3話 ダンジョン暮らしの少年、癒される。
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「あ、あの……! た、助けてくれてありがとうございます……! わ、わたしは、フタバ……! 花房フタバです……! あの、その……!」
白く輝くダンジョンの中。
ぺたんと床の上に座りこんだまま、ぎゅうっと差しだした俺の手を握り、頬を赤らめながら潤んだ黒の瞳でちらちらと見上げてくる艶やかな長い黒髪の同じ年くらいの探索者の少女、フタバ。
「ああ。俺はユーリ。万ユーリだ。まあ、あんたを助けられてよかったよ」
「はい……! おかげで無事に家族の、姉さんのもとに帰れます……! 貴方の、ユーリくんのおかげで……!」
ダンジョンに隠れ住んでいる身とはいえ、名乗られた以上は、と名乗り返した俺の手をそれでも自分から離そうとはしないフタバに、俺はやんわりと切りだした。
「えーっと、たいした怪我もなさそうだし、じゃあ俺はこれで……」
「ま、待って! その前に聞かせてください! 貴方みたいなちっちゃくて愛くるしい、とっっても可愛い子どもがどうして独りで、こんな危険なダンジョンにいるんです!? そ、それにその変わった、でもとっても綺麗な髪の色と瞳…….!」
「は、はぁ? あ、あいくる、か、かわ……? いやいや、子どもって、あんた、さっきから何言ってんだ? あんたと俺じゃ、年もそう変わらねーだろ? まぁそりゃあんた、俺よりずいぶん背ぇ高いみたいだけど……。それに、髪と瞳ぃ? あんたと同じ典型的日本人な黒髪黒目の俺のいったい何が変わって――」
「っ〜! もう! 見てください! ほら!」
そう言って、ようやく手を離したフタバが俺にバッと見せてきたのは、自撮りモードにした探索者用の防護スマホの画面。
「ん〜?」と俺が近づいてのぞきこむと、そこに映っていたのは、当……然……?
「…………………は?」
えーっと、誰だ、これ? 誰だ……これ? 誰なんだよぉっ!? これぇっ!?
そこに映っていたのは、まちがいなく子どもだった。全体的にギザっぽい銀髪と、血のように赤い瞳。それも薄っすらと魔素を帯びて輝いている、つーか全身が薄っすら輝いている。
そう、全身。一番問題なのは、そこだ。
訳あって小学校卒業直後の12歳であの場所を出て、独りで家賃ゼロのダンジョン暮らしを始めて早3年。15歳になって、背もそこそこ伸びたかな? と思っていた俺の体は、なんとダンジョンに入ったときとほとんど同じ、クソチビのままだった。
クソチビのままだった……。クソチビのままだったぁぁっ!
「ああああああああ……!?」
そりゃねぇよぉ……! カミサマぁ……!
確かにダンジョン入る前は、長いことロクにメシ食えてなかったから、栄養足りてなくて、あんまり背ぇ伸びなかったけどさぁ……!
ダンジョン入ってから少ししたら、俺、魔素吸い放題吸ってきたじゃん! 貴重なミノ肉だって、とれるときは欠かさず狩って食ってきたし!
それなのに……なんで! ギザギザの銀髪! 赤目! そんでもって成長しないチビとか! 望んでもない少年漫画の主人公みたいな変化してんだぁ……!
そしてよくよく考えたら、12歳のままじゃ俺、声変わりすらしちゃいねぇ……! おおおあああぁぁぁ……!
「ゆ、ユーリくんっ!」
そのとき、両手で顔を覆い、さめざめと泣く俺をふわりと暖かいものが包みこむ。
フタバの腕。それがゆっくりとやさしく、俺の手をほどくと、ぽふんと顔が大きくてやわらかいものに押しつけられた。
「だいじょうぶ……。もうこわくないですよ……。ひとりぼっちで今までよくがんばりましたね……。心配しないで……。もう貴方を独りにはしません……。ユーリくんには、これからはフタバお姉ちゃんがずーっといっしょですからね……」
――いや、だから、見ためこうでも、あんたと俺、絶対年そう変わらないからな? あとずっとって、たぶんこの場かぎりだし。
そう思わなくもない俺だったが。
(ほら、ユーリ。もう泣かないの)
(ねえちゃ……)
触れあう体を通して聞こえてくる、トクン、トクンという胸の音が心地良くて、安らいで……懐かしくて。
なんだか気恥ずかしくなってしまって、俺はそのやわらかな胸に突っ伏したまま、しばらくの間、なすがままフタバにそっと後ろ髪をなでられていたのだった。
(あ、ああああ……!? ふふふ、フタバちゃんがあぁ……!?)
(あ、ああ、あんなとろけきった表情、見たことないぃ……!?)
――まさか、〈双花剣フタバの配信ちゃんねる〉に今もまだこの模様を絶賛配信しつづけられていることなど、思いもよらずに。
ということで、いろいろと打ちひしがれてしまった主人公ユーリ、姉属性ヒロインのフタバの胸でよしよしされて、癒される。でした!
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