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6話:森で暴れる悪い子は、月に替わらずともお仕置きよ!

6話:森で暴れる悪い子は、月に替わらずともお仕置きよ!


「本当に村人たちを救えるのか?」

家に着くなり、村長が飛び出してきた。

「ああ、大丈夫だ。だが、栄養を取り戻すためにはまだ時間も食料もいる。」

「そうか、どうにかして畑を取り戻さなければ....」

村長は下唇をかみ、渋い顔をする。

「そのことだが村長、俺たちでホングルを狩ろうと思う。」

「なに、ホングルをか?」

「ああ、あいつらやっつけたら、畑も戻ってくるし、肉は手に入って、一石二鳥だろ。」

「それはそうじゃが....お主たちにそこまで頼んでいいのか....」

村長は思案顔を浮かべる。

「いいって、乗りかかった舟だ。気にするな。冒険者としての練習みたいなもんさ。」

「はあ、普通の冒険者はホングルなんて狩れないのだけど。」

セリアは能天気な智春の言葉にため息をつく。

「そうか、じゃあ、すまんが、お主らに任せる。だが、こちらからも自警隊から使える者を何人か連れて行ってくれ。」

「ああ、分かった。でも、村の警備が手薄になったら意味がないからな。」

「ああ、そこは分かっておるわい。」

「了解、じゃあ、三十分後森の入り口に来るよう言っといてくれ。」

「ああ、分かった。本当にすまんのう。」

そう言うと、村長は自警隊の建物の方に歩いて行った。


三十分後、森の入り口に集まったのは七人の青年たちだった。

その中には、あのルークも混じっている。

「お前が本当にホングルを一人で倒せる実力者か見極めてやる。」

そう言うと、ルークは自警隊を連れて勝手に歩き出した。

「すみません。隊長はレイラさんをあなたに取られそうで目の敵にしてるんですよ。」

そう言って、自警隊の一人がこっそり智春のもとに寄って来た。

「ん?それはルークの勘違いじゃないか。」

「はぁ、この男はこれだから。」

後ろでセリアが何かつぶやいたようだが、智春の耳には入ってこない。

「それはいいとして、トモハルさんは槍も使えるんですよね。」

「え、うん、刀の方が得意だがな。」

「カタナ?その変わった剣の事ですか?」

「ああ、これは刀っていってな、そっちの騎士剣と違って、『押し切る』のではなく、『斬り絶つ』ことを目的に作られているんだ。」

「『斬り絶つ』ですか。難しそうですね。」

「まあ、ホングルと戦うときに見てれば分かるよ。それより、槍がどうした?」

「はい、それが、今は森の中で戦うことを考慮して剣を持っていますが。俺の本当の得物は槍なんです。なので、ご教授願いたいんですが。」

「俺は別にいいけど。俺の戦い方は『棒槍術』といって、突くことよりも叩いたり、斬ったりするのが中心なんだが。」

「かまいません、俺は強くなりたいんです。」

「そうか、なら森から帰った教えてえやろう。言っとくが俺の訓練は甘くないぞ。」

「望むところです。」

そう言うと、青年は嬉しそうに頷いた。

「おい、シンク。もたもたするな。」

「はい、すみません、トモハルさんでは、失礼します。」

そう言うと、青年、シンクは自警隊の列のに戻って行った。

智春はその後ろを少し楽しそうに付いて行くのだった。


ホングルを5頭ほど狩って、セリアの魔法で氷漬けにしながら智春は違和感を感じた。

「なんだ、森の奥に入れば入るほどホングルが少なくなってくる。どういうことだ。」

智春はつぶやきながらあたりを見回す。

さっきは、一度に2頭も来たりしていたのに、あたりにはもう気配が無い。

「もう、ここらは狩りつくしたのか?」

「それは無いわ。ホングルが森の5頭だけなんてありえないわ。」

智春のつぶやきを拾ったセリアは難しい顔をして否定する。


ドゴーン


急に森の奥から大きな物音がした。

「なんかやばい気配がするな。おい、ルーク、お前らはホングルを持って村へ帰れ。俺たちで様子を見てくる。」

「なめるな、俺たちもまだいける。全員行くぞ。」

そう言うと、ルークは勝手に歩き始めた。

