第19話 ひとりぼっち
「魔族——じゃなかった。召喚獣が一切攻撃してこなかったのは、やっぱり……」
「ん……来海くんにはバレちゃってたよね。答えは単純。みんなを傷つけることだけは絶対にしたくなかったからだよ」
異世界に行って手を汚してしまったと告白した舞奈。
だけど根っこの部分はやはり変わっていない。
心優しくて、俺達が大好きな優しい舞奈のままだった。
「舞奈さん。次はワタクシから質問させてください」
葉子が控えめに手を上げながら質問を飛ばしてくる。
「以前、私の夢の中で来海達に会ってほしいって言ってきましたわよね? もしかしてそれにも大きな理由があったのですの?」
「小学生の頃、葉子ちゃんが来海くんと会いたいって言った時、私が断っちゃったよね。そのせいで葉子ちゃん、ずっと一人だったでしょ……」
「それは……」
「葉子ちゃんが友達を作る機会を私が奪ってしまった。しかもその元凶は勝手に異世界に行ってしまった。だから今さらだけど……本当に今さらだけど……異能をキッカケに来海くん達と仲良くさせてあげたかった」
異能を授かったのがどうしてこの3人だったのか。
ちゃんと理由があったんだな。
葉子を一人ぼっちにさせないためという舞奈らしい優しい理由。
「葉子ちゃんには私を恨む権利がある。本当にごめんね。私のせいで一人にさせちゃって……ごめんなさい」
舞奈は過去に俺達と葉子を引き離したことを強く悔いている様子だった。
……馬鹿だな。舞奈。
葉子と付き合いの浅い俺ですら、彼女が次にかける言葉くらい想像つくぞ?
「舞奈さんが謝ることなんて一切ありませんわ!!」
ほらな?
「恨む? 貴方は私をそんな底の浅い女だと思っていたのですか? 私がぼっちだったのは私自身のせい! それに貴方が声をかけてこなければ私は本当の意味でひとりぼっちだった! だから……私が貴方に抱く感情は……『ありがとう』一択ですわ」
葉子は瞳に涙を浮かべながら舞奈召喚獣に抱き着いた。
俺も一緒に抱き着いているものだから二人で舞奈を押しつぶすようにサンドイッチ状態になる。
「泣き虫さんが二人になっちゃったな」
二人に押しつぶされそうになりながら優しく抱きしめ返してくれる舞奈。
その舞奈を小鳥が後ろから抱きしめる。
「舞奈ちゃん……こうやって召喚獣を通して交信できるんなら……もっともっとあそぼ? 今は葉子さんも一緒だから……昔よりもきっと楽しいよ?」
小鳥も薄っすら瞳に涙を浮かべ、囁くような小さな声でぽつりとつぶやいた。
「……ごめん……ごめんね小鳥ちゃん。それはたぶん無理なんだ」
「……どうして?」
「私がそっちの世界に召喚獣を呼べるのは恐らく後1回が限度。だから遊べるとしたらあと1回だけなの」
「どうして……!」
「……ごめんね」
やっぱり変だ。
舞奈はまだ何かを隠している。
冒険者だった舞奈が急に『もう戦わなくてもよくなった』こと。
こちらの世界に召喚獣を呼べるのは後一回が限度だったこと。
なにか……
なにか良くない予感がした。
見逃してはいけないことのような気がした。
だから俺は——
「舞奈。お願いがある」
「なぁに? 来海くん」
舞奈は葉子を一人きりにさせないために俺達を引き合わせた。
でも今は舞奈が一人きりなのではないだろうか?
そう思った俺は——
「俺を……お前のいる異世界に連れて行ってくれないか?」




