高校生活 初日
「いってきま-す」
「いってらしゃい」
ガチャ。
私は、家の扉を閉めた。
今日から高校生活が始まる。
楽しみ半分不安半分。
そうそう、私が入学した悠山高校は日本で最も自由な高校を自負しているんだ。
制服は無く、クラスも無い。授業は、自分たちで勝手に組んで単位取ってねって感じ。
入学式は無いし、履修登録も全部自分でやったんだ。
そんな悠山高校のキャッチフレーズは、「大学よりも大学的な高校」
ちょっと良く分からない。
でも、こういう自由な校風に惹かれたのは事実。
だから、ワクワク。
私は徒歩5分のバス停に到着した。
数分待つとバスが到着し、私は定期券をかざしてバスに乗った。
雄大な大自然が広がる我が故郷、海風町から、歴史的な建築物の多い悠山町の悠山駅に向かう。
そしてバスに揺れること30分、悠山駅に到着。
ん~。これは、悠山高校に向かう生徒たちかねぇ~。
みんな、イカしてるね~。
私、黒の服の上に黒のパーカー、あんど茶色のズボン。
地味だけど、それがまた良い、ということにしておこう。
本当は、服買おうと思って春休み店行ったんだけど、ちょっと私ごときがおこがましいと思って、陽よって地味なのばっか買った。
そして徒歩10分、余裕をもって学校に到着した。
高校、で、でかい...!
悠山高校は、悠山市の市長が当時市の予算3割をはたいて建設した、非常に大きな学校である。
私の代でちょうど設立10周年。かなり新しい高校である。
しかし、市民からはそのあまりの規模に、建設には反対の声を多く上がったそうな。
それもそのはず、高校の建設費用なんと30億!
そして市長は気が狂ったのか、その高校の定員を何と500人に!
そんな人が来るはずもないと思われていたが、悠山高校の校風の特異性に惹かれ、様々な地域から人が集まり、中には県外から寮生活をする者もいるそう。
これには、市長も一安心。
さあ、こんなことはどうでも良い。
1限は、英語、教室は201Aって、どこだよ。
201ってことは...、2階。のA棟。
うーん...。
え、つまり、どこ。
すると。
「もしかして、新入生?」
「え、あ、はい」
びっくり!急に後ろから話しかけられた。
「絶対道分かんなくて困ってるでしょ。」
「あ、はい...ちょっと、想像以上に広かったもんで...」
「場所は?どこ?」
「ええっと、201Aってとこです。」
「むむむ!ああそこね。そこはね~、あの建物の2階なんだよ」
女の人は、建物を指さした。
「あ、本当だ。A棟って書いてある」
「そうでしょ。後ね、こっちに一応マップがあるから、これ見れば、多少どの辺に何があるかは分かるよ」
「へぇ~。教えてくれて、ありがとうございます!」
「いいのいいの。私も今でこそ分かるけど、入った当初は他の人に聞きまくったんだから」
「あ、そうなんですね」
「ほら、あそこにも道を教えてる人がいるよ」
「ほんとうだ」
「私たち上級生は、入ったばかりの新入生の8割は道が分からないだろうから、もしもじもじしてる子がいたら、上級生が教えるように!って学校からメールで来てたの」
「8割!?やっぱ、これだけ広いと道に迷いますよね...」
「そうだよ。もし、君が上の学年になったら、今度は君が教える番だからね」
「ははは。1年で覚えられれば良いですけど」
なーんだ、道迷ってたのって別に私だけじゃなかったんだ。
入学者の8割も道に迷うだなんて。
ってか!それって普通に欠陥じゃねーか!
「それでは、私はA棟に行くので、この度は道を教えてくれてありがとうござした。」
「私も着いてくよ」
「ええ?良いんですか?」
「うん。だって、私もそこだもん。ふふふ」
「ええ、あ。そうなの!?あ、そうなんですか」
「うん。だって、英語の授業でしょ」
「はい」
「いや~、1年の頃ほぼニートだったからさ~。取れるもんは取っておかないと、まずいんだよね~。あはははは」
「っふふふ。あ、そういう、こともあるんですね。」
「そうだよ~。だから、私みたくならないように、1年からしっかり単位を取るんだよ~」
「はい」
あ、授業って2年生もいることもあるんだ。
そうして、教室に着き、女の先輩と後ろの席に座り、となりで授業を受けた。
高校の英語はどんなものかと身構えたが、担当の先生はとあるバンドの大ファンらしく、今日はその話だけですべて終わった。
「は~い。それでは、今回はちょっと早いけど、初回だからこんなもんだよね。次回から、この教科書を購入して持って来るように。ではまた。」
これが、自由...。良いかも。
「それじゃ、私は次の教室向かうね~」
「え、あ、はい」
「じゃあね~」
「あ、ありがとうございました」
道を教えてくれた先輩はさっそうとどこかへ行った。
次は、数学I。
でもまだ30分もある。
だけど、道に迷うかもしれないから、私も早めに移動しよう。
こうして、1限、2限、3限、4限、と無事すべての授業に出席でき、4時前になった。
ちな、この学校は学食たるものがあって、昼はそこで食べてる人も結構見かけたんだけど、弁当を持参してる人もけっこういたよ。
どの場所でも食べていいらしく、教室や、外で食べてる人もいて、ぼっち飯は気にならないようだ。
私は、リフレッシュルームってとこ見つけて、教室よりかは狭いんだけど、風が透き通っていて窓から海まで見渡せて、これは我ながら良い場所見つけたなと思った。
もちろん、まだ友達はいないので一人で食った。
さあてと、今日はほとんど座学だったなぁ~。
新学期特有の、自己紹介~!とか、委員会だとか、そういうのが無いのは新鮮で良いかも。
校舎を出ると、そこにはたくさんの人だかりが。
「サッカー部入りませんか!」
「ラグビー部!」
「こっちで茶道部やってまーす。もしよかったら...」
道の両端にビラを配っている。
部活の勧誘か~。何気に部活とか何も考えてなかった。
でも、よくよく考えると、学校の特性上、こういうとこでしか友達って作れないような...。
う~ん。まあ、考えておこう。今日は、帰ろうかな~。
私は、てくてくと歩いていると。
「あ、あの~」
てくてく。
「あ、」
ん?