村の自警隊の訓練を考え、ホングルが二頭で出てきたり、危ない場面でない限り自警隊に狩らせていたため、ルークを含め皆満身創痍であった。

「くそっ」

智春は舌打ちをして、ルークたちの後を追った。

ルーク以外の隊員たちは皆不安の表情を浮かべている。

物音の場所にたどり着くと、隊員たちは言葉を失い、立ち尽くした。

「『ガバス』ですって.....」

セリアは蒼白な顔をしてつぶやいた。

そこには、尾が二股に別れ、二足歩行をするワニのような生き物がいた。

「なんだ、強いのか?」

「中級上位の獣よ、見ての通り下位のホングルよりかなり強いわ。」

そう、ガバスと呼ばれた獣はホングルを食べている最中だった。

さっきの物音はおそらく、ガバスとホングルの戦闘の音だったのだろう。

「ふーん、こいつがいたからホングルが村まで出て来てたのか。」

「も、もう村も終わりだ。」

そう言って、自警隊の一人の隊員がその場に座り込む。

ほとんどの隊員の目に戦意は浮かんでいない。

しかし、一人の男だけは違った。

ルークだ。

「今なら、奴が向こうを向いてる今なら。」

「やめろ、」

智春が制止する暇もなく、ルークは飛び出していく。

しかし、その動きに背後から強襲する者の気配を消そうとするものが見えない、見えるのは焦りに突き動かされる者の姿だった。

「くそ、馬鹿野郎。」

智春は悪態をつきながらルークを追って飛び出す。

「グガァ?」

ガバスが走ってくるルークの存在に気付いた。

ガバスは振り向きざまにその長い爪で一薙ぎする。

ガキィィン

ガバスの爪による攻撃をルークは剣ではじく、しかし、一緒にルークの腕もはじかれ胴ががら空きになった。

「やっべー」

智春は歩法で3メートルほどの距離を一瞬で詰め、ルークを蹴飛ばし自分も回避する。

ちょうどルークの腹があった場所をガバスの尾の一本・・による攻撃が通過する。

「がはーー、」

しかし、二股に分かれたガバスの尾は回避した智春の動きに追従し、その腹を貫いていた。

「トモハルっ」

セリアの声が戦場に響く。

しかし、腹を貫かれたはずの智春は血を流しながらも立ち上がった。

「安元流剣術、初奥義しょおうぎ迎合斬牙げいごうざんが』」

そう呟くと、智春は今までとは違う構えをとった。

ルークは腰を抜かして動けていない。

ガバスは智春をもう餌としてしか見ていないのか口を開いてとびかかった。

「避けて、トモハル!」

セリアの言葉もむなしく、智春はその場を動かない。

誰もがその次の悲惨な瞬間を思い浮かべて目をつむった。

ドサ、ドサ

何か重たいものが二つ落ちる音が響く。

セリアは恐る恐る目を見開き、その光景に驚愕した。

ガバスは胴と首が離れて落ちており、その後ろに智春が背を向けて立っていた。

「倒したのか.....」

自警隊の誰かが口を開く。

それに合わせるかのように、智春が崩れ落ちた。

「トモハル!」

セリアは急いで駆け寄り、その返り血と自分の血で赤く染まる智春を抱え起こす。

智春の腹には、拳大の穴がぽっかり開いていた。

「死んじゃダメ。」

セリアは急いで傷口を凍らせる。

「トモハルさん、」

驚愕から覚めたシンクが駆け寄って来た。

「まだ、息がありますね。これならまだ間に合います。トモハルさんを俺の背に!」

そう言うと、シンクは剣を放り出し、智春に背を向けた。

「落ちないように少し凍らせるわよ。」

「はい、と、冷たっ、く、では。」

そう言うと、シンクはすごい速さで村の方へかけていき、気を取り直した自警隊の数名がそれに続いた。

その場には自責の念に顔を俯かせるルークとそれを睨むセリア、そして、どうにもできず不安そうな顔をする自警隊の数名が残った。

「あなたたち、ふらふらしないでその死体をまとめなさい。さっさと帰るわよ。」

「「「はいっ」」」

その声は今日一番森に響いていた。








このお話を読んでいただきありがとうございます。

私情でありますがこれから一週間ほど続きを投稿できません。

申し訳ありませんが、どうか、一週間ほどお待ちいただけると幸いです。

では、しばしのお別れを

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