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5話:バーシュ村を救え‼

5話:バーシュ村を救え‼


村に着くと、まず、村長の家に通された。

村の中は活気がなく、一言で言うとさびれていた。

氷塊は大きすぎて村長の家に入らなかったため、家のわきに置いてきている。

セリアの作った呪氷じゅひょうのため、氷が解ける心配はないのだ。

智春たちは村長の家の応接間に通され、そこで紅茶に似たお茶で一息ついていた。

「では、改めて、わしがこの村の村長をしておるバルガスじゃ。そして、その若いのが自警隊隊長のルーク、そして知っておると思うが薬師くすしのレイラじゃ。今回の事は本当に感謝しておる。」

「いいって。さっきも言った通り俺らも迷子で困ってたのを助けてもらったんだし。っと、俺は智春・青山。記憶喪失で森の中をさまよってたんだ。」

「ほう、記憶喪失だったか、なぜこんな辺境の森にいたのか疑問だったのじゃが・・・」

智春は昨晩にセリアとの協議で異世界転移を隠すために、記憶喪失で過去の記憶がないことにすることになったのだ。

「して、そちらは?」

村長は、セリアへ話を振る。

「私は、あの森の奥で生まれ、いま、このトモハルと契約を結んでいる、『氷姫精霊ひょうきせいれい』セリア・ウォルトスールと申します。なので、トモハルがなぜあの森にいたかは存じておりません。」

「ほう、精霊とな。こんな上位の方とお会いするのは初めてじゃ。」

「村長でも会ったことは無いんですか?」

バルガスの言葉にレイラが驚く。

「ああ、街に出た時に会っていたとしても気付かんがな。」

「ふふ、そうですわね。」

セリアとバルカスは笑いあう。

『セリアってこんな話し方をしていると淑女みたいだな。さっきまでとは大違いだ。』

智春がそんなことを考えているとセリアが智春を睨み上げた。

「あら、トモハル、何か失礼な事考えてないかしら?」

「そ、そんなことないぞ。決して絶対。」

智春は慌てて首を横に振る。

そんな光景をレイラは不満そうに見つめていた。

「して、そのトモハル殿は一人で4メルもあるホングルを倒したのか。」

ここで説明しておくが、『メル』は長さの単位で地球で言う『メートル』に該当する。ちなみに、『センチメートル』は『セル』で、『キロメートル』は『キル』である。

「ああ、一応これでも武芸には少したしなみがあってな。結構色々できるが、得意は剣術、槍術、体術の三つだな。」

「ほう、ホングルを一人で倒せる腕か。その、記憶喪失と言っておったが、この後行くあてでもあるのか?」

「いや、特にないが一応大きな街に出て、冒険者でもしながら旅をしようかと考えているんだけど。」

「そうか、では少しの間だけでもいいこの村にとどまって、村の自警隊の連中を鍛えてはくれまいか?家や食事はこちらで用意する。こんなずうずうしいことを頼める立場ではないことはわかっておるが、お願いじゃ。」

「それはこの村の活気がないことに関係するのか?」

「ああ、そうじゃ。」

「ふぅ、なら俺はいいが、セリアはそれでいいか?」

「私は洞窟の外にいられるのなら別にいいわ。急ぐ旅をしているわけではないのだから。」

智春のとなりで話の成り行きを見ていたセリアは元の口調に戻ったことにも気づかず頷いた。

「そうか、それはありがたい。ならすぐに空き家の手配をしよう。レイア、頼めるか。」

「ええ、なら村長、私の家はどうでしょう。」

「なっ、レイア、それはダメだ。」

急にずっと話を聞くだけだったルークが話に入ってきた。

「どうしてですか?」

「そんな、つい昨日会ったばかりの奴としかも男女で同じ屋根の下で寝るなんて。」

「そんなの、大丈夫ですよ。トモハルさんはそんな人ではありません。」

「まあ、待て、レイラ。ルークの言い分にも一理ある。トモハル殿を信用していないわけでは無いのじゃが、いかんせん、体裁というものがある。その代り、レイアには二人の世話を任せよう。それでよいかのお二人とも。」

