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異世界に行ってしまった幼馴染が俺に異能の力を託してくれたのだが  作者: にぃ


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第25話 私には幼馴染が居る

 

 私には幼馴染が居る。


 楽しい冒険物語を作ることができる来海くん。

 物語を更に楽しい物へと変えることができる小鳥ちゃん。

 その物語を大好きになってくれた葉子ちゃん。



『大きくなったら一緒に異世界転移しような』



 一緒に冒険をする約束をしたあの日から私の心は常に高鳴りを見せていた。

 普通に考えて異世界転移なんてできるはずがない。

 だから来海くんは“創作”という才能を使って私達を空想上で冒険させてくれた。

 皆で楽しく冒険する来海くんの物語が大好きで——

 ずっと、この人の傍で楽しい物語を聞いていたいと、そう願っていた。


 だけどある日突然それは叶わなくなる。


「異世界の勇者よ。名を何という?」


 本当に突然だった。

 視界が暗転し、次に目を開けた瞬間、お城のような場所に飛ばされたのだ。


「こ、ここはどこ!? どうしてこんな所にいるの!?」


「あわてるな。お主は神に選ばれたのだ。まずは授けられた異能を見せてみてくれ」


 王様のような人が威圧するように詰め寄ってくる。

 選ばれた?

 神?

 異能?

 何のことかわからない。

 わからないけど身の危険を感じる。

 今ここで何らかの行動を見せないといけないと思った。


「……えぃ!」


 身体の中に渦巻く異物感を吐き出すように、私は初めて“異能”と呼ばれる力を発揮させた。

 壮烈の火炎が竜巻のように巨大な楕円を描く。


「素晴らしい! 素晴らしい才能だ! これならばきっと魔族に対抗できる! 異世界の勇者よ、その力でこの世界を救うのだ!」


 一方的に呼び出され、一方的に命令してくる。

 そんな理不尽がこの世界では『普通』だということを私はすぐに悟ることになった。







「どうしたよ? 勇者様? そんな風に縛られちゃあお得意の異能も使えないか?」

「さすが勇者だぜ。上等な装備を持ってやがる」

「王様からガッポリ支援もらっている勇者は違うな。まっ、全て俺達が頂くんだけどな」


 異世界勇者狩り。

 いわば盗賊だ。

 転移してきた者から金品を巻き上げる最低の人たち。


「ガキながらなかなか発育いいじゃねぇか」

「剥け剥け! やることやったら奴隷として売り飛ばそうぜ」


 私は転移してから2日目にして危機に面していた。

 装備をはがされ、服も破られる。


「いや……やめて……助けて……来海くん……!」


「こんな山中に助けなんてこねーよ。諦めな、勇・者・様」


 盗賊の手が下着まで剝ごうとしてくる。

 やめて。

 私の身体は……私だけのもの。

 そしていつか来海くんに捧げるものなの!


「やめてぇぇぇぇぇぇ!」


 それは無意識に発動された力だった。

 私を中心に炎が巻き上がり、紅蓮の塊が盗賊の身体を燃やし尽くす。


「うわああああああっ!」

「あっちぃぃぃぃぃぃっ!」

「死ぬ……死ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 盗賊の服が燃え、髪を燃やし、皮膚を焦がす。

 炎に包まれた人間を見て、私は腰を抜かし、人が死にゆく様子を泣きながら眺め続けた。

 初めて人を殺めた瞬間だった。







 こっちにきて1年。

 私はもう元の世界には帰れないことを悟った。

 こっちの世界で生きるためには強くなるしかない。

 私は内に眠る異能を磨き、Aランク冒険者にまで成長した。


 街に迫る魔族を殺した。

 襲い来る人間も殺した。

 時には犯罪者を斬首する役目まで担わされたこともあった。


 日を増すごとに心が死んでいくのがわかる。

 だけど唯一ともいえる心の支えはあった。

 目を瞑り、幼馴染達の姿を思い浮かべる。

 来海くんが創作してくれた楽しい冒険の物語を思い浮かべる。

 それを思い出した瞬間、私は一瞬だけ笑みを取り戻すことができるのだ。







 こちらに来て2年。

 冒険の途中で私は突然気を失った。

 身体がだるい。息が苦しい。

 それは辺境の地に発症される流行り病の傾向だった。

 この病に侵された人間には必ず死が待っている。

 完治の方法が見つからない不治の病。


 “ああ……私は……病気で死んじゃうんだ……”


 動けなくなった私はもう用済みと言わんばかりに冒険者の権利をはく奪された。

 病が流行(うつ)らないように隔離され、閉じ込められた部屋で一人死を待つのみになっている。



 “最後に——”



 “幼馴染()と——”



「もう一度……遊びたかったなぁ……」







 その願いが叶ったはたぶん奇跡だったのだと思う。

 勝手に異世界に呼んだ私に対して神様なりの謝罪だったのかな。

 気が付くと私は元の世界に居た。


 ——いや、意識だけが元の世界に飛ばされたんだ。


 召喚獣だけを元の世界に生み出すことができることを知った。

 そして来海くん達の夢の中に現れることができることを知った。



 ——ああ。嬉しい……



 ——これで来海くん達と……



 ——また遊ぶことができるなぁ……







 だけど終わりの日はやってくる。

 充分に遊ぶことができた私は来海くん達に別れを告げて元の世界に意識を戻す。

 きっと、戻ったら後は死を待つだけの日々なんだろうな。

 最後に遊んでくれてありがとう。

 私のこと、忘れないでね。




「…………やだよぉ」




 嫌だ。




「……もっと、遊びたいよぉ」




 死ぬなんて嫌だ。




「私だけお別れなんて嫌なんだよぉ」




 どうして自分だけこんな目に遭わなければいけない。




「死ぬの怖いよぉ」




 人の命を散々奪ってきたくせに。

 死を覚悟して幼馴染とサヨナラしてきたはずなのに。

 今更になって激しい後悔が心の中をかき乱す。




「助けて……私のこと助けてよ……」




 死期が迫る私の脳裏に思い浮かぶのはやっぱり幼馴染の姿で。

 助けを求めるように私は天井に手を伸ばす。




 スッ




 無意味に伸ばされたその手を——



 暖かな感触が包んでくれた。



 そのままギュっと力強く握られる。




「——当たり前だ。俺がお前を助けに来ないわけがないだろう?」




 よく知る声が聞こえた。


 私が心から望んでいた人の顔が目の前に在った。


 一人で死にゆく怖さを吹き飛ばしてくれるように。

 強く……強く……私の手を握ってくれた。



 ああ——そうだった。



 私には——幼馴染が居る。



 困った時には必ず私のことを助けてくれる、世界一頼もしい幼馴染が。

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