表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/50

Part 03 「姉様」と夕食とファイアショー

 二人はしばらく時間を忘れたように見つめ合っていた。

 雪姫と呼ばれた少女を見るベルの胸中には複雑な思いが去来していた。

(……なんなんだ、この娘? 魂の波長が『あいつ』に似ているだけではない。何か『特別な力』を感じる……)

「二人共、ぼーっとしちゃってどうしたの? もしかして、お互いに見とれてた?」

 葉子の一言で、ベルは我に返った。

「……まあ、そんな所だ。ずいぶんと綺麗な娘じゃないか」

 ベルの言葉に雪姫は照れたように微笑んだ。

「ユキさん、この子はウチにしばらく留まる事になったベル・イグニスさんよ。まあ私は『ベルちゃん』って呼んでるけど」

 葉子の言葉を聞き、雪姫はベルを頭の先から爪先まで見た後、自己紹介した。

「雪姫です。よろしくお願いいたします。私の事は気軽に『雪姫』と呼んで下さい」

「ベル・イグニスだ。当分の間、ここで世話になる事になった。自分の事も『ベル』と気軽に呼んでくれて構わない。こちらこそ、よろしく頼む」

 二人は自然と握手を交わす。雪姫の手はどこかひんやりとした心地良さを感じさせた。そして――


「よろしくお願いいたしますね、ベルお姉様・・・


 雪姫は屈託のない笑顔を添えて、そう言った。直後、玄関先に沈黙が降りた。


「……えーと、雪姫とやら。何故ベルの事を『お姉様』などと呼ぶ?」

 ベルがぎこちない笑顔を浮かべて雪姫に問いかける。すると雪姫は何て事ないかのように答えた。

「えっ? だって、ベルお姉様って私より年上ですよね? あっ、もし間違っていたらごめんなさいっ」

 そう言って雪姫は頭を下げた。一方ベルは驚愕に満ちた表情で雪姫を見つめていた。

(……何故、この娘はベルが年上だとわかったのだ? 普通このような外見だと絶対自分よりも年下だと思うはずなのに……やはりこの娘、ただ者ではない)

「あの……ベルお姉様、もしかして怒ってますか? 難しい顔されてますけど」

「……えっ?」

 雪姫に言われ、そこでベルは初めて自分が難しい顔をして雪姫を見ていた事に気付いた。

 ベルは慌てて思考に耽っていた顔を強引に微笑みへと直した。

「いや、違うんだ。一目でベルが年上だと見抜いた事に驚いていただけだよ」

「そうなんですか、よかったぁ」

 安心させるようなベルの言葉に、雪姫はほっと息をついた。

「えっ? ベルちゃん……いえ、ベルさんってユキさんよりも年上だったの? ごめんなさいね、私全然気が付かなくて」

 謝る葉子をベルは手で制した。

「いや、いいんだ。最初に言っておかなかったベルが悪い。それと葉子、ベルは呼び方は気にしない。今まで通り『ベルちゃん』と呼んでくれて構わないぞ。それと、雪姫」

「は、はいっ」

 ベルに初めて名を呼ばれ、雪姫は背筋をピンと伸ばす。その様子にベルは思わず苦笑する。

「おいおい、力を入れなくていいんだぞ? それと、ベルお姉様という言い方はやめろ。何だかくすぐったい」

「で、でも、年上なんですからきちんとした名前で呼ばないと……ベル様? うーん」

 呼び方で何やら真剣に悩みだした雪姫を見て、ベルは仕方がないなと言いたげに笑った。

「……わかった。ベルの事は親しみを込めて『ベル姉様』と呼ぶといい」

 すると、雪姫の顔に笑顔が広がっていく。

「本当ですか!? じゃ、じゃあそう呼ばせていただきます、ベル姉様!」

 屈託なく笑う雪姫と慣れない呼び方にくすぐったさを覚えつつも、ベルの頬は緩んでいた。

「ああ。改めてよろしくな、雪姫」

 そう答えつつ、ベルの脳裏にはある人物が思い起こされていた。


 それは、かつてごく限られた人物とだけ接していた時。「彼女」はそんなの関係ないとばかりに自分に懐き、何かと自分の後にくっついてきていた。

 最初のうちは鬱陶しく思っていたものの、ついにベルは根負けし、「彼女」を自分の側に置く事にしたのだった。


(……あいつ、今はどこで何をしているのか……)


