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流浪荘の管理人  作者: 中酸実
第一荘 あべこべ世界の管理人
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第一室 あべこべ世界の管理人さん

 初めての方は初めまして久方ぶりの人はお久しぶりです。中酸実と申します。今回はあべこべ物の長編を書いてみました。自分としては初めての長編ですので、生暖かい目で見守って下されば幸いです。

 朝の陽気に目が覚め、起き上がり背伸びをするとボキボキと背中がいい音を立てて鳴る。その音に思わず笑みがこぼれる。さて、今日も何気ない一日が始まる。



 寝間着から何時もの飾り気のない普段着に着替えが終わり外に出る。季節は初夏、朝の7時だと言うのに指すような日差しに眉をひそめてしまう。


「流石に、この時期は朝でも熱いな」


 誰にも聞かせるつもりのない独り言が思わず出てくる。


「そうさね、もう季節はほとんど夏さ」


 どうやら捨てるつもりだった言葉が拾われたようだ。返事の主へと目を向ける、ピシッとしたスーツ姿と清潔感のある黒髪に短めのサイドテール。これしか言わなければバリバリのキャリアウーマンだと思うだろう。だが現実は非常だ、目の下の隈が端正な顔立ちやその他もろもろを全て台無しにしている。


大櫻おおざくらさん、夜更かししましたね」

「えっと・・・大樹だいき君が眠らしてくれなくてさ・・・」


 彼女に彼氏は居ない、大樹だいき君と言うのはおそらく彼女がやっている乙女ゲー(こっちでは呼び方が違うらしいが・・・)の攻略キャラの一人だろう。


「またですか、ゲームをするのはいいですがやりすぎは良くないですよ」

「うっ、だ、だって仕方ないさ!『E線上の魔王』が面白すぎるのがいけないのさ!」

「はぁ、そうですか。・・・ところで会社に行かなくていいのですか?」

「やばっ!今日は早朝出勤だったさ!」


 そう言うか早いか彼女はダッシュで階段を駆け下りていった。


「相変わらず、忙しそうな人だ」


 そう呟きつつ、自分も階下に降りる。日課のアパート掃除をしなければ。

 掃除用具を出そうとすると不意に背後から声がかかる。


「おっ!相変わらず朝は早いんやな!」

「そう言う本剛ほんごうさんだって早いじゃないですか」


 活発そうな燈色のショートカットに作業着、人一倍元気な彼女の仕事は飛工だ。


「いやいや、仕事柄仕方ないし家族のこと思うならなんてことないんよ。それを言うなら男性であるあんさんが早起きするのが不思議やな」

「いや・・・そうだな」


 反論しようとしたがめんどくさくなりそうなので話を切る。


「ほな、仕事行くわ。これ以上時間をつぶすと現場監督に怒られるからな」

「いってらっしゃい、気を付けてくださいね」

「そんなヘマ、しやせんって」


 そう言いつつ彼女は仕事へ出勤していった。


「さてと、掃除しますか」


 彼女らには彼女らの仕事があるように俺にも俺の仕事がある。

 ここ1,2ヵ月ですっかり愛用になった掃除道具でしばらく掃除をしていると小柄な女の子が階段を下りてくるのが見える。


「あ、管理人さんおはようございます」

「おはよう友実ともみちゃん。今日も部活かい?」

「子ども扱いしないでください!もう、私15歳なんですよ!」

「いやいや、ごめんごめん」


 セーラー服に癖っ気のある茶髪をポニーテールで纏めている彼女は高校一年生だ。この春、高校の入学と同時にこのアパートで一人暮らしを始めた。個人的には「女性が一人暮らしで大丈夫なのか?」と思う節があるが『この世界の事情』を考えたら男性の一人暮らしより安全だろう。


「じゃあ学校行ってくるね!」

「おう行ってらっしゃい!車には気をつけろよ!」

「管理人さんもね~!」


 ここに来た当初を考えれば彼女も随分と明るくなったものだと感慨にふけっていると、104号室の扉が開く。そこに住んでいる人の事を考慮すると、滅多に彼女は外には出ないはずなのだが・・・