「ええ、かまいませんが。」

智春の首肯にレイラは不満そうな顔を向けた。

「では、何かあったらレイラに聞いてくれ、それでルークもよいかの。」

「はい、それなら...」

ルークも渋々といった感じで頷いた。

「じゃあ、なんで村にこんなに活気が無いのか教えてくれないか?」

「ああ、そうじゃな・・・実は、半年ほど前から森の奥に住んどったはずのホングルやほかの獣たちが急に村のあたりに多く出没するようになってな、村では今までやっていた農業なども下手にできなくなってしまって困っていたんじゃ。そして、つい2か月ほど前、村の住民が急に何かの病に倒れてのう、元気に動き回れるのも一部の人間だけになったのじゃ。」

「ふーん、伝染病かなんかか?」

そんな、疑問に答えたのは村長ではなくレイラだった。

「いいえ、私は薬師なので多くの患者さんを見ましたが、どうも、伝染病ではなく、どんな病気かすらわかりませんでした。」

「そうか・・・自警隊の事は分かった。だが、俺には医療の知識もある。少し患者の様子を見させてくれないか?」

「へ?いいですが・・・」

「そうか、何から何まですまんな。自警隊の事は明日からでよい、今日は患者を診てもらえんか。」

「もちろんだ。」

そう言って、レイラ先導の元、智春たちは患者の家へ向かった。

「あんな、よそ者にそんな大事な事を任せてよいのですか?」

「よい、お主が何を目の敵にしとるかはわからんが、わしが70年余り生きてきた中での勘があの者たちは大丈夫だと言っておる。」

「そうですか.............では俺は警備に戻ります。」

「ああ、すまんな、任せたぞ。」

そう言って、ルークは応接間を出て村の警備に向かった。


「レイラ姉ーー」

村長の家を出たレイラのもとに二人の少女が駆け寄って来た。

髪は紅く、二人とも顔の造形もとても似通っているが、片方は緑の目に活発そうな表情で、もう片方は黄色い目におとなしそうな表情を浮かべていた。

「リリャーナ、サリーニャ。ごめんなさいね、心配をかけました。」

「そうだよ、何も言わずに一人で森に行くなんて。」

「落ち着いてリーナちゃん、レイラ姉さんは村のみんなの事を思って。」

「わかってるわよ、サーニャ。でも、すっごく心配したんだから。で、レイラ姉後ろの人たちは?」

リリャーナと呼ばれた少女がが智春たちを見て首を傾げた。

「ああ、こちらはトモハルさんとセリアさん。森でホングルに襲われていた私を助けたくれたんです。すごいんですよ、トモハルさんは一人であのホングルを倒しっちゃたんですから。」

