勉強教えて?
放課後っていいよな。解放感に満ち溢れている。特に金曜日の放課後は最高だ。
だけどそんな放課後も、今の俺には苦痛の時間でしかない。それも全部
「お兄ちゃん、なに恐い顔してるの?」
ひとえにこいつのせいだ。
坂口みおり――俺の義理の妹であり、超美人で学校の有名人、平凡極まりない俺とは正反対の人間だ。
そんな学園のマドンナと一緒に下校していれば、好奇の視線に晒されることこの上ない。
家に帰るまで気が休まらん。
「ただいま~」
「おかえりなさい、二人とも」
やっと帰ってこれた。ようやくこれで一息つけ
「あ、お兄ちゃん。後で勉強教えてくれない?」
なさそうだ。
わかった。と適当に返事して、俺は自分の部屋に入った。
みおりは勉強だけはどうも苦手らしい。俺も必死で勉強してやっと上位にいる感じなのだが、みおりにしてみれば、俺は都合のいい家庭教師みたいだ。
あいつが来たら、勉強にならないな。
俺は今日やる予定だった参考書
「お兄ちゃん、勉強教えて!」
ではなくドアが開いた。
「はえーよ!」
「せっかちな男は嫌われるよ」
「せっかちなのはお前だ!」
くそ、予想外に早く来やがって、これじゃあ俺の勉強が進まん。
「なぁみおり、もうしばらく待ってくれないか?」
「うーん、いやだ」
「何で!?」
「私がそういう気分だから」
こいつ。
なんつー自分勝手な!
「ちょっと待ってろ」
「いや」
「そんなん言ったって俺は教えないぞ!」
するとなぜか、ふーん。と怪しく笑うみおり。
「そういうこと言っていいんだ?」
「…………え?」
みおりはボスッと俺のベッドに体を投げた。
「この状態でお母さん呼んだら、どうなるかな」
そう言いつつ、制服を適度にはだけさせる。まるで、俺がみおりを押し倒したかのように。
「わ、わかった、わかった、わかりました! 何教えて欲しいんだ?」
「国語と数学と理科と社会、あと英語」
「全教科じゃねーか!」
俺が突っ込むと、半身を起こしたみおりは首を傾げた。
「家庭科が無いけど?」
「それを言うなら保健体育もだろ!?」
「保健体育って……やだお兄ちゃん、何を教える気?」
「タバコの危険性についてみっちり教えてやるよ!」
ダメだ、完全にみおりのペースに呑み込まれている。
「いいから早く教えてよ、お兄ちゃん」
掻き回したのはどいつだよ。
「わかった、で何がわからないんだ」
「だから、五教科よ」
「冗談じゃなかったのかよ!?」
「当たり前でしょ?」
よろしくね。と笑う我が義妹を見ながら、俺は深いため息を吐いた。
そう、こいつは学校では人あたりのいい礼儀正しい性格で通しているが。
俺の前では超自己中心的なワガママ女なのだ。