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ただただただ。の裏側で  作者: けー


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痛みの正体 秀嗣視点

九章願いと祈り。

拓斗が姫巫女の加護がついた後。



 朝起きてきた二人を見て違和感に気付いたのはきっと俺だけだっただろう、それは姫巫女の守り手としての感覚で絵里子と拓斗がより近いものに感じた。



 朝食を終え台所に入る絵里子を見届けてから拓斗が俺に声を掛け宏の元へと行く。


 「宏さん、忙しいとこ悪いんですけど大事な話しあります」

 「なんや変わらず意見分かれてんのか?」

 「そんな生温い話しちゃいます」


 拓斗の声は真剣で俺達はまた宏の部屋に移動して話しをすることに、今度は最初から智もいる。


 「秀嗣はなんとなく気づいたんやろ?」

 「理由はわからないが違和感はある」


 どこか言いにくい気がするのはどうしてだろうか、何が変わったとはっきりしないこの感覚は何なのだろう。


 「秀嗣は俺と似た存在で絵里子にも近いからやと思う、宏さんて真眼で加護って見えます?」

 「誰の加護かはわからんけどついてるんはわかる」

 「なら一回俺見てください、どう見えます?」


 拓斗の言葉に訝しむ宏だがすぐに表情を変える。


 「これどうゆうことや?加護が」

 「二つ付いてますか?」


 それは確信していた声だ、さすがに宏も智も驚き拓斗を見るが俺はどこか理解してしまった。


 「これ俺の今のステです、絵里子の鑑定した」


 その紙を見て宏が表情を変えその目が拓斗に説明を求める。


 「思った以上にあいつは不安定です、力もそれから心も」


 拓斗はいつもの余裕を消し、その顔は真剣で何かを決意するように手は強く握られていた。


 「昨晩聞かれました、俺らが何を隠してるんか。たぶん答えに近いとこまで来てると思います」


 意味も分からず胸が痛んだ気がした、知らず握りしめる手は強くなる。


 「たぶん俺に言ったのは友達って意味で近い存在やから、歳も一緒やしな」


 そんな俺をわかっていたように言う拓斗はどこか申し訳なさそうに見えた。


 「俺があいつに言えたのは俺を守り手として認めてほしいと、守らせてくれと言いました、たぶんそんな俺を守りたいとあいつは思っただけやと思います、本人が驚いてましたから。それと人なんか自信なくなったって」


 宏と智が目を開き俺はただきつく目を瞑った、畏怖の目で見られ痛みに耐える絵里子の姿が浮かび苦しくなる。


 「たぶん発動させたくて発動してるわけじゃないです、このままやったらほんまにあいつは姫巫女の力に飲まれていつか」

 「そうさせないための俺達だろう?」

 「だからこそ言うべきやって俺は思ってる、あいつがあれだけ不安定なんも知らんからこそや」

 「お前らがよお考えてるのはわかったが落ち着け」


 熱くなりそうだった俺と拓斗を止め宏の厳しい目が拓斗に向く。


 「その後のあいつの状態は?」

 「不安そうでした、やから珍しく素直に寝付くまでおらせてくれましたし」

 「不安か、怯えてるんやろな」

 「そうですね、怖がってもいますし起きてからも考えてましたから」

 「体に不調はなさそうやったか?お前も」

 「それは特になさそうでした、俺も全くないですね」


 考え込む宏に代わる様に智が口を開く。


 「拓斗は早く姫様に伝えるべきだと思ってるんですよね?」

 「できるだけ早く、じゃないといつまでも怯えていつかちょっとした俺らの危険で暴発させる」

 「だからこそ俺達が傍にいてあいつを守り止めるんだろ?」

 「それだけやったらもう無理や、あいつの限界は近い」

 「なら言わずとも癒す方法を考えるべきだ」

 「二人共、特に秀嗣落ち着いてください」


 智の冷静な言葉で我に返る、握りしめる手にまた力が入ってしまう。


 「拓斗は遠征準備をお願いします、また聞くことがあれば呼ぶこともあると思いますので」

 「そうやな、りょーかい。まず薬学からでいいやろ?」

 「はい、お願いします」


 智の言葉ですぐに切り替え拓斗は普段通りに部屋を出て行く、年上の俺の方がまるで子供みたいだなと情けなさが滲む。


 「私は難しい問題だと思っています、ただ確かに拓斗の言う通り姫様が勝手に発動させてしまうことには危険視します」

 「やからって知ったからって止めれるともかぎらん」

 「そうなんです、どちらにせよ正解はありません」

 「知っても知らずとも傷つき痛みを感じるのは絵里子だと言うことか?」

 「私はそう思います」


 智の言うことは尤もで俺の中にも迷いは生じている、それでも異質な力に怯える絵里子の痛ましい姿が俺の中から消えない。


 「秀嗣って不器用やんな」


 宏に苦笑され突然投げ渡されたポーション(微)に俺が驚いていると宏は手の平を指差した、知らず強く握った手は爪で血が滲んでしまっていたようだ。


 「前も言ったけどこれに関して俺は答え出せんと思ってる、近い二人で決めてくれていい、ただその後のフォローは俺らもするし思い詰めんな、仲間やろ」


 いつか俺が宏に言った言葉だ、拓斗も信頼してるからこそすぐに全てを俺達に話し、独断で行動せずに俺と向き合おうとしている。


 「ああすまない」

 「そこはありがとうや、あいつの二宮での姿や姫巫女としてのいろんな姿を近くで見てきたからこそ考えることもあると思う、逆に拓斗は姫巫女ではない絵里子を知ってるからこそ色々考えるんやろ」

 「私からしたら羨ましい話しですねえ」

 「智は自ら俺を選んだんちゃうかったん?」

 「すいません、私そっちの気ないんで」

 「俺もないわボケ」


 二人いつもの空気で俺を溶かしてくれるから、優しいこいつらに救われる。


 「ありがとう」

 「持ちつ持たれつや」

 「いつでも夜の姫様の見守り変わりますよ?」

 「その場合は智の前に拓斗だろう」

 「三人で順番でもいいですね」

 「それ兄の前で話すことなん?」

 「自分で許したことでしょう?」



 拓斗は先に絵里子の守り手になっていた俺を常に立ててくれていた、信頼し守り手と認め接してきてくれた、俺より若いというのに本当に気の付くよくできた奴だと思う。


 付き合いの長いあいつだからこそ気付くことがあり思うことがある、それは俺が見てきた絵里子の姿に気付き思うことがあるように。


 これが嫉妬だったとようやく気付き受け入れる、それでもまだその理由は考えないほうがいいだろう、俺達はまだ始まったばかりでこれからもまだお互いを知ることが多いのだから。




明けましておめでとうございます、今年も頑張ります。

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