17話 呼びだされた元ダンジョン暮らしの少年と、次元の違い。
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「で? そこのカンノと同じ、探索者協会職員のえーと、ゲンキ……だったか? なんでこんな、いきなり俺たちを襲ってくるなんて真似したんだ? つーか、俺のことアニキってなんだ? 俺、あんたより年下だぞ?」
「たち、ってのはちょっと違うっスね! オレが狙ったのは、ユーリのアニキだけっス! で、へへっ! アニキはアニキっスよ! 〈五輝星〉筆頭のオーザのアニキに、超新星のユーリのアニキ! オレより強い男は、みーんなアニキでオレの目標なんっス! 年なんて関係なくて、みーんな尊敬してるっスよ!」
さすがに襲いかかられたヤツに事情も聞かず、そのままノコノコと本部に案内してもらう――というわけにもいかず、こうして地べたに正座させて尋問めいた質問をしてるわけなんだけど……なんかすげー無駄な気がしてきた。
と、うしろから体をおしつけ、俺の体の前でぎゅっと両手を結ぶフタバとそろって顔を見合わせる。
さっきからゲンキはずっとこの調子で、俺たちを襲って返り討ちにあったとは思えないくらいずっとニコニコしていた。
「や、八転くん……! そ、そんなに尊敬してるなら、なんでこんなことしたの……! し、しかも私にだまって……! そ、それに八転くんが踏み台に使ったそこの無関係なトラックの荷台の屋根だって、へこんじゃってるし……!」
「いやー、だってカンノ先輩に言ったら絶対止めるっスよね? それに、大丈夫っスよ! トラックなら、ちゃんと弁償するっス! こー見えても、それなりの探索者としてオレ、稼いでるんで!」
ビッ! とそこでゲンキは右親指をグッとカンノに向かって突きだした。そして、やや……いや、おもいっきりひき気味の傍らで立つカンノにかまわず、そのままつづける。
「で、せっかく本人に会うんだから、その強さを直に体感してみたいじゃないっスか! まー、オレの特異能力【再生】なら、まず死ぬことはないっスし! で、いきなり襲いかかったのは……ひょっとしたら、ワンチャンあるかな? って思ったっスけど、いやー、見事に返り討ちにあったっスね! マジ超強いっス! ユーリのアニキ!」
……へえ? ワンチャン、特異能力、ねえ?
アニキと呼ばれ、舎弟のようになついてくるゲンキに気勢をそがれ、なんだかもう許してやっても……って思ってたけど、気が変わった。
「フタバ。わるいけど、ちょっと離れててくれ」
「いいですけど……。何するんですか? ユーリくん」
――いや、ちょっと次元の違いを思い知らせてやろうと思って。
「なあ。ゲンキ。強さを体感してみたいってことは、アニキアニキって言ってても、またそのうち襲ってくることもあるってことか?」
「いやいや! そんなことあるわけないじゃないっスか! 二度とやらねーっスよ!」
「そうか。よかった。けど――」
空気のように言葉が軽い。まあ、いまはたぶん本心なんだろうけど……またやりたくなったら、こっちの都合なんておかまいなしにやる。まちがいなく、こいつはそういう男だ。
「ひ、ひっ……!?」
「ゆ、ユーリくん……! それ……!」
だから、いまここでその鼻っ柱を徹底的にへし折っておく。
「――もしまた襲ってきたら、次はこれでぶん殴るからな」
突きだしてみせた俺の右こぶしには、魔素を凝縮した紫の炎が燃え盛っていた――そう。ダンジョンの次元をぶち破るほどの絶大な力が。
「ぜ、ぜぜ、絶対に、二度と、金輪際やらねえと誓いますっス……!」
地べたに正座した足をぴしりとそろえなおし、青ざめた顔でコクコクと何度もうなずくゲンキを見て、まあこれくらいにしといてやるか、と俺は紫の炎を解いたのだった。
ということで、ユーリを襲った八転ゲンキ、きっちりわからされました。
【再生】があっても、あのこぶしで殴られたら消し炭まちがいなしなので、わかってくれて本当によかったです。これで名実ともに舎弟。
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「呼びだされた元ダンジョン暮らしの少年と、髪の毛一本」にて。
10月7日公開! 今度こそ、いよいよ本部ビルに突入です!
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