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R15 ネット配信演者が身バレ特定された結果

作者: 湧水紫苑

「じゃあ今日はここまで。またねー」

俺はそう言いながらマイクボリュームを下げつつエンディングのジングルを鳴らし停止ボタンを押した。

ふう、今日の放送も上手くいったな。

「お疲れ様でした。いい感じにできたと思いますよ」

「ああ、ありがとう。あとはこれを編集して再放送として配信するだけだ」

「……ふふっ」

「どうした?」

「いえ、なんでもないです」

なぜか楽しそうな笑みを浮かべる星川さん。

なんだろう……? まぁいっか。

俺は見上透哉みかみとうや、ネット配信演者の三神Ⅱ(みかみとぅ)として活動している。

むしろ最近は三神という名前の方がしっくりくるようになっていた。

そして彼女は星川詩織ほしかわしおり、俺のアシスタントだ。

彼女がアシスタントになったのは事故ではあるがほんの些細なことで個人情報が漏れたことがきっかけだった。

あるとき生配信中にマンションの非常ベルが鳴り響いたのだが、ちょうど彼女も俺の配信を見ていて、同じタイミングで鳴り始め、そして同じタイミングで止まったことで同じマンションに住んでいることがバレたのだった。

彼女は元気な女の子だったので知り合う前から普通に挨拶する近所の人として認識していたのだが、ある日彼女から声をかけられた。

「三神Ⅱさんですよね、声で分かりました」

一瞬固まったが、別に悪いことをしているわけでもないので正直に答えてしまった、というのが出会いのきっかけである。

それから俺の部屋に来るようになり、手伝ってもらっているうちに気が付いたらアシスタントになっていたのだ。

まあ俺としても助かっているのでそれはそれでいいのだが……。

「それでは私もこれで失礼しますね」

「おう、おつかれさま」

「はい! 明日もよろしくお願いします!」

そう言って彼女は元気よく部屋を出て行った。

さて、俺もそろそろ寝る準備でもしようかな。

…………ん?

