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ただただただ。の裏側で  作者: けー


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出会い 信也視点

十一章 ギルド面接あたりです。

信也から見たパーティーや姫に対する感想?



 初めて聞いたとき、噂なんてただの噂だと思っていた。

 ただ噂になる程度の何かか、誰かはいるはずだと思っているだけだった。


 ずっとこれからも康太と武雄と三人でやれると、魔法も独学で使えるようになった俺達はそう思っていた。


 それでも食料やその他、生活に関することで頭打ちはいずれ来る。だったらどうせなら聞いていたその姫様パーティーとやらの顔を拝んでみるのも悪くないと、半分冗談のような気持ちで俺達は組合総本部の一宮に行くことにした。



 幸運なのかそれとも神の悪戯か、たまたまのタイミングなだけか。丁度着いた時にはその姫様パーティーがギルドを立ち上げる噂で持ち切りだった。


 しかも条件を聞けば衣食住を見てくれ給料まで出る。最初はお試しと言えかなりの好条件だと、元々見てみたかったのもあって俺達はそこに名乗りを上げた。


 探索者札を持たない俺達のレベルがわからない職員からはかなりきついギルドになると、生半可では耐えられない、と言われたが、今更この世界で生温い場所なんてどこにもあるわけない。それは関東で散々思い知った。


 今までいた場所よりここの空気も緩く感じて、魔道具やポーションの販売もあるここは俺達にいは生きやすく、恵まれた場所に思えた。

 そんな所に拠点を置くパーティーなんて、と俺こそ生温くそして愚かにも調子に乗っていたんだろうな。


 だから俺達は面白がって興味半分とその好条件に引かれ応募したと、今だからこそ素直に認めることができる。




 面接の待合室では俺達以外はほぼ緊張していて、正直弱そうな奴ばかりで俺の鼻白んだ顔を見て武雄が笑うだけ。


 そうやって長い時間をかけて五人ずつが呼ばれ、漸く俺達の晩だと思えば案内に来たのは威圧感のある男と女。


 女の顔はどうにも面倒そうに、でも眼光鋭く室内を見渡す。そして最後にどうでもいいと言わんばかりの顔。

 男は少し真面目な顔で、それでも武器もないのに隙のない佇まい。その険しい目で待合室にいる五人の名を呼んだ。


 この二人が噂の元凶かと、その時の俺は思ったんだ。それも一瞬で砕かれることになる。



 漸く俺達の番になり、面接室に入ればピリッとした緊張感とどこか重い空気。なのに前に座る男は柔らかな笑みを浮かべ、すぐに俺よりも強いと、幾度となく対人戦を強いられた俺には直感的に感じた。


 探索者組合統括長以外、見たことない神職服の七人。これが姫様パーティーか。俺の興味が一気に引き寄せらえた。


 そして何よりただ一人、少し変わった神職服に身を包み、顔を隠し、華奢く小さな体。なのにその佇まいに一瞬で目を奪われた。


 それが姫様だとすぐに気づく。そしてその姿を隠そうとする、姫様を守る鬼人にも。


 ここで俺はようやく俺の驕りに気付くことができた。


 俺達三人この姫様達相手に誰も勝てない。三人纏めても勝つ想像すらできない、と認めるしかない。


 七人の誰にも、俺達は何一つ勝るものなんてないんだ。



 それに気づけばどう俺の印象を残すかが問題になった。



 待合室にいたあんな有象無象より使えるとは思うが、それでも真っ新な使いやすいものを求めている可能性もあったから。


 どうすれば近付ける? どうすれば、その傍に行けるだろうか?


 こんな世界だ。強さを求めるのは当たり前で、そしてその先を見せてくれる奴らがここに居た。

 ならそれにどれだけ近付けるか、今が俺の勝負時だろう。


 何よりそこにいる少し隠された姿の姫様に興味が湧いて、俺の中ではすでにこのギルドに入ることは決定事項だ。

 それに気付いた武雄も面白そうに唇の端を上げ、それを肯定するように質問者とやり取りをする。


 例えどこに行こうと、俺には俺のやりたいことをやるだけだ。世界が変わってもそれは何も変わっていない。

 その中にたまたま姫様パーティーに近づくことが加わっただけ。後は何も失わず俺は俺の道を行くだけだ。




「信也、楽しそうだったね」

「別に、武雄も興味出たんでしょ」

「まあね、けどあんまり見えなかったけど」

「あの鬼人、超顔怖かったし。武雄くんがあんまり見るからだよ」

「けど、たぶん滅茶苦茶強いよ、全員。俺達なんかより」

「そう兄ちゃんは言うけど姫様もなの?」

「とりあえず康太よりは確実」

「そうだね、康太よりは」


 武雄と言えば拗ねたようにそっぽを向く康太に二人で笑う。身長が越されようとも俺にとっては可愛い弟で、武雄も今じゃ家族みたいなもんだ。


 手離す気も離れる気もない。それを守りながらどうあの七人に近づくか。


「信也が近付きたいのは姫様じゃない?」

「力で言うなら全員だよ」


 何ともなしに武雄に返せば、揶揄(からか)いを含むにやりとした顔をされた。


「否定しないんだ」

「隠された物は暴きたい性分だからね」


 それがあっさりあんな形で解消されるなんて、この時の俺はまだ何も知らない。



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