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ただただただ。の裏側で  作者: けー


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出会い 皐月視点

九章救世主?

美沙希と真翔を連れて皐月に会いに行った話し。



 重い体を横たえて何とか呼吸を安定させる、昔から少し調子の悪い心臓はこの歳になると定期的に検査や薬が必要になった。


 何度か手術もしたが完治することはないこの病、こんな世界になって夫がいなくなりこんな母親でただただ子供達に申し訳ないと思いが募る。


 今朝も早くから食料を買えそうな所を探してくると出て行った二人、思ったよりも早い帰宅でそれだけでほっとした。


 「お母さんただいま、調子どう?」

 「ただいま」

 「かなりいいわよ、お帰りなさい、二人共怪我はない?」


 何とか二人が顔を覗かせる前に体を起こすことができた、微笑んで向かえれば驚きですぐに戸惑いが走る。


 「どうしたの?服装が違うけど、何があったの?」

 「あ、それ、なんだけどね」


 心配になりすぐに二人に駆け寄りたいのに思ったとおりに動かない体、それでも手を伸ばせば二人は察して近づいてくれる。

 その温かな頬に触れながら無理していないか、嘘はないか二人を見るがどこか気まずそうにしながらも怪我などはないみたいで安心した。


 それも束の間、真翔はどこか気まずそうに視線を逸らし美沙希は言いにくそうに今日の出来事を聞かせてくれる。


 ダンジョンに行き探索者に助けられたこと、そしてその人が私に話しがあると言うこと。


 二人が借金のことを知っているとは思わなかった、あの人が美沙希に直接言ってるなんて想像していなかったあたしは母として最低だろう。


 けど今は落ち込む時ではない、二人を助けてくれた探索者のその仲間の男性が私に話しがあると言うならちゃんと礼を伝え感謝しなければ。


 ここまで二人を送ってくれたと、私の状態がいいならでいいと言っていると美沙希に言われるがすぐにお通しするべきだ。私は身支度を簡単に整えると美沙希に呼んできてもらい、その間にお茶を準備しておいた。


 「お茶ぐらい私がしたのに、こちらが飯田さん」


 居間に顔を出した美沙希は緊張した様子もなく、普段通りに笑顔で脅迫や脅しがあるように見えず一人の男性を連れてきた。


 「初めまして、飯田宏邦と申します、突然の訪問申し訳ありません」

 「こちらこそ子供達を助けて頂いて有難う御座います、こんなところですがお座り下さい」


 朗らかに笑う飯田さんは思っていたような強そうな探索者のイメージとは違い、優しそうな微笑みを浮かべる男性だった。


 「失礼します、助けたんは家の仲間で俺じゃないんで礼など不要ですよ」

 「それでも食事を頂き送って頂いたと聞いています、本当に私が不甲斐ないばかりに申し訳ありません、二人の母の伊藤皐月(いとうさつき)と申します」


 頭を下げれば慌てたように止める飯田さん、そして私の体を気遣うように無理しないでくださいと言ってくれる。


 「申し訳ないんですが、だいたいの事情は二人がダンジョンに行く理由として聞きました、それでもしよろしければと思いお願いしたいことも有りこれを持ってきたんです」


 そう言って小さなポーチから出てきたのは私の手のひらにも収まりそうなガラス瓶、中には不思議な色合いの液体が入っているのがわかる、それを机の上に置くと飯田さんはまた話し始めた。


 「これはダンジョンで出たポーションです、上手く行けば病気はそれなりに良くなると思います。それとは関係なくお願いしたい仕事がありまして本日は来させていただきました」

 「仕事を頼むためにポーションを持って来たのではなく、ですか?」

 「二人を助けたのは妹なんですが、話しを聞いて何かできないかと思ったようです」


 その妹さんを思い出しているのか苦笑しながらも優しい顔で兄妹仲が良いことは想像がついた、けど妹さんと言うと女性と言うことだ、それに飯田さんを見てその年齢は少し気になった。


 「俺達はこれと同じ物はいくつか持っています、使ったこともあります、こんな見た目ですが安心して飲んでください」

 「さすがにそこまでの事をして頂くわけには参りません、お返しできることも御座いませんし」


 美沙希と真翔の表情からも飯田さんを信用し疑っていないことはわかる、少し話しただけだが今のところ怪しい動きも言葉もない、だからこそ余計にこれ以上施して貰うわけにはいかないと私は精一杯背筋を伸ばしただその御気持ちだけを頂くと頭を下げる。


 「下心がないわけじゃありません、もしこれが効けば聞いて頂きたい仕事がある、施しでもありませんし二人におっちゃんに任せとけって言ってしまってるんで飲んでもらわな困るんですよ」


 お道化たように笑い頭を掻く飯田さんの姿は私の気持ちを軽くするためのものだとすぐ気付いた、その優しさに甘えていいのかわからずに躊躇ってしまう。


 「ほんまに病に効くかはわかりません、もしこのポーションが疑わしいと言うなら俺も飲みます」

 「そこまでして頂くのは、本当に頂いていいんでしょうか?」

 「はい、俺の面目の為にもお願いします」


 机の上の小さなガラス瓶、それを手に取って見てみれば少しとろみのある液体で角度で色が変わって見える不思議な物、私は最後の確認も込めて飯田さんを見た。


 「本当に頂いても宜しいんでしょうか?」

 「ほんまに気にせんで下さい、効くかはわかりませんが害はありません」

 「有難う御座います」


 私はそう言って蓋を開け一気にそれを呷った、甘みが強いのにほんの少しの苦み、それは子供用の薬のシロップに似ている気がした。


 小さな音を立て机にガラス瓶を置くころには驚くぐらいに体は軽くなり、その効果をすぐに実感する。


 「よかった効いたみたいですね、けど元が弱ってた体やしすぐには無理きかんと思うんで気を付けてください」

 「は、はい、有難う御座います」

 「あとこれも渡しておきます、完治かわからんので同じのと、こっちは少し弱い奴です」


 そう言って同じようなガラス瓶を何本か机に置いていく飯田さん、さすがに慌てそれを止めるが下心ありますからと聞いてはくれない。


 探索者とは確か命を掛けてダンジョンに入り魔物と戦う人のことだ、そのダンジョンには色々不思議な物が出てくることも聞いたがこんな初めて会ったものに渡せるほど出てくるんだろうか?


 「宏さん達有名なパーティーなんだよ、日本一強い」

 「日本一強いか知らんけど、そこそこ有名なんはほんまですねん、やから気にせんで下さい」


 全くそんな風には見えない目の前の飯田さんは、美沙希の言葉に苦笑しながらも肯定してだから安心してくれと笑う。


 「調子のほうはどうですか?」

 「本当に嘘のように体も軽く呼吸も楽です、有難う御座います」

 「お礼は結構です、それじゃあこっから俺の下心の話しして大丈夫ですか?」

 「はい、お仕事の話しだとか」

 「聞くだけ聞いて無理そうなら断って頂いてもいいんで、それなりにメリットもデメリットもありますから」


 はっきりと言葉にする飯田さんに驚きで一瞬だけ目を丸くしてしまうがこの人は最初から真っ直ぐに伝えていてくれた、自分が怪しまれることをわかって包み隠さず伝えてくれた。


 それならば母として飯田さんに感謝はあれど真っ直ぐに向き合い話しを聞くべきだと私は姿勢を正しその目を見つめ返す、それに気づいた飯田さんはにやりと笑いどこか嬉しそうに見えた。



投稿迷いましたが上げることにしました、また修正するかもです。

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