社に入っていく。そしてそれらを囲むように報道陣が陣取っている。

 突然の事に頭の処理が追いつかなく、しばらくの間棒立ちになっていた。

 どれくらいの間そうしていただろうか、我に返るとまずは状況把握と思いポケットにあるスマホで同僚に電話をかける。一瞬スマホの画面に会社の不祥事の文字がちらつく。

 数回のコールの後、同僚のうっとうしそうな声が聞こえる。


『もしもし・・・逆水さかみずぅどないしたんや?』

「あ、ああ、杉谷(すぎたに)なんだかしんどそうやな・・・」

『そりゃあ、こんな朝っぱらからかけてくるどこかの誰かさんのせいやと思うけど』

「うっ、すまんかった・・・って、そんなことよりどうなってんだよ!朝起きたら会社が封鎖されているぞ!」

『あ~、お前さんはそういや昨日おらへんかったな。どうやらうちの会社が脱税をやらかしていて。警察官の方々が昨日押し入り捜査をしたんよ。そしたら出るわ出るわ、不正や賄賂、その他犯罪の証拠。で、今に至るってわけや。ってかお前さん知らへんの?』


 昨日は養生の為にずっと寝ていたし、朝は寝坊してニュースなんて見る暇なかった。


「俺、昨日は高熱出して寝込んでいたし。今朝もニュース見ている暇なかった」

『どうせ真面目なお前の事だから、高熱って言っても動けないほどの熱だろう?』

「そ、そうやけど」

『かー、お前さんは真面目すぎんだよ。この前は38℃の熱でも出勤しやがって』

「あ、あれは大事な書類があってだな・・・」

『お前は無駄に生真面目すぎんだよ。だから彼女できねぇんだ』

「悪かったな童貞で・・・」

『そっちの事じゃないんだけどなぁ。まあええか・・・じゃあ、そろそろええか?もう少し寝たい・・・」

「ああ、すまんかったな。じゃあな」

『おう』


 その言葉を合図に電話がぷつりと消える。同僚の言葉を確かめる為にスマホ開いて確認する。

 すると、Y○Hoo!のトップページに『会社の不用事 他社との関与も』の見出しが、急いでその記事を開くと同僚の言っていた通りの事が記載されている。そしてその記事の締めくくりには『予想以上に事が大きくなりそうである。ここまで大きくなると事態の収拾は難しく、また事の発端となった会社は再建が難しいであろう。』と書かれていた。



 と言うのが朝の出来事である。あれから俺は軽く昼食を食べ、どうしたらいいかもわからず近くの河川敷で黄昏ていた。


「どうしようか・・・」


 昼間の河川敷、周りに人気はなくただ車の走行音が聞こえてくる。

 いつまでそうしていただろうか、ふと横を見ると子供が隣に座っていた。深くまで被った麦わら帽子に白いワンピースと言った服装だ。


「うわっ!」


 突然の事に年甲斐もなく素っ頓狂な声が出てしまう。そんな俺の反応が面白かったのか不思議な子供はクスクス笑いながら話しかけてくる。


「お兄さん、面白い反応だね。でもどうしたの、こんな時間に河川敷に座り込んで・・・悩んでるみたいだけど?」


 年端もいかない子供に心配されて少し情けない気分になるが、そこは大人の度量でぐっとこらえながら答える。


「大人には、色んな悩みがあるんだよ」


 質問には便利には常套句で対処する、流石にこんな子供に大人の暗い世界を打ち明けるわけにはいかないな・・・


「ふ~ん、ねぇお兄さん、もし別の世界に行けるならどんな世界に行きたい?」


 ・・・俺の顔色が優れなかったのだろうか、子供がそんなことを聞いてくる。どうせ子供特有の興味本位だろうと思いつつ返答する。


「う~ん、そうだなぁ、流石にファンタジー世界は嫌だなぁ。それにSF世界もちょっと勘弁だな」


 ファンタジー世界だったら生き残れる自信ないし、SFのような未来機器を使いこなせる自信がない。


「じゃあ、現代世界って事?でも、この世界でさえお兄さんは悩んでいるのに?」


 うぐっ、中々痛いところを突いてくる。何とか誤魔化すためにそれとない言葉を答える。


「そ、そうだな・・・現代世界でも今の世界とちょっと変わった世界がいいな」




 ・・・中々返事が返ってこない、おかしいなと思い横を見ると。その不思議な子供は何処から取り出したのかメモ帳とペンで必死に書いていた。


「ねぇ、君何を書いてい・・・」


 何を書いているの?と聞こうとすると、急にその子供はメモ帳をパタンと閉じ満面の笑みでこう告げる。


「お兄さん!質問に答えてくれてありがとう!お兄さんが思い描いている世界に行けるか分からないけど、精一杯頑張ってね!」

「えっ!」


 突然の事に気の抜けた言葉しか出ずに、続きの言葉を紡ごうとするが、徐々に意識が遠のく。

・・・薄れゆく視界の中で最後に映し出したのはさっき笑顔とは打って変わって悲しそうに微笑む子供の顔だった。





「・・・ゴメンね」

 いつもの事ですが感想や意見などあればどしどし下さい、作者が喜びます。後、批評とかここ直したらいいよ~とかありましたら指摘してください。次回の作品に役立てます。


 さて、今回も人物設定です。このキャラ個人的には好きなのですがもう出番がないです・・・



杉谷 啓一 (スギタニ ケイイチ)

年齢・32歳

職業・元会社員

趣味・たばこ、猫と戯れる事

好物・いぶりがっこ

家族・両親、弟×2、妻

誕生日・4月1日


 主人公の元いた世界の同僚。一見するとチャラ男だが面倒見が良く、気配りができる男。意外に妻帯者であり妻には頭が上がらないようだ。

 主人公とは同僚で飲み仲間(主に主人公が愚痴の聞き役)、酒が入ると小言が多くなるタイプ。

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