第9話 コーヒーフレッシュは牛乳ではない
「さて、それでは話し合いといきましょうか」
小鳥が人差し指を立てながら場を仕切り出す。
俺達全員各々知りたいことが多すぎる状態だ。
だからせっかく全員集まったのであればその答え合わせをしようということで場所を移して話し合いの場を設けることになったのだが……
「~~~~っ」
「~~~~っ」
俺と葉子は顔を真っ赤にさせながら互いに目を逸らしあっていた。
「どうして兄さんと葉子さんはそんな離れたところで壁の方を向いているの?」
「だ、だって! わ、私、男の子の部屋に上がるなんて初めてで……その……」
「乙女だ!? 勝手に家に上がってくる度胸はあるのにそこは照れるんですね。それで、兄さんはどうしたの?」
「お、俺、女の子を部屋に上げるなんて久しぶりで……その……」
「乙女か!?」
葉子は同年代の女子の中でも最上位クラスに容姿が整っているだろう。
学校一の美少女とか騒がれていてもおかしくないレベルの美少女である。黙っていれば、だけど。
そんな極上美少女が俺の部屋にいるのだ。緊張しない方がおかしい。
「久しぶり!? 来海! 今女の子を上げるの久しぶりって言いましたわね!? ま、まままま、まさか、以前にも女の子を部屋に連れ込んだことがあるんですの!?」
急にずずぃと詰め寄ってくる葉子。
ビックリした。どうして座ったままホバー移動みたいなことできるの? それも大地の異能なの?
「舞奈だよ! 昔は舞奈と一緒にこの部屋で遊んでいたんだ」
「あ……な、なるほど。来海と舞奈さんは幼馴染ですものね」
ホッと胸をなでおろす葉子。
だけど俺は逆にモヤモヤが残った。
「葉子。どうしてお前は俺のことをそんなに知っているんだ? それに舞奈のことも……」
どうして俺と舞奈が幼馴染であることを知っているのか。
それに舞奈には『さん』付けなのに俺にだけ呼び捨てなのも考えてみたらおかしい。
「舞奈さんから聞いたのですわ。来海が冒険活劇好きなこととか、視力が両目2.5あることとか、コーヒー飲むときはミルクを12個入れることとか」
「めちゃくちゃ俺の個人情報をご存じでいらっしゃる!?」
「……ミルク12個て……兄さん……」
「だって苦いの無理なんだもん!」
だったらコーヒーなんて飲むなって言われそうだけど、俺はミルクたっぷりのあの味が好きなのだ。でももう高校生だからミルク8個くらいに減らそう。そう誓った。
「葉子。そろそろ話してくれ。どうしてお前は俺を探していたんだ?」
「……そう……ですわね。話します。話をするためにワタクシもここに来たのですから」
いよいよ葉子が真相を語る。
謎に包まれた少女がついにベールを脱ぐ、と思っていたのだが……
「で、でも、その前にお部屋に干しっぱなしの洗濯モノを片付けてもらってよろしいでしょうか? 来海の下着とかが、その、チラチラ目に入ってしまって」
「うわわわわっ! ごめん!」
慌てて洗濯物を抱きかかえ、葉子の視界から遠ざける。
「兄さん。洗濯物はちゃんと畳まないとだめ。私も手伝ってあげるから綺麗にたたむこと」
「妹が急に小うるさい家政婦みたいに! ていうか兄の下着を堂々と触らないで!? 気持ち悪いでしょ!?」
「兄さんの下着だったら別に触るの嫌じゃないよ。なんだったら履けるよ?」
「履くな!」
「わ、ワタクシもお洗濯もの畳むのお手伝いいたしますわ」
「葉子は本当にいいから!」
「……パンツの色も牛乳色なのですね」
「うわああああああああああああ!!」
精神的ダメージに耐え切れず頭を抱えながら床に転がりまわる俺。
俺の牛乳異能では心のダメージまで癒すことはできないみたいだった。