 その部屋の住人は扉は少しだけ開けて顔だけを覗かせる。


「あの・・・管理人さん・・・助けてくれませんか・・・」

「どうしたのですか黒原くろはらさん?」


腰まである長い黒髪に痩せ細った体形が特徴の女性が助けを求めていた。


「実は・・・プリンターの黒インク・・・切らしてしまいまして・・・」

「それは買ってきてと言う事ですか?」


 104号室の彼女はコクコクと首を上下に振り肯定の意を示す。


「あのなぁ・・・」

「お金・・・出すから・・・」

「そこじゃなくて、いい加減に外に出たらどうですか?」

「否・・・絶対嫌・・・」


 彼女は見ての通り極度の外嫌いであり、かつ日光が苦手だ。ここで説得するのもいいが彼女はあらゆる手段を使って拒否をするだろう。・・・面倒なのでインクを買ってくることにする。


「・・・はぁ、分かりました。どこの会社のやつを買ってくればいいんですか?」

「やった・・・Tie Ions社製・・・NB-360・・・」

「それなら大櫻おおざくらさんに頼めば良かったじゃないですか?」

「インク・・・切らしたの・・・今日・・・」

「分かりました、届けるのは午後からになりますがいいですか?」

「ん・・・それまでに・・・第61話の構想でも・・・練っとく・・・」


 そう言い終わると彼女はパタンと扉を閉め自分の作業に戻っていった。

 言い忘れてはいたが彼女は今売れっ子の小説作家だ、一冊読ませてもらったがとても面白く後で全巻をこっそり買ったのは内緒だ。


 ふと時計を確認すると時刻は8時半を指していた。もうこんな時間かと掃除を切り上げようと思うとふと声がかかる。


「いつもお疲れさまだねぇ。お茶していかないかぃ」

「あ、大家さんおはようございます」


 顔をあげると中老の風貌の女性・・・大家さんがいた。名前、何だったっけ・・・


「そうですね、せっかくですのでいただきましょうか」


 掃除道具をしまい大家さんの部屋、101号室にお邪魔する。他の部屋と違って和風テイストな部屋に床には畳張りがしてある、イ草のいい香りが心を和ませる。

 部屋にはちゃぶ台が置いてあり、そこに腰を掛ける。しばらく待つとお茶を持った大家さんが来た。


「お待たせだねぇ、粗茶で申し訳ないねぇ」

「いえいえ、大家さんのお茶は美味しいですから」


 この言葉に何一つ嘘偽りない、大家さんの入れるお茶は実際に美味しいのだ。


「そう言えば、今日の朝はあの声が聞こえてないねぇ」

「204号室の彼女ですか・・・確かに煩いですもんね」


 そう、いつもなら煩いはずの204号室の住人を今日は見ていない。


椿樹つばきさん!どうですか?今日のコーデ可愛いでしょ!これであなたをメロメロにしてみせます!』


 ふと、そんな幻聴が聞こえてきて思わずクスリと笑みが零れてしまう。


「どうしたのかねぇ。」

「どうしたもこうしたも今日は火曜日ですよ。彼女、火曜日は講義取ってません」

「そうだったねぇ、それにしても住人の予定なんてよく覚えているねぇ」

「そりぁ、ほぼ毎日顔を合わせていたら覚えていますよ」


 特に204号室の住人はグイグイ言ってくるので不本意ながらほぼ覚えてしまった。


 それから少しの間たわいのない雑談をしていると。大家さんがふと壁掛け時計を見る。

その仕草につられるように俺も壁掛け時計を見ると時刻は9時半を過ぎていた。


「さて、そろそろ雑談を切り上げようかねぇ」

「大家さん、何かあるのですか?」

「ん、あぁ、ゴルフを打ちに行こうかねぇ」

「元気ですね」


 齢55歳以上になると言うのに、元気さは衰えていないようだ。


「何事も、元気が一番だからねぇ」

「そうですね」


 年長者の助言を噛みしめつつ外に出る、そろそろ買い出しに行かなければ。

 そう思いつつ扉を出ると扉の外でバッタリと流し目の女性に会う。

 肩まで掛かる紫色のセミロングに泣きぼくろが大人びた雰囲気に相まって妖艶な雰囲気を醸し出している。

 

