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メビウスの恋  作者: 牧亜弓
ラジオの声
9/60

友人の死んだ目を思い出す

ああ、そうだった。

思い出すと、あの友人の顔には、あの一言には、たしかにどこか不自然なものがあった。

「それ、僕もメッチャ好きだよ」

そう言った彼の目は、死んでいた。


光がない、というのとは少し違った。

むしろ、光を意図的に消しているような、どこか演技のような、あるいは、こちらの期待に応えようとする義務感のような目。

僕があまりにも熱く語っていたからだろう。彼はその熱に打たれないように、わざと温度を下げた目をしていたのかもしれない。


つまり、あれは「好き」の共有ではなく、「好きを語っている僕」に合わせた調整だったのだ。

それは、共感ではなく、迎合。

もしくは、「うん、わかったよ」と会話を早く終わらせたいだけの防御。


なのに、あのときの僕は気づかないふりをした。

むしろ、無理やり信じた。

「ほら、やっぱり分かり合える」と思いたかった。

でも、今ならわかる。あの瞬間にすでに、僕の「好き」は孤独になっていた。


誰かに熱く語れば語るほど、その「好き」は独りぼっちになってゆく。

共鳴しない音叉のように、耳障りな響きだけが残って、相手はどんどん遠ざかる。


もしかして、あの死んだ目こそが、この世界における「好きのリアル」なのかもしれない。


僕は、それでもまだ、好きなものを語ろうとしている。

その矛盾をかかえながら、言葉を続けようとしている。

それが人間のどうしようもなさなら、せめて、どうしようもないままに語りきってみたいと思う。

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