「あらあら、二人共すっかり仲良くなっちゃったみたいね。ああいけない、夕食の支度に戻らなきゃ。ベルちゃん、手伝ってくれる?」

 葉子の一言でベルは現実に引き戻された。雪姫を見ていて、つい昔の事を思い出してしまっていたらしい。

「……ん? ああ、任せておけ」

 ベルは頷き、葉子の後について台所へ向かっていく。

「手伝い? 葉子さん、どういう事ですか?」

 首を傾げる雪姫に葉子は笑って言った。

「すぐにわかるわよ、ユキさん。夕食をお楽しみにね」

「????」

 雪姫は頭にクエスチョンマークをたくさん浮かべ、首を傾げるだけだった。




 それから午後七時過ぎ。夕食の手伝いを終えたベルは葉子と共に食堂へ向かった。

 食堂にはすでに雪姫と鷹槍、それから四人の若い男達の姿があった。葉子曰く、彼らはこの工務店に住み込みで働いている若い職人との事だ。

 彼らはベルの姿を見ると、一斉に色めき立つ。それを鷹槍が「おめえら、お客さんに失礼だろうが! 大人しく座ってろ!」と諫めていた。

 ふと見ると、ベルは賀川の姿がない事に気がついた。

「あれ? そういえば賀川さんは?」

 雪姫が辺りを見渡す。すると葉子が口を挟んだ。

「ああ、賀川君ならまだ寝てるわ。部屋の戸に『しばらく起こさないで下さい。死ぬほど疲れてます』ってメモが貼ってあったわ」

「うーん、賀川さん大丈夫でしょうか……最近忙しすぎて話もほとんどできてないです……」

「……」

 心底寂しそうな顔をした雪姫をベルは見逃さなかった。

「まあまあ、最近賀川君激務続きだったし、たまにはゆっくり休ませてあげましょうよ」

 葉子はそう言いつつ夕食を置いていく。今日の献立は鶏の唐揚げにサラダだった。

 ベルも食器や料理を運んでいく。若い職人達の所へ行った際には「今日からしばらく世話になる」と一言付け加えておいた。外国人の美少女に声をかけられ、職人達は大はしゃぎしていたが、それをまた鷹槍が一喝でその場を収めた。

「ごめんなさいねベルちゃん、賑やかすぎて。それに、本当ならお祝いの準備をする所なんだけど、あまりにも急だったから簡単なものしか用意できなくて」

 手伝いを終えて戻ってきたベルに、葉子は申し訳なさそうな声をかけた。

「いや、構わないさ。急におしかける事になったベルに非があった。謝るのはベルの方だ」

「いいのよベルちゃん。どんな形であれ、あなたはウチのお客様なんだから自分の家だと思ってゆっくりしていって」

「……すまないな。そうさせてもらうよ」

 葉子の言葉にベルははにかんだように笑った。彼女はそれに笑って応えると、ベルを促した。

「さあ、ベルちゃんに手伝ってもらったんだもの。今日の夕飯はいつもより美味しいわよ!」

 そして、二人は席についた。




 夕食の席に八人分の「いただきます」という声が響く。

 ベルは雪姫、鷹槍、葉子の席の近くに腰を下ろし、そこでざっくばらんに自分がうろな町へやってきた理由――「降魔の書」を探しに来た事について話した。もっとも、自分が堕天使である事は伏せ、「降魔の書」を古く価値のある書物だという風に答えるなど、様々な情報操作は行った上でだが。

