副姫巫女の恐ろしさ 拓斗視点
八章それは唐突に。の拾った少女達関係。
かなりまえに書いていたのに投稿するの忘れてました。
恵子さんがダンジョン近くで絡まれている女を助けた、それ事態は多々あるし悪いことだとは思わない。ただそれが制服を着た女子高生で三宮のダンジョン近くとなれば話は別だ。
幸康が俺達の車の前でただ願い続けるから、三宮組がダンジョンに行っている間俺が見張りで残ることになった、本当ならばもう絵里子と秀嗣に合流しているはずだったのにとため息が出る。
そんな中でこんな世界になって制服で出歩く少女、そんな奴かなり痛い奴と決まっている。女子高生と言うブランドだと勘違いし、庇護を誘う気なんだろうとすぐに予測はついた。
恵子さん曰く親は死んだと言ってるらしいがそれも怪しいと俺は思っている、連れてこられたその姉妹の制服は特に汚れもなく綺麗で、見た感じの栄養状態も悪いようには見えない、何よりもその目が俺達を見定めるようになそんな目つきだったから。
「面倒になりましたね」
「そうやな、たぶん俺と智か」
「宏なら面白かったのに」
「のりさんやったら恵子さんどうしてたんやろな」
なんだかんだと仲良い夫婦だ、焼くのかそれとも少女を排除するのか、それはそれで見物だったのに。
ただそうはならず姉妹の目は俺と智を見て獲物を見つけたように野心が見える、それにまだ恵子さんだけが気付いていない、絵里子の女子供に甘いのは恵子さん譲りかと思ってしまった。
「なあお兄いいやろ?」
「お前ほんまにあほやんな?わかってるんか?」
「わかってる、けど絵里子が一人で家事大変なんもほんまやん」
「けどあいつが望むとも限らんし、危ないのはお前もわかってるやろ?」
パーティーとしての話しと言うより兄妹の話し、それに口を突っ込めるほど俺はできた人間ではない、何よりあそこには地雷が多すぎて近づきたくない。
なのに俺の願いは虚しく姉妹が自ら近づいてくる。
「あの、このパーティーの人なんですよね?」
「恵子さんに拾われたんやから恵子さんとこおって」
冷たく言い放ちここに絵里子がいたら怒られそうだと浮かんだ俺も大概なんだろう、でも優しくする理由もない奴に優しくしたいと俺は思わない。
「恵子さんは運はいいけど何かがずれてるんでしょうねぇ」
横にいた智の言葉に吹き出して同意する、恵子さんはどちらかと言うと普段は騙しやすい単純な人だ、だからこそ獣としての勘が鋭く、危険物をかぎ分ける。
ただし、女子供を抜いて。
今回はこれが裏目に出た、この姉妹の言葉を鵜呑みにして疑っていない恵子さん、とうとう絵里子に念話で聞き始める始末。
「もしかして姫様に会いたかっただけでしょうか?」
「野生の勘と強運使って無意識に絵里子がこっちに来る状況作ったってことか?」
「もうそうとしか思えませんよ?」
智の疲れた笑顔に俺は言葉を探すが浮かばない、姉妹はなぜか言葉を返さない俺と智の横にいてずっと何かを喋っているし。
嬉しそうに絵里子に念話する恵子さん、それを見ていれば智の言葉も間違いではないと思ってしまう。
「俺組合で少し聞いてくるから、智と拓斗はテントの中でもおって」
「私も行きますよ」
「のり君に頼むし、さすがにな」
智が動けば黒髪の女が付いてくる、それを避けるためにも智では駄目だと宏さんは暗に言う。
智からため息が聞こえ、なんだかんだと仕事人間な智、本来宏さんの右腕として仕事ができないストレスが積もっているように見えた。
「情報収取は私の仕事なんですけどねぇ」
「この状態は仕方ないわ、とりあえず目立つしテントやな」
そう言って歩き出せば人の腕に絡めようとしてくる手、俺はそれを振り払いさっさとテントに入る。
