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世界平和の呪いを受けた男の話

作者: 洞爺湖

書きました

ある日男が死にました。争いを拒み、努力に疲れ、才能を羨み、自分に絶望して死にました。


しかし死んだはずの男は女神と名乗る者と対面します。女神は元いた世界と異なる場所で再び生きる事を強要してきました。もちろん男は断ります。


すると女神は激怒しました。私がわざわざ与えてやった命を無駄にしたあげく、私の善意すらも断るのかと。そう激怒しました。


激怒した女神は男に呪いを与えて別の世界に放り込みました。何度死んでも同じ世界に転生し、世界が平和になるまで転生し続ける。そんな呪いを与えました。


新しい世界に放り込まれた男はすぐに自殺しました。全てが嫌になって死んだのです。新しい世界で生きるなどたまったものではありません。


しかし呪いは発動します。男は世界で一番強い種族に転生しました。男は思いました。自分が死ぬ為に世界を平和にしよう。そう思いました。


男は優秀でした。それもそのはず、男は自分に絶望して死んだのです。何もしていない者が自分に絶望するはずがありません。何もしていない者が自分の限界を知っているはずがありません。何もしていない者が自分の才能を知っているはずがありません。


男は自分を知っているほど前世で自分を追い込んだのです。そんな彼が世界一の強さを手に入れたのです。


男は驚くほど簡単に世界を統一しました。これで争いが無くなる。そう思いました。しかしそう上手くはいきません。力で世界を統一したのだからそこで重視されるのは力です。男が作った世界で力無き者は塵のように散っていきました。


それを知った男は自殺しました。


次に男は商人の息子に転生しました。前世で力を使って世界を統一した影響で各地は荒れに荒れ、いたる所で戦争が起きていました。男は戦争を解決するために武器を売りました。武器があれば力の差をうめることができます。武器の前では種族の差など塵芥に等しいのです。


男はこれで争いがなくなる。そう思いました。しかし上手くはいきません。武器を使う側ではなく、売る側の者達が幅を効かせていきました。彼らは自分が儲ける事だけを考え、逆に戦争を引き起こしていきました。


それに気づいた男は自殺します。


男は今度は女に生まれ変わりました。そこで女という性別の弱さを知りました。男は世界から争いが無くならないのは女が虐げられているからだと考え、女の権威の向上を目指しました。


そこで完成した世界は女が男を虐げる世界でした。権威の向上は特権へと繋がりそれ以外への迫害になっていったのです。


女はまた自殺しました。


次に女が生まれ変わったのは王子様でした。大国の王の息子。そこで王子様は考えました。自分が選ぶから世界は平和にならないのだと。平和を決めるのは自分では無く他者だ。だから他者に選ばせよう。そう思いました。


王政を廃止し民主主義国家に移行させました。これで国は平和になる。そう思いました。しかし上手くはいきません。国内にいる多数の種族が少数の種族の事を考慮せずに国営をはじめました。これではどうやっても少数の人々は幸せになれません。


元王子様は自殺しました。


次に男は前と同じ国に生まれ変わりました。そこで男は考えます。多数決で国民に任せるのではなく、多数決で人を一人決め、その人に全てを委ねようと思いました。つまり王を国民に選ばせるのです。これならば多数が少数を迫害する事はありません。これで国民は幸せになる。そう思いました。


しかし上手くはいきません。選ばれた人の暴走を止めることができずに国は滅びてしまいました。


男は自殺します。


上に立つものを決めずに全ての人に平等すればいいのではないろうか。労働も賃金も全てが等しく差別をしない国を作ろう。そう思いました。しかし上手くはいきません。自分より劣る人と同じ賃金で働かされ、いくら働いても一向に裕福にならない人達は嫌気がさして何もしなくなってしまいました。全ての人が平等なので何もしない人も生きていけます。国は崩壊してしまいました。


男は自殺します。


年功序列はどうだろうか。


男は自殺します。


能力の良さで待遇を決めよう


男は自殺します。


男は自殺します。


自殺します。


自殺します。


自殺。


自殺。


自殺。



ある日男は気が付きました。人は他人と比べねば生きて行けぬ生き物で、争いは無くならないし平等にもならないと。全ての人が平和を享受できるわけではないと。


男が自殺する事はもうありませんでした。


男は今日もどこかで世界と女神を恨みながら嫌嫌と生きています。

読んでくれてありがとう

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