レイラはまるで我が事のように胸を張って話した。

「あはははは、ご紹介に預かりました、智春です。レイラとりあえず移動しないか。」

「へ?あ、そうですね。では、近いところから回ってみましょう。」

そう言って、レイラは歩き始めた。

移動中の雑談で分かったことだが、このリリャーナとサリーニャは双子で、さらにあの自警隊の隊長ルークの妹であった。

二人は、レイラについて薬師になる勉強中でレイラがいない間、村の患者の様子を見ていたようだ。

「ここが、一番最初に発症した人の家です。ジェイドさん、入りますよ。」

「おお、レイラちゃん無事だったか。ん、その人たちは?」

家の中には60代後半の男性が、ベットで横になっており起き上がれない様子だった。

「この人たちは、トモハルさんとセリアさんといって、森で私を助けてくれたんです。」

「おお、そうかでわしには何の用で?」

「それが、トモハルさんに医学の知識があるそうなのでジェイドさんの診察をしてくださるということで連れてきました。」

「おお、そうか、でもレイラちゃんでもわからんかったんだからなあ。」

ジェイドは拒絶するわけではなっかたが、あまり乗り気ではないようだ。

「まあ、騙されたと思って、で、どんな症状があるんだ?」

智春は事前にレイラたちから症状などは聞いていたが、もう一度ジェイドに問いかけた。

「ああ、最初は足がむくんでいるだけっだたんだがな、最近は足がしびれだしてな、ここの調子もよくないんだ。」

そう言うと、ジェイドは自分の心臓あたりを指差した。

「そうか....レイラ、この村で栽培されてる作物は何だ?」

「作物ですか?『パラム』が中心であと野菜などを少々です。」

「『パラム』?何だそれは。」

「『パラム』をご存じでないんですか。」

「ああ、知らん。」

どうやら、固有名詞は言葉が理解できてもどんなものかはわからないようだ。

「そうですね、ジェイドさん実物はありますか?」

「ああ、そこの箱に幾らか入ってるだろう。」

そう言って、ジェイドは炊事場のわきに置いてあった縦長の箱を指した。

「おっ、これか爺さん少し覗かせてもらうぜ。」

「ああ、かまわんよ。」

智春が箱のふたを開けると、そこには白で楕円形をしており日本人になじみ深い、そう米があった。

「ほう、米か。それで病気の発症前から今にかけて何を食ってきた?」

「主にパラムだな。それと分けてもらった獣の肉などかな。」

「野菜や豆類は?あと、飲み物は?」

「野菜はホングルが出てから畑がかっらきしになってからは食っておらん。豆は若い者にやったな。飲み物は水か『ペペン茶』くらいかな。」

「そうか、こりゃ脚気だな。」

「カッケ?それは何ですか?」

レイアはキョトンとした顔で首を傾げた。

「まあ、簡単に言うと栄養不足だな。薬は何を使ってた。」

「栄養不足ですか....まあ、今の村の状態なら納得ですが、栄養不足でこんな症状が出るんですね。えっと、お薬はむくんだ足に塗り薬とマッサージをしていました。」

「そうか、他の連中も症状は同じか?」

「ええ、大体一緒ですね。でも、今の村の食料庫の様子では患者全員に食べさせるのはちょっときついかもしれません。どんな、物が足りてないのですか?」

「そうか、なら症状がひどい者から順に豆料理を食わせるんだ。ビタミンB1が必要だ。ここは家畜はいるのか?」

「びたみんびーわん?いいえ、家畜はホングルにやられてしまって。」

「くそ、邪魔な熊だな...?熊、そうかその手があった。」

智春はニヤリと笑う。

「レイラ、リリャーナ、サリーニャ。今すぐ俺が倒したホングルの肉を調理してみんなに振る舞え。」

「はい?あのホングル、良いんですか?」

「いいさ、どうせあのままでは腐るだけなんだから。」

「はい、わかりました。リリャーナ、サリーニャ行きますよ。」

「うん、ありがとうトモハル兄」

「はい、ありがとうなのです。トモハルお兄さん。」

そう言うと、三人は村長の家へと駆けだして行った。

「ああ、急いで行って来い。爺さん邪魔したな。」

「それはいい、それより、本当に治るのか?」

「ああ、もちろんだ。」

そう言って、智春はジェイドの家を後にした。

家を出ると今までずっと黙っていたセリアが智春の横に並ぶ。

「今のはあなたの元居た世界の知識?」

「ん、ああ、俺の世界はかなり医学が進歩しててな、俺は医者の息子で、医者としての英才教育を受けてたんだ。あの病気は俺らの世界でもはっやていてな、一時期は伝染病だなんて言われてたこともあるんだ。」

智春は苦々しく笑う。

「ふーん、それであなたは今から熊狩りにでも行くわけ?」

「まあ、そうだよ。ここまで関わったんだ。村の全員を救って行きたいもんな。」

「はあ、なら村長にホングルの出やすい場所でも聞きに行きましょう。」

「おう。」

そう言うと二人は村長の家を目指すのだった。






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