第13話 守られるだけのヒロインにはなりたくない
来海も小鳥さんもすごい異能使いだと思う。
それでも私は自分が異能使いとして最も優れている自信があった。
異能を授かってから約9ヶ月。
大好きな土属性。
私は異能の力に夢中になり、毎日のように特訓に明け暮れていた。
だけど、私の強さは錯覚だった。
実際に魔族と対峙した時、私はいつも恐怖で震えてしまい、誰よりも役立たずになっていた。
たぶんあれくらいの敵、普段の力を出し切れていれば簡単に倒すことはできただろう。
そうでなくても3人で協力し、団結して勝利する。それが私の中の理想だった。
だけど、私だけが何もできなくて、それが悔しくて、申し訳なくて……
だから次こそは自分が何とかするんだ! そう固く誓ったはずなのに……
「(また……何もできないのですの?)」
私のせいで皆が危機に立たされている。
足手まといで、何もできない自分。
ごめんなさい。
心が弱くてごめんなさい。
心の中で謝り続けることしかできない。
——“葉子! 頼む! お前だけが頼りだ!”
来海。
来海の声が薄っすらと聞こえてくる。
うまく声がでない。
でもせめて言葉くらいは返さないといけないと思い、虫の鳴くような小声で彼の名前を呼んだ。
気が付けば私は彼に抱えられていた。
私と小鳥さんと抱えたまま必死で回避を続ける来海。
すごい。
この人は身体能力まですごいのか。
出来損ないの私なんかとか格が違う。
必死に私達を守ろうとしてくれるこの人がとても眩しい。
格好いいな。
男の人に守ってもらえて嬉しい……な。
「(来海なら……また何とかしてくれるのかもしれない)」
きっと来海ならこの状況でも機転を利かせて勝利してくれる。
ふふ、それなら私は主人公に守られるヒロインですわね。
戦いが終わったらキスでもして彼を癒してあげるのがワタクシの役目なのかもしれませんわ。
「……い……やだ……っ!」
嫌だ。
守られるだけなんて嫌だ。
守られるだけの無能ヒロインに成り下がりたくない。
来海が創作したファンタジー物語にそんなキャラ出てこなかった。
すべてのキャラに見せ場があり、戦いの中に友情を芽生えさせていく。
それが来海の生み出す物語だった。それが私の大好きな物語だった。
きっと来海は私と共に戦う未来を望んでくれている。
「私も……」
戦う。
来海や小鳥さんと共に戦う。
私は守られヒロインになりたいわけではない。
主人公と共に戦うヒロインじゃないと嫌ですわ!
そのためには恐怖が邪魔だ。
恐怖さえなければ私だって戦える。
私に足りないのは覚悟だ。
戦うための覚悟を得なければいけない。
だからどんな手段に訴えてでも、まずは恐怖を消してやらないといけない。
「来海……私の……私の胸を揉んでください!」
「何言ってるの!?」
攻撃を回避しながら起用にツッコミを返してくれる来海。
うふふ。やっとあなたの顔を見ることが出来ましたわ。
「しゅ、羞恥で恐怖を打ち消すのですわ!」
実はね、貴方に抱えられて、私、結構ドキドキしてましたのよ?
そのドキドキは徐々に恐怖を打ち消してくれていた。
ならばドキドキを一気に最高潮までもっていけばいい。
そうすれば、私は戦うことができる。
“羞恥”でなんて言ったけど、本当は貴方から喜悦を頂きたい。
心の中を貴方でいっぱいにすることで私から恐怖を消してください。
「い、いいんだな!?」
「はい!」
「本当にいいんだな!?」
「はい!」
「あ、あとで訴えたりしないよな!?」
「しませんから!」
しつこいくらい確認をしてくる来海。
その反応で普段から女の子との免疫がないことが伝わってくる。
それが少しだけかわいらしくて私はいつの間にか口元で笑っていた。
むにゅ
「あっ……ぅ!」
胸に来海の手の感触が伝わった。
思わず変な声が出てしまった。
恥ずかしい。照れる。
——嬉しい。
そんな感情が私の中で沸き起こり、瞬時にして私の中の恐怖が霧散した。
「あ、ご、ごめ——!」
「——来海。ありがとうですわ。これで……私も……戦えます!!」
ピョンっと来海の腕の中から自分から飛び降りて、地面に手を付ける。
瞬間、私の身体は地面の中へと入り込む。
【アースムーブメント】
私が名付けた大地の能力。
その名の通り、地面の中を自由に動き回ることができる移動特化の技。
地面の中で遊泳しているようなイメージで自分で走るよりずっと早く移動ができる。
相手には私の姿は見えないはず。
だけど私からは相手の場所を観察できるのだ。
ボココっ
魔族の足元の土が膨れ上がる。
同時に私が飛び上がるように姿を現すことで、魔族は大きく仰け反った。
そして着地と同時に最大火力の異能を叩き込む。
「ロック——スマーッシュっ!!」
拳に岩を纏わせ、黒馬魔族の顔面に殴りつけるように大技を叩き込む。
魔族の顔面は岩まみれとなり、衝撃で大きく吹き飛ばされて壁に激突する。
そのまま壁にもたれるように動かなくなった。
私は踵でクルッと反転し、口を半開きにしたまま唖然としている来海と小鳥さんにピースサインを送った。
「私達3人の勝利ですわ!」




