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ただただただ。の裏側で  作者: けー


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噂話

十一章、ギルドを立ち上げる少し前のお話。



「なあなあ慶将(ちかまさ)、また姫様達が何かするらしいぞ」


 俺の肩を強く叩きながら、興奮気味に話す尚成(ひさのり)。その姿にまたか、と溜息が出た。


 高校からの付き合いのあるこいつは、大学に進学したと言うのに悪い奴ではないが子供っぽさが抜けず、こんな世界になってからは一緒にパーティーを組む仲だ。


 そして最近はもっぱら姫様パーティーに興味を持ち、その話しを耳にすればすぐに食いつく。


「お前も興味あるだろ」

「ないわけじゃないが、お前ほどじゃねーよ」


 探索者なら誰だって大なり小なり興味はあるだろう。特に一宮を中心に活動していればなおさらだ。


 七人からなる姫様パーティー。


 ここ一宮で一番有名なのは女帝だろう。またの名を、殺戮の悪鬼。誰が言い出したのか、その先頭を見た者はみんな口を揃えて言う。


 その割に地上では女や子供に優しく、無理矢理迫られてる人を助けては評判を上げ、女性探索者などからは人気も高い。

 パートナーらしき男性といつも一緒に来ては、ほぼやり過ぎて止められているのが印象的らしい。

 強いは強いんだろうが、傍に行くには一番躊躇ってしまう。


 それにそのパートナーの男性も、どんな魔物の数だろうと完璧な守備を発揮し、その盾の使い方や合間に繰り出す攻撃、それに魔法に対する判断力の高さがこの辺りの探索者には考えられないほど精度が高く、その人がいるからこそ、女帝は好きに戦うことができているとさえ言われている。


 次にたまに組合内で見かけるのが、眼鏡をかけた細身の男性だ。

 三宮から移動してきた奴曰く微笑みの死神と呼ばれていて、微笑みを崩さず大鎌を振るい、魔物を屠っていく姿はまさに死神そのものだと恐れている奴も多いと聞いた。


 戦闘に関しては魔弾の策士といることが多く、魔弾の策士の冷静で早い魔法と死神の二人の戦闘は、見るだけでも恐怖を覚えると言っていた。


 そして何より表に出てこないのに、誰よりも注目されているのは姫様だろう。

 その華奢な姿に似合わず、探索者としてもトップクラスの実力の持ち主。戦う姿は舞を舞うように美しく、見た者が見惚れて止まるほどだと言われている。

 またその顔をヴェールで隠し、誰よりもその正体がわからない。


 その横には常に大柄な男と細身の男を従えて、どんな魔物にも臆することなく突き進む。


 殺戮の悪鬼、鉄壁の守護者、微笑みの死神、魔弾の策士、姿なき暗殺者、姫を守る鬼人、そして姫様。


 どこで言われ始めたのか知らないが、その七人からなるパーティーの動向を気にしない奴は探索者の中にいないだろう。


 俺もまだちゃんと見たことはないが、以前に遠目だけど姫様達が一宮でレアな魔物を持ち帰ったのを見た。組合統括長まで出てきて一騒ぎあったのを覚えている。


 それを狩ったのが姫様達と聞いたが、正直信じられるものでもんかった。

 見た目はウリボアによく似ているが真っ白で、その毛皮はきらきらと輝いているように見え、ウリボアと言うには少し大きく、ボアと言うに少しは小さい。見ただけで力強く突進されれば吹き飛ばれそうな体。


 ウリボアは猪突猛進で倒しやすくはあるが、それでも大きさによっては刃が通りにくく、簡単に倒せる相手ではない。

 それをどう倒したのか、その毛皮は綺麗なままで口から血を流しているだけだった。


 姫様は魔法特化なのか、それとも共にいる男が倒したのか。



 そんな有名な七人は姫様パーティーと呼ばれ、この辺りで知らないものはほとんどいないだろう。いたとしても女帝は有名で、その女帝の溺愛する妹が姫様と呼ばれていることはよく知られている。

 仮に会うことがあれば気をつけろ、そう言われるぐらいには。


 早々に会う機会なんてないだろうが、本心を言えば間近でその戦闘を見たみたい。叶うことはそうないだろうが。

 最近はめっきり一宮に来ることも少なく、二宮や三宮から流れて来た奴らから聞く話でしか姫様の強さを知ることができない。


 二宮の奴は姫様に感謝し、嬉しそうに語る奴が多い。三宮でも様々な素材を見つけ、ラージュの実の発見者も姫様で、そしてレベルのある男を数人、一瞬で地に沈めたという話しも有名だそうだ。


 こうしてみれば出来すぎのような気もするが、どれも事実だと組合が肯定する。


「それで、今度はどうしたんだよ」

「ギルドだよ、ギルド。姫様達がギルドを作るらしい」


 興奮が収まらないように話す尚成は嬉しそうでもある。


「ギルド? ギルドってゲームみたいな?」

「ああ、チームとしてのギルドを作るんだってよ」


 その言葉に俺は不思議に思う。あれだけ強いと言われ、組合が口を揃えてトップパーティーだと語る人たちが、なぜ、ギルドを必要とするのか。


「まだ噂だけど、組合が頼んだとか言ってたんだよ」


 言葉にしていなかった俺の疑問を尚成が答え、それがまた俺の疑問を深めた。


「組合が? そんな必要あるのか?」

「さあな、何か考えがあるんだろう?」


 ぶっちゃけ俺は、姫様達の噂話を八割方信じていない。他の組合から来た奴は、見たことあると言って信じている奴も多いが、まだ見たことない俺が懐疑的になるのも仕方ない。 


 もし、その戦いぶりを見れば変わるかもしれないが。


「組合がなあ」


 それがまた俺に引っ掛かりを感じさせる。組合が言うにはトップパーティーで、生産もして、組合に様々な物を卸している。誰よりも貢献度の高い頼りになるパーティーといい、職員の中でも支持率は高い。


 正直、俺も初めの頃はかなり興味があったし期待もした。けどこれだけ姿を現さないと、そのパーティーに疑問を持つのも当然だろう。


「なあ、俺達もそのギルドに応募しようぜ」

「は? まだ噂程度なんだろ?」

「けど結構な数がすでに組合に名乗って応募してるらしいぞ」


 何て気の早いことか。それだけ姫様パーティーの動向を誰もが注目しているということだろう。


 確かにそのギルドに入ることができれば、その噂が本当だとしたら強くもなれるし、安全になれるかもしれない。

 それに間近でその戦いや人柄を見れるかもしれない。


 それに気づいて、俺もまだ姫様パーティーに対する興味も期待も失ってないと気付いた。



この二人、覚えていなくてもまあ大丈夫です。

本当はもう少し後に出そうかと悩みましたが、まあいいかと。

スマホなもんで、誤字脱字、読点、句点ミス多そうですがすいません。

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