なにか扉の向こうから彼女の声が聞こえる。

「星川さん!?」

俺が慌ててドアを開けた瞬間だった。

「えへへ」

「!?!?」その言葉と共に彼女が部屋に入ってくる。

何が起きたのか分からず呆然としている俺を尻目に彼女はベッドの上に腰をかけた。

「ほら、三神さん」

「な、なんだ?」

「今日お泊りしてもいいですか?」

「なっ……!」

「ダメですかぁ?」

「いやいや、君の家すぐそこだよね。徒歩一分だよね。なんなら同じ屋根の下だよね。なんで?」

「同じ屋根の下だからここでもいいじゃないですかぁ~」

星川さんは悪戯っぽい顔でこちらを見てくる。

なんだその理論は。

「あのね、星川さん。君お酒飲んでる?」

「やだぁ飲んでませんよ、さっきまで一緒にいたじゃないですか、あははは」

酔ってないのにこの勢いはなんだ。

「そんなことよりぃ、一緒に寝ましょうよぉ」

「わかった、わかったからとりあえず落ち着こう」

「わーい」

彼女は無邪気に喜んでそのままベッドに飛び込んだ。

まったくもう……。

「じゃあ俺は風呂入るから。星川さんも自分の部屋で風呂入ってくれば?」

「えー、三神さんのお風呂がいいですぅ」

「あぁ分かった。じゃあ着替え取ってくれば?」

「もう持ってきてまーす」

よく見たらいつもより大きめのバッグを持っている。

そうか、だから今日のバッグは大きかったんだ。

ていうかそれ必要?取りに帰ればいいじゃん。

「じゃあ星川さん先にお風呂入る?」

「うふふ、じゃあお先に~」

彼女は手を振りながら脱衣所に入っていった。

なんなんだ、これ。

「上がりましたよぉ~」

しばらくして彼女がバスタオル一枚巻いて出てきた。

「ちょっ!服は!?」

「体が乾いたら着ますよ。さあ三神さんもお次どうぞ」

「分かったよ。じゃあ入るからね」

「どうぞどうぞ」

俺は脱衣所でさっと服を脱ぐと浴室に入った。

と、その直後だった。

「三神さーん」

「なんだよ」

「お背中流しましょっか?」

「結構だよ!」

「三神さんのいけずぅ」

何か言っているようだが俺は急いでシャワーを浴びた。

脱衣所に気配を感じながらさっさと体を洗い、すぐに浴室を出た。

しかしカゴに入れたはずの着替えが見当たらない。

う、やられた。

「星川さん、もしかして……」

そっと顔を出すと、星川さんが嬉しそうに俺のパンツをヒラヒラさせている。

「あのぉ星川さん?その布切れを渡して欲しいのですが」

「い・や・で・す♪」

「……返してください」

「い・や・で・す♪」

「お願いします」

「い・や・で・す♡」

マズい、なんとかしないと。

「返さないと襲っちゃいますよ」

「きゃぁ~、三神さんに襲われちゃうぅ」

ダメだ、全然話を聞いてくれない。

俺は仕方なくタオルで隠し星川さんに近づいた。

「ほら、返すんだ」

「ひゃあっ!」

あっさり取り返した俺は脱衣所に戻ろうと背中を向けた瞬間、突然星川さんが後ろから抱き付いてきた。

「……」

あれ?突然黙って……。

「どうしました?星川さん」

「……」

「星川さん?」

返事がない。

「おい、大丈夫か?」

「はい、私は平気ですよ」

よかった。

「でもちょっとだけこのままでいいですか?」

「いいけど、なんでまた急に」

「だってぇ、三神さんの裸見れるのって貴重じゃないですかぁ」

なに言ってんの。

「それにぃ、こうしてるとあったかいですからね」

「まあ確かにな」

星川さんはそのまま俺に寄りかかってくる。

「三神さん」

「なんだ?」

「好き」

「えっ」

俺は星川さんの顔を見た。

こっちをまっすぐ見ている。

そして真剣な顔をしてもう一度言った。

「好きです」

「な、なんだよいきなり」

「大好きなんです」

「……俺も好きだよ」

「本当ですか?」

「ああ」

「やったぁ!嬉しい!」

そして星川さんはぎゅっと腕に力を入れた。

「痛い痛い、星川さん、痛いって!」

「ふふふっ。なんでそれを今まで言ってくれなかったんですかっ。もしかして恥ずかしいんですか?かわいいですね」

「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

「私ね、三神さんになら何をされてもいいんですよ?三神さんは私のこと嫌いですか?」

「そんなことないよ。むしろ逆だ。すごく魅力的だと思う」

「ありがとうございます。大好き」

そう言うと彼女はキスしてきた。

「ちょっ……、ん……、ちゅ……、待った……、ん……、星川さん……、ん……、ん……、ちょっ……、ん……、ん……、ん……、ん……、ん……」

長い。

息ができない。

肩をとんとん叩いてから押し返した。

「ぷぁ……。三神さん、鼻で呼吸するんですよ?」

「わかんねえよ!そんなこと」

「あれあれ?もしかして初めてですか?うわぁ私初めてを奪っちゃった感じですか?もう、仕方ありませんねぇ」

星川さんは再び唇を重ねてきた。

今度はすぐに舌を入れてくる。

「ん……、ん……、れろ……、はむ……、はあ……、ん……、ちゅる……、ふふふ……、はむ……」

「ちょっ、ちょっと、んっ、ちゅっ、まっ、んっ、まって、ちゅっ、んっ、ちゅっ、んっ、んっ!」

彼女の激しい口づけに耐え切れず俺は口を離した。

「はぁはぁ、はあはあはあ」

「三神さん、可愛いですよ。ほら、思う存分楽しんでください」

そう言いながら彼女は再びキスしてくる。

俺はされるがままになっていた。

彼女はそのまま俺を押し倒し馬乗りになり、上から語りかけてきた。

「三神さん、今月誕生日ですよね。誕生日おめでとうございます」

「あ、ありがとう……」

「だからお祝いに私をプレゼントします」

「えっ!それはちょっと……」

「それとですね。まだ言ってなかったんですけど、じつは私来月誕生日なんですよ。だからプレゼント欲しいです」

「プレゼント?もちろんあげるよ。ちゃんと用意するから」

「欲しいものは決まっているんです。くれるって約束してくれますか?」

「それは……内容によるけど……」

「まず、くれるのかどうかおっしゃってください。そこは男らしく、ほらっ!」

「いやいや、それは考えさせてくれないか」

「仕方ないですね」

そう言うと星川さんは体に巻いていたタオルを剥ぎ取った。

目の前に星川さんの体が迫っている。

「お、おい」

「三神さん、私を見てください」

俺は言われるがままに見た。

「これでいいのか?」

「はい、よくできました。じゃあご褒美あげちゃいますね」

「えっ!?」

次の瞬間、俺は彼女に抱きしめられていた。

「ほら、こうするとあったかいでしょ?」

「うん」

確かに気持ちが良かった。

さっきまでとは比べ物にならないくらい。

「三神さん、私ずっとこうしたかったんです。あなたにこうしてあげたくて、でも勇気がなくて」

「星川さん……」

「あの日から、私はあなたの虜になってしまったんです。いつも優しくて、仕事もできて、頭もよくて、かっこいい三神さんが好きで好きでたまらないんです。毎日一緒にいたい。もっと触れ合いたい。もっともっと三神さんを感じたい。それが私の願いなんです」

「そっか」

「三神さん、お願いです。こんな私を受け入れてくれませんか?私に彼氏をプレゼントしてくれませんか?」

「俺も星川さんのことが好きだ。俺で良ければ喜んで」

「本当ですか!嬉しい!」

俺は星川さんをぎゅっと抱きしめた。

「嬉しいよ、星川さん」

「三神さん」

「ん?」

「好きって言って下さい」

「星川さん、愛してる」

「私も」

俺たちは再びキスをした。

お互いの存在を確かめ合うように。

そして星川さんは耳元でこう囁いた。

「私たちのカップルチャンネル作るのもいいですよねぇ」

「それは恥ずかしすぎるから考えさせてくれ」

「お仕事でこうして堂々とスキンシップできるなんて最高じゃないですか。大丈夫ですよ、私がサポートしますから」

この流れは本当にやりそうだな。

でもそれも悪くないか。

そんなことを思いながらその後も星川さんのペースに飲まれていくのだった。

それからというもの、俺と星川さんはほぼ同居状態になった。

と言ってもこれまで日中一緒にいたのでその時間が伸びただけだけど。

それでも今までに比べたらとても充実している。

星川さんは俺の家に泊まることも増え、夜は同じベッドで寝るようになった。

部屋にはだんだんと星川さんの私物が増えてきて部屋が狭くなってきていた。

「三神さん、お金も儲けたことだし、そろそろ大きなところに引っ越しませんか?私たちの愛の巣」

「いや、まだ早いんじゃないかな」

「何言ってるんですか。同棲したらすぐに子供作っちゃう予定だったのに」

「いやいやいや、それはさすがに気が早すぎだって。もうちょっと段階踏まないと」

「えー、そうかなぁ」

まあ幸せならいいか。

俺は今日も元気にマイクに向かって語り続ける。

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