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18話 呼びだされた元ダンジョン暮らしの少年と、髪の毛一本。

お待たせしました!


すでに応援いただいた方、本当にありがとうございます! 特に、高評価いただいた方、本当にありがとうございました!


では、本日もよろしくお願いいたします!





「へえ! ここが探索者協会本部かあ……!」


「わたしは前に来たことがありますが、やっぱり何度見てもすごいですね……!」


 感嘆の声を上げる俺にとなりの……なぜかあたりまえのようにごく自然に腕を絡めてきた黒セーラー服のフタバがつづいた。


 ようやく入ったそこは、まさに洗練されたオフィスビルといった雰囲気で、エントランスホールから先に進む入り口は、駅の改札に似たかたちの認証式の強固なセキュリティーに守られているようだ。


 エントランスホールってこともあって、俺たちのほかにいまここにいるのは警備員っぽい制服を着た強面の男二人と、あとは受付に座った制服を着た若い女性一人。で、魔素を感じるってことは、いずれも探索者だ。


 まあ、伝わってくるこの感じからすると、いま俺たちといっしょにいる、すっかりしおらしくなったゲンキや、カンノのほうが実力は上っぽいけど。


 ピッ。


「お、お待たせしました……! ユーリさん、フタバちゃん……! 生体認証を解除したので、奥へとご案内します……!」


 どうやら俺が思っていたよりは上の人間らしいカンノは、眼鏡の奥の瞳を揺らしおどおどとした、とてもそうは思えないんだけどなあって態度でそう言った。



「あ、あの……と、ところで、わ、私……! ゆ、ユーリさんにお願いがあるんですが……!」


 認証式の入口を抜けてしばし。これから乗るというエレベーターの手前にさしかかると、突然カンノがピタリと立ち止まり、あわてた様子で上目遣いにそう口にする。


「お、おう。なんだよ? あらたまって」


「は、はい……! か、か、髪の毛を一本、わ、私にくだひゃいっ!」


「う、うえぇっ!?」


 な、なんだよ……! コイツ……!? まともだと思ってたのに、いきなりフタバみたいなこと言って……!? い、いや待て……! これにも何か理由があるんじゃ……!?


 耳まで真っ赤にして噛みまくったカンノのお願いに、のけぞるようにうろたえながらも、そう思いなおす俺。


「わぁ、いいなぁ……。わ、わたしも欲しいです……!」


 となりの危険人物のセリフは当然おもいきりスルーした。



 プチっ。


「ほら。これでいいか? カンノ」


「は、はい! あ、ありがとうございます……! ユーリさん……! た、探索者協会で、しっかり調べさせていただきますね……!」


「ゆ、ユーリくん……! わ、わたしにも……!」


 となりで組んだ腕をしきりに引っぱる超危険人物のおねだりは完全にスルーして、あからさまに胸をなでおろすカンノの様子を見る。


 なんてことはない。カンノが俺の髪なんかを欲しがった理由は、単に上からの命令。


 約3年という類を見ないほどの長期にわたりダンジョンという異界にいたことが俺の身体組成その他もろもろにどんな影響をもたらしたか調べたいからサンプルが欲しいっていう、ごくごくまっとうな理由だった。


「うぅ……! カンノさんばっかり、ずるいです……!」


 まあ、そりゃそうだよな。このフタバみたいなのがそう何人もいるわけ――


「せっかくコレクションが増えるかと思ったのに……」


 ――コレ、ク……?


 寒くもないのに俺の体がぶるりと震える。触れてはならない(アンタッチャブル)な予感とその警告とともに、がっちりと腕をつかんだその人物の話題を俺は全力でスルーした。


「あ……! じゃ、じゃあ、私はさっそくこの髪を研究班にとどけてきますね……! や、八転(やころび)くん。あとは――あっ!?」


 心なしかうれしそうに見えるカンノの小さな手から、パッとゲンキが俺の髪の毛が入ったケースを奪いとる。


「なーに言ってんスか! カンノ先輩! こーゆー雑用はオレみたいな後輩の仕事っスよ! これからは心を入れ替えてキリキリ働くっスから、存分にこき使ってくださいっス! だから、カンノ先輩はユーリのアニキたちと先に〈五輝星〉のところに行っててくださいっス! オレもすぐもどるんで! じゃ、またあとでっス!」


「あ……!? ま、待って……! 八転く……!? わ、私の特異能力なら、もっと早……!?」


 呼び止めるカンノの言葉が聞こえているのかいないのか、言うが早いか、ゲンキはバッと奥へと駆けぬけていった。


 その背を見送り、あからさまにカンノはガクンとうなだれる。


「う、うう……。せっかくとどけるのを口実に脱けだせると思ったのに……。ああ、お腹痛い……。〈五輝星〉になんて会いたくないよぅ……。あれ、ちょっと待って……? え……? むしろ、八転くんがいなくなったから、私……ひとりで……あの、怖くてクセの強い人たちと……?」


 あー、まあ……生きろ?


 策士策に溺れるがごとくあからさまに顔を青ざめるカンノを見て、俺は心の中でそうつぶやいたのだった。




ということで、お腹の痛いカンノの目論見は淡くもくずれ……、次回ついに〈五輝星〉と対面です!

ヒロインのフタバについては、書くたびにお前どこまていってしまうんだ……? と、作者も戦々恐々としています……!



さて、作者からみなさまにお願いです! 本作を面白いと思って頂けましたら、是非ブクマや☆5による評価、いいね! による応援をお願いいたします!


読者様の応援が作者の活力、燃料です!

それをモチベに作者は馬車馬のごとく書きますので!



では、また次回

「呼びだされた元ダンジョン暮らしの少年と、最強探索者集団との対面」にて。10月9日公開!

いよいよ一癖も二癖もある〈五輝星〉の登場です!


これからもよろしくお願いいたします!

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