 それでも一同は納得してくれたようで、ベルの事情を理解してくれたようだ。

「ふーむ、若ぇのに大変だな。一冊の古本を探すために一人ではるばるこの町に来るとはな」

「そうねえ。どんな本かは知らないけど、相当な値打ち物なんでしょうね」

 鷹槍と葉子は神妙に頷いていたが、雪姫だけはどこか上の空といった様子で、時折賀川の座るはずだった席を見つめていた。食事はほとんど進んでいない。

 その時、何の気なしに彼女が唐揚げを口に含んだ時――

「――えっ!?」

 雪姫が驚きに目を見開く。その向こうでは職人達が「何だこの唐揚げはぁ!? いつもよりかなり美味いぞ!」と歓声を上げている。

 それに目敏く気付いたベルと葉子は、アイコンタクトを交わし、笑みをこぼした。

「……この唐揚げ、いつもと違う……なんて言うか、火の通り、でしょうか? 一番いい具合に火が通っています」

 雪姫はドングリをかじるリスのように、唐揚げを細かく、ゆっくりと食べていく。

「だな。確かにいつもとは段違いだ」

 雪姫の言葉に鷹槍も神妙に頷いた。

「そうでしょう? ベルちゃんのおかげなのよ」

「なあ葉子、昼の時もそうだがベル嬢ちゃんのおかげってどういう事なんだ?」

 鷹槍が訝しげな表情でベルをちらちらと見る。一方葉子もどう説明したものかという視線でベルを見て、雪姫は興味津々という様子でこちらを見つめている。

 三者三様の視線をベルは受け止め、一つ息をつくと口を開いた。

「……いいだろう。後でどのようなものか説明しよう。ただし、驚くなよ?」

 そう言ってベルは悪戯っぽく笑った。




 夕食後、鷹槍は立ち上がるとどこかへ向かい、やがて何かを手にして戻ってきた。そして、雑談している職人達の元へ向かうとテーブルにそれをドンと置いた。

「おいおめえら、いいモンがあるからこいつを持って上に行けや」

「こ、これは……」

 職人達が驚きを隠せない表情で互いの顔と置かれた物を見合わせる。

 テーブルに置かれたそれは、「海江田の奇跡」というラベルが貼られた一升瓶だった。

「おめえら、ちと悪いが引き上げてこれでも飲んでろや。それと、しばらく台所には来るんじゃねーぞ」

 一升瓶の正体を見た職人達は一斉に色めきだし、立ち上がった。

「おやっさん、ありがとうございます!」

「おう。明日長距離のある奴は検知器に引っかからねーようにな」

「ういーっす! ほら、行くぞお前ら!」

「「「うおおおーっ!」」」

 職人達は浮かれた急ぎ足で食堂を後にした。後にはベル、鷹槍、葉子、そして雪姫だけが残された。

「これでよし。ベル嬢ちゃん、これで心おきなくその『秘密』を見せられるぞ」

「鷹槍、どうして……」

 頼んでいないのに人払いをしてくれた驚きを隠せないベル。

「あん? 嬢ちゃんの口振り、それに葉子の態度からお前さんが何か常識外れな事をやってのけたのはわからぁな。で、あいつらにそれを見せちまうとすぐ口に出しちまいそうなんでな。だからご退席いただいたのさ」

「……かたじけない」

 鷹槍の気遣いに、ベルはただ頭を下げる事しかできなかった。

「いいって事よ。ただし、何をしたのか包み隠さず見せてもらうからな」

 鷹槍の言葉に、ベルは頷いた。

「いいだろう。だが、これからベルが見せるのは紛れもない真実だ。そこを肝に銘じた上で、その目に焼き付けろ」

 威厳に満ちた口調で注意を促すベル。三人は頷き、事を見守っている。

 その視線の先でベルは呼吸を整え、力を集中する。そして、片手を一同の前に突きだした。

 すると、親指から順に爪の先にライターほどの火が灯る。突然の出来事に目を白黒させて驚きつつも、それを見守る一同。

 さらにベルはそのまま開いていた手を握りしめた。一同からさらに驚きの声が上がる。

 一方ベルは涼しい顔で握りしめていた手を開いてみせる。そこにはゴルフボール程の大きさをした火球が浮かんでいた。

 ベルはしばらくそれを掌に浮かべていたが、やがてそれを握り潰した。火球は瞬時に消え、火の粉がその名残のようにはらはらと散る。そして、手を開いてみせるがその手には僅かな火傷の痕すらない。

