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8.襲ってきたゴブリンを追い払いました

ピイッ……ピイッ……


「…………」


うとうとしていた俺は、小鳥のさえずる声で目を覚ました。見ると、窓枠の下側に止まった鳥が、こちらを見て鳴いている。


来たか……


昼間、家々を回って怪我人の治療をしている間に、林の近くを通ることもあった。そのとき見かけた鳥を俺はテイムし、山の方に偵察に行かせていたのである。その鳥がこちらに向かってくるゴブリンを発見し、知らせに戻ってきたというわけだ。


決して村の人達を信用していないわけではなかったが、暗がりの中で近づいてくる魔物を見つけるのはそもそも大変だ。増して、見張りに慣れていない村の人では発見が遅れる恐れもある。そこで念には念を入れ、テイムした鳥も使って見張りを二重にしていた。


「ありがとう。もういいぞ」


テイムを解くと、小鳥は林の方へ戻っていく。続いてメリレイナの方を見ると、既に彼女も目覚めていた。


「バルツさん……」

「ああ……」


俺達はうなずき合い、ベッドを出て装備を整える。部屋を出ると、ちょうど召使の人がランプを持って見回りをしているところだった。


「これはバルツ様、どうなさいました?」

「ゴブリンが山を下りてきました。村長を呼んでください」

「な、なんと! 旦那様! 旦那様ーっ!」


召使の人は、大急ぎで村長を呼びに行く。やがて出てきた村長にも、ゴブリンが村に迫っていることを俺は説明した。


「お見それしました。村の外にいる見張りよりも先に、ゴブリン共を見つけるとは……おい、お前は若い者を集めて後からついて来い。儂はバルツ様と共に、一足先に向かう」

「はいっ、旦那様!」


村長に命じられた召使の人が出ていくと、俺達も村長の家を後にした。そこから村長の案内で村の南側に向かう。南側から山の方へ、一本の道が通っていた。


「この道を通って、いつもゴブリンが来るんですね?」

「その通りでございます。ゴブリン共にとっても、歩きやすいところを通るに越したことはないようで……」


少し経つと、武器を手にした村の人達が続々と集まってくる。俺は彼らに後ろで控えるように言うと、メリレイナと共に前に出た。


「それでは、バルツ様、メリレイナ様、お願いいたします……」

「ええ……」

「任せてください!」


村長も後ろに下がる。そうしているうちに、2本足で歩く、人間の子供ぐらいの背丈をしたモンスターの群れが、暗がりの中から現れた。ゴブリンだ。数は十数匹で、村長の話に違わなかった。


メリレイナが、剣を抜いて言う。


「バルツさん、ここは私に……」

「そうだな。頼むとするか」


先陣をメリレイナに任せ、俺は少し後ろで待機する。近づいてきたゴブリンの群れは、それぞれ棍棒を手に、メリレイナに襲いかかった。


「ギイイイィ!」

「グアアアァ!」

「はあっ!」


並の人間よりはずっと強いゴブリンだが、Sランク冒険者であるメリレイナの敵ではなかった。あっという間に1匹が斬り伏せられ、続いてもう1匹が首を飛ばされる。残ったゴブリン達は及び腰になり、簡単には襲ってこなくなった。こうなると、さしものメリレイナでも倒すのに多少時間がかかる。


手伝うか……


俺は短剣を抜くと、1匹のゴブリンに近づき首筋を切り裂いた。斬られたゴブリンが悲鳴を上げて倒れる。


「グギエエエェ!」


勇者パーティーにいた頃は、強い魔物や魔族とばかり戦っていたので、メンバーの怪我が絶えなかった。なので、戦力的に中途半端な俺は、戦闘に加入するよりメンバーの怪我の治療に専念した方が全体の効率を上げられたのだが、今はどう転んでもメリレイナが怪我をしそうにない。俺が戦闘に参加しても、問題なかった。


「バルツさん!」

「2人で手分けしよう。その方が早い」

「はいっ!」


俺達は道の両側に分かれ、ゴブリン達を挟むように接近した。ゴブリン達は俺達を取り囲むこともできず、次々に倒れていく。やがて残り数匹になったとき、ゴブリン達は背中を見せて逃げ出していった。


「待ちなさい!」

「メリレイナ、追わなくていい」


追撃をかけようとしたメリレイナを、俺は制止した。メリレイナは立ち止まり、俺の方を振り返る。


「でも、バルツさん……これでは取り逃がしてしまいます」

「大丈夫。それでいいんだ」


やがてゴブリンが暗がりの中に消えると、背後で大きな歓声が起こる。


「やった! ゴブリンを追い払ったぞ!」

「さすがは王都の冒険者、すごい実力だ!」

「ゴブリン共め! いい気味だ!」


俺達が剣を鞘に納めると、村長が駆け寄ってきた。


「バルツ様、メリレイナ様、お見事でございました。あのゴブリン共にはこれまで散々煮え湯を飲まされてきましたが、これでやっとこの村も平和に……」

「いいえ。まだ終わっていません」


俺の言葉を聞いた村長は、怪訝そうな顔をした。


「どういうことでございますか……?」

「今来たゴブリン達は、山に住んでいるゴブリンのほんの一部です。おそらくあの山には、もっとたくさんのゴブリンがいるはず。山のゴブリン全部をどうにかしない限り、またこの村に食料を奪いにやってくるに違いありません」

「そ、そんな……一体どうすれば……」


途方に暮れる村長に、俺は言った。


「村長さん、村の家畜を俺に貸してくれませんか?」

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