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ただただただ。の裏側で  作者: けー


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それぞれの想い 宏視点

九章これからのこと。の後。

拓斗と秀嗣二人が宏に呼ばれた理由。



 念の為で拓斗と秀嗣を俺の部屋に招き入れ適当に物を避けてスペースを作る。


 「汚いけど悪いな」

 「絵里子予防でしょ、個人部屋のほうが安心ですもんね」


 変わらない拓斗とは対照的に秀嗣の顔は硬く思い詰めているように感じた。


 「二人呼んだんは最近の絵里子についてや、どう思う」

 「俺ははっきり説明するべきやと思いますよ、このままじゃあいつが無茶して暴走するん見えてますし」

 「それは俺達が傍で止めて守ればいいだけだ、わざわざ知らせることじゃない」


 俺の聞きたかった事とは少し違うが、守り手同士で真っ二つに意見が分かれるとは思ってなかった、それは付き合いの長さなのか感情の重きなのかまだ俺も計りかねてはいるが。


 「二人から見ても絵里子の力がおかしいと思ってるってことでいいねんな」

 「それは見てればわかりますもん、自分で制御できてないって」

 「時折光る目の金環も強くなっているしな」

 「俺の予測やと俺らに対してかなり固執して守るのに必死になってるように感じる」

 「俺もそう思いますよ」

 「そうだな、それに今の現状の悪い部分は自分の所為だと責めているように思う、だから余計に守ろうとするんだろうな」


 二宮でのことも三宮でのことも報告としては聞いている、それを両方近くで見ていた秀嗣からすれば思うところもあるんだろう。


 「俺らはそんな簡単に潰れたり壊れたりせんのにな」


 つい漏れた本音は本人気付かずに一番囚われている絵里子を知ってしまったからだろう、覚えているなんて思ってなかった俺でも様々な報告からその深さを窺うことはできた。


 「あいつはあほみたいに自分の内にいれた人間に甘いから、このままやったら自分を責めてそれ見て痛み感じてる人にも気付けん、それに聡い奴やからどこで気付いて自分責めるかわからへん」


 真っ直ぐな拓斗の意見は絵里子をよく理解しているなと思う、こうして裏で話し合ってることすら今のあいつが気付けば責める要因になるんだろう。


 「しかし注意深く見ておけば止めることはできる、わざわざ怖がらすようなそんな必要はないだろう?」

 「俺としては伝えることで加速する可能性があると思ってるけど拓斗はそれにどう思う?」

 「可能性はあると思いますよ」

 「なら」

 「だからこそ俺と秀嗣がおって止めれます、俺らがなんで止めたいかもあいつは理解して暴走は抑えれると思います」


 秀嗣の言葉を遮って拓斗ははっきりと言う、そして俺よりも絵里子を理解していると思う、ある意味俺よりも拓斗のほうが付き合いは長いと言えるのかとそこで気付いた。


 「拓斗の言い分も理解できないわけじゃない、それでも俺は傷つき怯える絵里子を見たくない」

 「けど結果的にはどこかで気付く、それか力の暴走で傷つくんはあいつや」

 「二人の言い分は俺も理解できた、ただ最近のあいつの不安定さも俺は正直怖い」


 どちらも真剣に考えて絵里子を思ってのことだとわかるからこそ俺は切り出す、秀嗣の顔が一段と硬くなった気がした。


 「要因は様々やと思いますよ?」

 「拓斗は目星ついてるんか」

 「一応二宮でのことは簡単に聞いてますし、それ以上に自分の所為で狙われる俺らが許せんのでしょ?それに宏さんも宵闇様に言ってたじゃないですか」


 俺が言ったことと言えば観察が楽しくなるって話しか?他に何があったかと記憶を探るが特に浮かぶものはない、そんな俺に気付いたんだろう拓斗は言葉を続ける。


 「自分の所為でみんなが、特に宏さんと恵子さんが異質になった、なのに動くことを止められる、あいつからしたら不安で堪らないんですよ、自分の所為なのに自分で守ることを制限されてる今に」