 目の前で披露された人智を越えた現象に三人は言葉を失っている。

「――まあ、このようにベルはタネも仕掛けもなく火を操る事ができる。料理用の火から、対象を燃やすほどの炎までな」

 力を抜いたベルが言葉を紡ぐ。ややあって、鷹槍が口を開いた。

「……驚いたな。これは確かに手品なんてもんじゃねえ。正真正銘、超能力としか言えないものだ」

「確かに、一足先に見せてもらったけどこんなに近くで見せられたら、改めてベルちゃんが凄いっていうのがわかるわ……」

 彼の言葉に葉子が神妙に頷く。

「すごい……」

 雪姫も目を丸くしてベルが見せた炎のショーに見入っていた。

 一旦呼吸を整え、ベルは口を開いた。

「……さて、ここからが本題だ。ベルはここにいる間、この力をこの家のために役立てたいと思う。もちろん、皆の許可が下りればの話だが」

 しばしの沈黙。やがて、鷹槍が口を開いた。

「……俺は別に構わないぞ。むしろ、ごまかす事だってできただろうにわざわざ見せてくれたんだ。そこまでしてもらったんだ、ベル嬢ちゃんの気持ちはよくわかった」

「私は最初から賛成よ。むしろ、力を使うのも大変でしょうに、わざわざウチのために使うってそうそう言える事じゃないと思うわ」

 鷹槍と葉子はすぐに賛成してくれた。だが雪姫はなぜか少し悲しそうな顔でベルを見つめていた。

「ユキさん? どうかしたの?」

 葉子の問いに、雪姫は弾かれたように顔を上げ、微笑みを浮かべた。

「い、いえ、何でもないです」

「……?」

 ベルは雪姫が見せたあの表情が気になったものの、すぐにその考えを頭から切り離した。

「決まりのようだな。では、これからしばらく、この家の火はベルに任せてもらおう」

 自信満々にベルは頷いた。それに葉子は笑顔を返した。

「それじゃあベルちゃん、これからしばらくよろしくお願いね。それと雪姫さん、ベルちゃんの部屋だけど、しばらくの間は離れでベルちゃんと一緒に寝泊まりしてあげてね。女の子同士安心できるでしょうし、二人共仲良しになったみたいだし」

「はい、葉子さん。よろしくお願いしますね、ベル姉様」

 頭を下げる雪姫にベルも頭を下げてそれに応えた。

「ああ。では雪姫、戻ろうか? お前とはもっと色々と話をしてみたい」

「はい!」

 そして、二人が離れに戻ろうとした時、葉子の声が背中に届いた。


「そうだ、ベルちゃん。最後に一つ聞きたいんだけど、どうしてあなたはその力を私達に見せてくれたの?」


 するとベルは背を向けたまま笑って答えた。

「――さあ、わからない。しいて言うなら、ただベルがそうしたかっただけだ。それに、お前達ならマスコミや胡散臭い研究機関などに情報を流すような事はしない。そう直感したからかな」

