6、「服をつくろう」sideしずく
「っていう感じで、いろいろあったんだよぉ…。」
と主が言う。主に仕えることが決まった時点で私は主のこれまでの5つの人生をしらべたから知っている情報しかなかったけど、
「そうなんだね、大変だったんだね。」
と、知らなかったふりをして相槌を打つ。
私に名前をくれた、大切な人。私が今まで仕えてきた主様は番号で呼ぶか、私が指示をする前に仕事が終わっているのが当たり前でしょっていう人たちばかりだったから。主様と私の間には、絶対的な立場の差があった。ミア先輩にいわれて陽キャっぽい感じで話しかけたら、友達みたいな温度感で話してくれた。こんな私のことをかわいいって言ってくれた。いやな冗談を言っても笑って流してくれた。優しくて、かわいくて、私の憧れ。主のこと、大好き。一生主から離れない。主になら一生使えてもいいと思えた。寧ろもう主以外の人に仕えたくない。
「そういえば、しずくってこの服しか持ってないの?こっちの世界に登場してきてからずっとおんなじ服着てるよね?
と主が言う。
「うん、そうだよ。守護神はおしゃれしないから!守護神って言っても名前だけっていうか、大体雑用係だから。」
と返す。実際そうだし、服なんて作る技術は、守護神は持ち合わせていない。私の場合、守護神の中でも落ちこぼれだから。
「うーん、なんか、おしゃれな服着たいって思うことないの?」
「ある、けど、作れないし、買えないし。」
実際私みたいな落ちこぼれの配属先は環境が悪いところばっかりだったからお金もなかった。
「それならさ!私が作るよ!!」
えっ?ワタシガツクルヨ…?えええっ!!!!
「作れるの…?」
「もっちろん!えっと、あれは確か4回目の人生で小学5年生のころ。裁縫サークルのサークルリーダーをやっていたんだから!」
と、どや顔で主が言う。
「でもそれは誰もやりたい人がいなかったからじゃんけんで負けた人がやるってことになって主がじゃんけんでまさかの36連敗という史上最低記録をたたき出して押し付けられたんじゃなかったっけ?」
「ぎくっっ、というかなんでしずくがそんなこと知ってるの??」
やばい_______ほんとは全部知ってる、ってばれちゃう_____
「じ、実は、ミア先輩がまじおもろいんだけどーって言って休憩時間にこっそり教えてくれたんだよねー…。」
だいぶしどろもどろになってしまったけど、主は鈍いから騙されてくれるはず_。
「おのれ、ミア!!!絶対許さん。しずくになんてことを教えるんだっ!!」
ミア先輩、巻きこんでごめんなさい…。
「まあそれで、仮にも元裁縫サークルリーダーなので、しずくの服くらいは作れます!」
仮にもって自分で言っちゃってる…。
「じゃあ作ってもらおうかなー。」
「うんうんっそれでいいのよーっ!!しずくに似合う可愛いお洋服を作るんだからっ!!」
可愛い…??何か勘違いしてないか…??
「主、意気込んでいるところ悪いんだけど、わたし、仮にも男だよ?」
「えええええええええええええええええええええええええええええっっっっっ!!!!!!!!
し、しずく、お、男の子、だったの……??」
「え、うん。」
「うそでしょ、こんなにかわいくて癒しの存在で、存在が尊くて、美少女で、オーラがもう、the・美少女って感じの子が、男の、子?でも言われてみれば女ってはっきり言われたわけじゃないし…。でも一人称〈私〉だし、声可愛いし、髪長いし、こんなの誰だって女の子だと思うよねっ!!!」
主が何かぶつぶつとつぶやいている…。そんなにショックだったのかな…??まあでもこんな感じになっちゃうならなにも言わないほうがよかったかもな…。私自身男より女のほうがあってるなって感じるし。でもちゃんと「男の子」にならないといけないんだろうな…。中途半端だと嫌われちゃう、かもしれないし…。いまだにぶつぶつとつぶやいている主の横で、目を伏せて昔のことを思い出す。
えぇっと…次回も過去回ですね。
この話に出てくる人、過去のこと思い出しすぎだろ!とツッコみたいのは私も同じです。
でもそうじゃないと話が進まない!!
はい、私の想像力が乏しいせいですね、すいません。