 確かに言った、あのときはあれをどう回避しあいつを繋ぎ止めるかそれだけしか考えていなかった結果だ、それが思った以上の結果を出してしまってると言うことか。


 「今は完璧に無意識で姫巫女の力の暴走やと見てて思いますし、それは不安定の表れやと思うんです」

 「力が不安定ではなく、心が不安定ってことか」


 俺の言葉に頷く拓斗、その目にはほぼ確信しているように思う。


 「しかしだったらその心の不安を取り除いてやれば」

 「それが簡単ちゃうと思うからこそ俺は言うべきやと思うねん」

 「どうしてだ?俺達が強くなって守る必要などなくなれば」

 「今度は疎外感と自分の所為で無理させたと思うやろうなあ」


 自分で出た言葉に面倒な妹だと心底思う、真剣にあいつは馬鹿だとも。


 「あいつはもうちょい気楽に生きれんのかね」

 「それ言ったら宏さんもやと思いますよ、もうちょい仕事回されても俺大丈夫ですから」

 「なんだかんだ言ってお前達兄妹真面目だと思うぞ」


 二人に言われどこかでこそばゆいような感じがして苦笑してしまう。


 「俺は結構手抜く場所も知っとる、恵子は自分の大事なもん理解しとるし絵里子ほど手を広げへん、絵里子が一番くそ真面目でこんな硬いと思わんかったわ」


 責任感と一言で言ってしまうのは簡単だ、でもその根源にあるのは罪悪感だと質が悪い、自分を追い詰め不安定になっていることすら自覚できていないように見える今は一番危ういんだろう。


 「宏は、兄から見て言うべきだと思うか?それとも見守るべきだと思うか?」

 「俺は正直その答え持ってない」


 離れていたからこそ、そして両親のことなどを何も知らず丸投げにしてきた俺が今更兄として、違う視点から絵里子を理解し真剣に考えている二人に言えることなど何もない。


 「二人の話し聞いて両方わかるし、伝えることで不安定を加速させる可能性もあるし、伝えんことで加速させる可能性もある」


 どっちにしたって一緒だと俺は思った、だからこそ今一番近いやつらに託すべきなんだろう。


 「守り手でもあって今一番絵里子とおる時間が長い二人の出した答えで俺はいいと思う、その結果どうなろうが結局やることなんも変わらんし」

 「変わらないとは?」

 「あほやったら説教かまして、ぐじぐじしとったら揶揄うだけや」

 「兄としての見守り方ですね、宏さんもなんだかんだ言って妹に甘いと思いますよ」

 「あほか、どこがや、恵子に関してははっきり諦めとるだけや」

 「ただ守ることには変わらないんだろ」


 さっきまで意見を食い違がらせていた二人がなんとも言えない笑みで意見を纏めてくるから、これには俺もお手上げだ。


 「お前ら全員ひっくるめて腹括ってんねん、やから逆もまた然りで、お前らにも俺守ってもらわな」


 にやりと言ってやれば二人にはこの意味が伝わるだろ、頼りにしている。ただこれだけでいいことができない絵里子は今もまだ一人で立たなければと思っているんだろう。


 早く気付けばいい、自分の周りにはこんなにも自分を思い守ろうとしてくれてる奴がいるということに、そして支え合い立つことを覚えればいいと。


 部屋のチャイムが鳴ってやっぱり来たかとすぐに思った、権利は渡してるから勝手に入ってくるだろうと俺の予想通りにすぐに部屋にノックの音が響き姿を現せる。


 「姫様の会議に私を外すとかやめて頂けますか?」

 「近いもんに聞くんが一番やろ?」

 「私が遠いと?」

 「時間や関係性を考えろ」


 智の冷たい目が俺に向けられるが知ったことじゃない、ただよく思うのは本当にこいつが絵里子に向ける感情だけはいまだに謎だと。


 拓斗も秀嗣も計りかねているところはあるが好意としてはしっかりと伝わる、智のこれは好意ではあるが崇拝なのかアイドル的なのか、それとも何なのか謎過ぎてたまに知りたくなる。


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか拓斗がなんでもないようにさらっと言ってしまうから戸惑ったのは俺の方だ。


 「智ってほんまに絵里子好きやんな?それってどんな感情なん?」

 「そうですねえ、まだ判断はつきかねますが大切で守りたい人と言う意味では皆と同じですね」


 微笑み躊躇いなく口にする智、それに苦笑する珍しい拓斗が見れた。


 「私としてはお二人の感情のほうが気になりますがね」

 「それ兄の前で話すことか?」

 「ある意味安心ですね」


 微笑む智に確かに気にならないわけじゃない俺は降参するしかない、それにはっきりと答えた智が二人を逃がすとも思えず、俺はついにやついて苦笑している拓斗とどこか慌てているような秀嗣を観察することにした。



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