1話 ダンジョン暮らしの少年と、肉。
流行りにのって、新作作りました!
では、よろしくお願いいたします!
「おらあぁぁぁっ!」
『ギボブァッ……!?』
煌々と魔素の光に照らされた白く輝く石造りのダンジョンの中。
跳び上がり、紫のオーラをまとった俺――万ユーリの振り抜いたこぶしに頭を潰されて、断末魔の絶叫もそこそこに3メートルはあろうかという牛頭の巨人、ミノタウロスがズゥンと音を立てて崩れ落ちる。
そして、かぁっと光ると、ドロップアイテムの赤く、きらきらと輝く霜降りステーキ肉と手に持っていた巨大な槍を落として跡形もなく魔素となって消え去った。
「ぷ、くくく……!」
俺は、その光景を見て笑いが止まらなかった。
肉。肉……! にくにくにくにぃぃくうぅぅっ!
「へっへっへっへっへ……!」
小卒から訳あって家賃タダのダンジョン暮らしを始めて早3年。
主食が無味乾燥な霞も同然のダンジョンの大気中に漂う魔素の俺にとって、およそ一か月ぶりとなる肉というそのごちそう!
それを俺自身の魔素でくずれないように丁寧に包みこみ、すっかりぼろぼろとなった着古したジャージのポケットにむんずとしまいこむ。
へっへっへ……! いやぁ、マジでついてるな! いつもの青と違って、今日はひとまわりデカい赤の変異種! いやぁ、前に一回だけぶっ殺して食ったけど、魔素の染み具合がまるで違くてマジでめちゃくちゃ美味かったんだよな……!
火の魔素でじっくりこんがり焼いて、ひと口ひと口肉汁を噛みしめながらありがたく食おう……! じゅるり、と思わず出てしまったよだれをジャージのそで口でぬぐいながら、そう決めてその場を去ろうとして、あることに気づく。
「あ……!? けど、変異種の赤ミノが出たってことは、もしかして今日って、前に出た四本腕のあいつも……?」
うっげぇ……! 可食部ねぇし、マジでちょっとめんどくさいだけなのに……。あー、でも帰りに絶対出くわすしなぁ……。
げんなりした気持ちになりながら、俺はもう一方のドロップアイテム、さっきまで放置する気満々だった赤ミノタウロスの巨大な槍をひょいと肩にかついだ。
「やああぁぁっ!」
『ガグオオォォォォッ!』
「ん……?」
馬鹿正直に床の上を走ると雑魚にからまれてクソめんどいから、とダンジョンの所々に立つ白い柱の上を次々と跳び移っていた俺の耳に、突然それは聞こえてきた。
片方の機械じみた合成音声みたいな吠え声はいつも聞く……のによく似たあいつ。
けど、もう片方のかん高くて、どこか凛として鈴の鳴るような声は――気になった俺は、目に魔素を集中して一気に視野を拡張してズームする。
そして、見つけた。
真っ白な広場でいままさに5メートルはあろうかという双剣をかまえた首なしの巨大な動く鎧――リビングアーマーの変異種と、同じく双剣をかまえて立ち向かう、長い黒髪と同じく黒いセーラー服をなびかせて、舞うように戦う凛とした女の子の姿を。
ということで、主人公ユーリ、久しぶりの肉を得てニマニマするの巻でした!
本日は、もう一話投稿します!
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では、次回「ダンジョン暮らしの少年、美少女配信者を救う」
本日中にお会いできますよう!