 それだけ言い終え、ベルは雪姫と共に離れへ戻っていった。そして、その背に「ありがとう」という葉子の声が届いた。




 夕食後、ベルと雪姫は離れに戻り、二人きりで話し込んでいた。

「……で、ここは海と町の風景がいいバランスで見渡せる場所で描いたんです」

「ふむふむ。確かにこれは本当によく描けている。構図、色彩共に申し分ない。雪姫は本当に絵が上手いのだな」

 雪姫はベルに自分が描いた絵について説明していた。ちなみに今説明しているのは町の風景と海の青が上手く融合した風景画だ。

 ベルは初めて雪姫の絵を見た時から純粋に、彼女の絵は本当に上手いと感じていた。堕天使の中にも芸術に長けた者はいるが、雪姫の絵は何故か、ベルの心に強く焼き付いて離れない程の印象を与えていた。

「べ、ベル姉様、誉めすぎですっ。私の絵はプロの画家さんと比べたら……」

「雪姫」

 自分を謙遜する雪姫に、ベルはそっと彼女の肩に手を置き、その深紅の瞳を見つめながら言葉を紡いだ。

「雪姫の絵は本当に上手い。ベルが保証しよう。ベルは今まで様々な絵画を見てきたが、ここまで強く心に残る絵は見た事がない。自信を持て、雪姫」

 諭すように一言一言に力を込めて、ベルは雪姫を励ました。

 力説するベルに雪姫はしばらくぽかんとしていたが、やがてにっこりと笑った。

「ありがとうございます、ベル姉様。なんだか、自信が出てきたような気がします。私、これからももっと見る人を感動させるような絵を描いていきますね!」

「その意気だ、雪姫」

 自信を持った顔の雪姫に、ベルは力強く頷いた。

「……そういえば、一つ気になったんですがベル姉様っていつもそんなドレスを着ているんですか? ええと、確かゴスロリっていうんでしたよね?」

 雪姫が興味津々といった顔でベルが纏っている真紅のドレスを指しながら尋ねる。

「ああ。家にいる時は普通の服だが、今回のような、まあ仕事かな? そういう時にはこのドレスを纏うのさ。いわゆる、ベルにとっての戦装束だな」

 ベルはスカートをつまみ、胸を張って答える。何せこのドレスはベルが地上界のゴスロリファッションを独自に研究、アレンジして作り出したオリジナルの逸品なのだ。さらにこのドレスは魔術による加工や強化が施されており、普段着を即座にこのドレスに変化させる事や、耐衝撃、耐刃、防弾などいった防御機能も兼ね備えている、まさにベルにとっての戦装束なのだ。

 すると雪姫は目を輝かせた。

「すごいですっ。それがベル姉様の正装なんですね! ベル姉様の髪にドレスの紅がとてもよく似合っています! それに、頭に乗せたティアラも綺麗な細工がしてあってとても綺麗です!」

「あ、ありがとう」

 身を乗り出してベルのファッションについてべた褒めする雪姫にベルは気圧されつつも礼を言った。

(……やれやれ、何だか色々と変わった子だが、実にいい子じゃないか。どうやらここで過ごす間は退屈せずにすみそうだ)

 自分でも悪くないなと思える感覚にくすぐったさを覚えつつ、ベルはクスリと笑みをこぼした。

 ふと、ベルはある事を思いつき、雪姫を手招きした。

「特別だぞ」

 ベルはそう言うとティアラを外して雪姫の頭に載せた。元々はベルの髪色に合わせて作られた物だったので、雪姫の白髪とはどこかミスマッチしていた。

 だが、鏡に映して見た雪姫の姿はお姫様のようだった。

「ベル姉様」

 突然、雪姫がベルに声をかけた。

「何だ?」

「いいえ、私も……何か出来る事があればいいのに」

 悲しげな笑みを浮かべた雪姫に、ベルはしばらく不思議そうな顔をしていたが、やがて力強く微笑んだ。

「ベルには何の事かはわからないが、雪姫、お前はもう少し自分自身に自信を持て」

 そう言って雪姫を励ますベルに、雪姫はふっと柔らかく笑った。


 こうして、ベルのうろな町での滞在場所は滞りなく決まったのであった。

桜月りま様 うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より 賀川さん、葉子さん、前田鷹槍さん、うろな工務店の職人さん、そしてユキちゃん、お借りいたしました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