入って良いとは言われてもないのに姉妹二人はテントに入り、中を嬉しそうに興味深そうに見ている。
「ここすごーい、拓斗のなん?」
さっき宏さんが呼んだからか、俺の名前を呼び捨てにするガキに苛立ちが湧いた。この辺りでようやく恵子さんも首を傾げ始める、たぶん本命の絵里子を誘い出すことができたから少し通常に戻ったんだろう。
恵子さんは本来頭は悪くない、どちらかと言えば冷静でいれば戦闘にしても状況判断にしても上手いタイプだ、ただ自欲と自我が強く熱くなりやすいタイプなだけであって。
よくこの人の手綱握れるなとのりさんのそこだけは尊敬する、暴走を止めれる唯一の人。だったら今回も止めてほしかったが恵子さんの絵里子に対する心配とかその辺りゆえ止まらなかったか。
そうやって考えて何とか自分を落ち着けようと思うが、それでも落ち着かないのは横に座ってすぐ俺に触れようとしたり話しかけてくるこの女の所為だろう。
「ねえ拓斗、聞いてる?」
「人の名前勝手に呼ぶな、それも呼び捨てって頭大丈夫か?」
何とか魔力も威圧も出ないように押さえるがこれがいつまで持つか正直自信がない、一瞬怯えたようなしまったとういう顔をして女が言い直す。
「ごめんなさい、拓斗さん」
「名前呼ぶなって言ってるねん」
これ以上会話しては苛立ちが増すだけだろう、それは智も同じだと思う。
宏さんからの念話で組合で聞けた情報がもたらされ、真っ黒だとすぐに判断する。
元々そうだが余計に庇護欲なんて湧くわけもなく、さすがに絵里子もこれには何も言わないだろう。
「恵子さんが拾ってんから恵子さんが面倒見て下さい」
「それはわかってるんやけどな」
俺と智の横に居座り続ける姉妹、恵子さんの質問には一応答えるが動こうとはしない。
庇護欲誘って保護してもらうまで演技しきれないとか、そんなに自分に自信があったんだろうか?それとも制服効果で無下にはできないと思っているのか?
「恵子さん、マジで俺強制しかできませんよ?」
「私もですね」
不穏な空気だけがテントの中に流れている、それに気付いているのが恵子さんだけという悲しさ。
姉妹二人はテントの設備や家具に目を輝かせ何か勘違いしているようだ。
「遅くなって悪いな」
その空気をぶった切る様に入って来た宏さんとのりさん、宏さんはこの空気わかっていただろうしのりさんはいつも通り苦笑している。
「恵子、今度からなんでも拾ったらあかんよ?」
「わかってるって、それで絵里子は?」
うん、わかってないな。そして無意識だろうが智の考えが正解だった。
「あとで絵里子から連絡あるやろうししっかり怒られとけ」
宏さんの言葉にやばいって顔するぐらいには今の状態をわかってはいるんだろう、ただ今回のこれはしっかり俺としても反省してもらいたいし二度とないようにしてもらわなければいけない。
「まあ俺らも考え甘いとこあったんやろなあ」
「想定するべきではありましたよね」
「ところで幸康どうするんですか?」
「ほんまに家の妹達は次から次へと」
面倒そうに吐き捨てながらも幸康を多少なりに気に入ってしまっている宏さん、それがわかるから苦笑した。
「絵里子は何も考えてないから、恵子さんは自分に素直やからか」
「拾い物や運の使い方ですか?」
「今の状態見てたらなんとなくそう思えてん」
俺達に無害で立場を理解しただ純粋に願う幸康、それに比べ私欲だらけで自分たちの立場を理解しない姉妹。
逆に言えば今回この姉妹は恵子さんに利用されただけだとも言えるのか。
一先ずは絵里子から念話が来たんだろう、しょんぼりとして無言で頭を上下させている恵子さんを見ながら、絵里子が来るまでは我慢かと自分に言い聞かせた。
本日から五日連続投稿なります。