流木ながれぎさん、この時間って社長出勤か何かですか」

「あら、あたしは今日、午後出勤だけどね」

「そういえばそうでしたね」


 火曜日だって事をさっき大家さんと話したことをすっかり忘れていた。


「それを言うなら、貴方の今の待遇の方がよっぽど社長だと思うけどね」

「ハハハ、それ言わないでくれますか結構気にしているのですが」

「冗談よ、今の待遇に胡坐をかかずに頑張ってる貴方に失礼ね」


 あながち間違ってはいないので余計に心に刺さる。


「うっ、辛らつな言葉ありがとうございます・・・」

「じゃあ、あたしはこれで失礼するわね」

「ええ、いってらっしゃい」


 くるりとロングスカートをはためかせ踵を返す姿は大人の余裕と言う物を感じさせる。

 彼女は見た目二十代後半なのだが実年齢は三十代後半らしい、どんな美容すればそんな若作りが出来るのかぜひご教授頂きたいものだ。

 ・・・もしかしたら彼女がエステティシャンなのも理由の一つなのかもしれない。


「さて、買い出し行きますか」


 自室に戻り買い出しの準備をする。

 買い物袋の代わりのマイバックに財布・・・そして護身用のスタンガン。


「元の世界に居たときはこんな物騒な物を持つなんて考えもしなかったな」


 何て事をしみじみ思いながら買い出しに出発する。



 道行く人は女性しかいないがやはり平日の昼間、人は少ない。が、道行く女性が皆が皆、俺を見て驚いている。・・・中には二度見する人も。何時になってもこの感覚はなれなくて困る。


 暫くすると行きつけのスーパーに到着し買い物を始める。行き道と同じような好奇の視線にさらされ、うんざりしながら買い物を続ける。

 一通り買い物が終わりレジに行く、平日の午前中なのですっかすかだ。適当なレジに行き買い物かごをおろし、目の前の店員さんをみると胸に研修中の札があった。

 「あ、しまったかな」と思いつつ今更引き返すわけも行かないのでそのままお願いする。


「あ、これお願いします」

「はっ、はひっ!」


 ああ、またこの反応かと思う。決して俺の容姿が化け物とかそういう物じゃない。男性が無防備に買い物に来ること事態が可笑しいのだ。


 え?男性が無防備で買い物に来るのが何が問題だって?

 そりゃ、『普通』の世界だと当たり前だよね。だけど、この世界は違う。


 男女比が狂った、男性が著しく少ないこの世界だとね・・・

 どうでしたか?まだ一話目なので何とも言えないですね・・・

 一応書き溜めはしておりますので、一日ペースの投稿をできると思います。

 さて、いつもの事ながら感想や意見などあればどしどし下さい、作者が喜びます。後、批評とかここ直したらいいよ~とかありましたら指摘してください。次回の作品に役立てます。

 最後に、キャラ設定を後付けにしましょうかね。記念すべき一発目はこの物語の主人公です。



203号室 逆水 椿樹 (サカミズ ツバキ)

年齢・28歳

職業・元会社員

趣味・ゲーム(RPG、FPS、アクション)、料理

好物・甘いもの

家族・両親、兄、妹

誕生日・9月1日


 この物語の主人公、働いていた会社が不用事で潰れ、どうしようかと悩んでいる所に不思議な子供に出会いこの世界に飛ばされる。

 会社員としての癖が抜けてなく、生粋のワーカーホリック。ぶん回す兄と妹のせいでおとなしめな性格に・・・

 元の世界の愛称はバッキ―。性格は良くも悪くも『いい人』。過去に何か有ったみたいだが・・・

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