私は、横を振り向くと、一人の女の子と目が合った。
「もしよかったら、今から、将棋、一緒に指しませんか。」
「...え!?いきなり!?」
おおっと。多分今日一声が出た。
「あ、ごめんなさい。無理だったら大丈夫です。将棋興味ないかな~って」
将棋か~。一応ルールは知ってるけど、しっかりとやったことは無いんだよな~...
う~ん。意外と良きかも。
案外やってみたら面白そうだし!
「良いですよ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「私ごときで差し支えなければですけど」
「いや~、もう全然やってくれるだけで嬉しいです!」
「いえいえ、あ、それほどでも。それで、部室はどちらに」
「それが、実は、私まだこの学校入ったばっかりで、部室とか、そういうの良く分かんないんですよね」
「え、あ。私も新入生なんだ!」
「おお!そうなんだ!」
「うん。いや~、最初道が分からなくてね~」
「分かる。私も...」
そして少しばかり談笑し。
「その絵は何?」
私は、女の子が持っている絵を見つめた。
「これは、詰将棋だよ。私が作った渾身の5手詰めなんだ」
「へぇ~。何だか、難しそう。その、ビラは貰っても良いの?」
「あ、ごめん。実は、これ一枚しかなくて」
「いや、コピーしてないんかい!」
「コピーのやり方分からなくって。」
「それじゃ、とりあえず、どっか空いてるとこで将棋やる?そうそう、私、とっておきの場所を見つけたんだ」
「そうなの!?」
「うん」
「やったー。でも、もうちょっとだけ勧誘やっても良い?」
「あー...全然良いよ!部だから、人いた方が良いもんね」
「それじゃあ、私が紙持ってるから、一緒に何か、喋っててくれない?」
「いや、私もするんかい!将棋部の勧誘を!まあ、いいけど」
「ふふふ。ごめん。ありがとう。心強い。」
「任せてよ。勧誘得意なんだから」
ふぅー。
私は息を吸った。
「しょ、将棋。やりませんか。将棋、多分、楽しいと思います。あと、何か詰将棋っていうのもあるみたい。一緒に、やりませんかぁ...」
「今から将棋さしませんか...」
通り過ぎる人々は皆、こちらに振り向きはすれど、興味はあまりなさそうだ。
そして、10分ほどが経ち。
「やっぱ、将棋ってなかなか興味もってもらえないのかね~」
「いや~、私は面白いと思うよ、将棋。あんまやったことは無いけど、ルールは知ってるし」
すると、女の子はニコっと笑みを浮かべて。
「それじゃあ、勧誘手伝ってくれてありがとう。もうあんまり人はいないし、将棋指そっか」
「うん」
「じゃあ、その秘密の場所というところに案内してもらってもいい?」
「もちろん。あそこは、もう、神の場所だから」
「神、ふふふ」
そうして、二人で移動しようとしたとき、前から小柄な女の子がやってきた。
その子は、将棋のビラを見て。
「あたしも、将棋指したい」
私はキョトンとして顔を見合わせた。
私は口角を上げた。
「良いよ!今から、一緒に将棋指そ!」
「わーい!やったー!将棋とかやったこと無かったからやって見たかったんだよね」
「将棋は奥が深くて楽しいよ。一緒に楽しも!」
「うん!場所は、どこなんですか」
「場所はね」
「場所は、私が今日見つけた知る人ぞ知る、神の休息所があるんだ。そこへゆこうぞ!」
「神の休息所!」
「私がそこへ案内する、安心して私に背中を預けてくれたまえ」
「おお、じゃあ、お腹を預ける」
「お腹はあずけるな!」
こうして、私たちは3人で神の休息所たるところへ向かった。




