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ただただただ。の裏側で  作者: けー


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兄として、仲間として(1) 宏邦視点 

八章、漏れ出てしまう弱音の痛み後、主人公寝てますw



 絵里子が眠ったと秀嗣から念話を貰って俺は様子を見に秀嗣の部屋に向かった。


 「眠りの香を使ったから暫くは起きないと思うが、さっき起きたときは魘されていた」

 「そうか」


 ベットに横になって防具もそのままで血も全て拭えてないまま眠る妹、その顔はどこか幼い時の面影もあるのに遠く感じた。


 「なんか言ってたか?」


 俺の呟きに秀嗣の躊躇う気配がする、それは俺に対してなのかそれとも絵里子に対してなのか、それを頭の片隅で理解しながらもどこか苛立ちが募っていく。


 「誘蛾灯か」

 「気づいていたのか?」

 「恵子に色々聞いてきた、そんでこの力か」


 ため息のように言ってしまうのは許してほしい、どうしてこいつにこんな重たいものが圧し掛かるのか、もう少し無責任な奴を選べばよかったのにとついあの神に苛立ちが湧くが、それすらあの神からしたら余興の一つでしかないんだろう。


 「まだみんなに言うてないけど暫く絵里子見といてくれるか?」

 「どうゆうことだ?」

 「一週間ぐらいどっかでレベ上げしてくるわ」

 「武力としてレベルで絵里子の上を行くと言うことか?」

 「化物上等、異質上等じゃ、こいつには自分が何者なんかってわからせなあかん」

 「だがそれはまた自分の所為でと思わせる」

 「やとしてもこいつは妹で下っ端や、姫巫女なんてもんに惑わされてそれを忘れとるこいつにはいいお灸や」


 ただ守りたかった絵里子の気持ちもわからなくはない、だからと言って俺がそれを認めることはない、家を、こいつを守ると腹を括ったときから俺は兄としてこいつを見続けている。


 「わかった、ただ俺も日に数時間ここのダンジョンでレベル上げしてきていいか?」

 「いいで、ただ絵里子の部屋閉まらんようにして秀嗣の部屋中から開かんように鎖でもつけといてな」

 「そこまでするのか?」

 「そこまでせな今のこいつはわからん、やるなら徹底的や、誰に歯向かったかわからせたる」


 守れなかった苛立ちを絵里子に向けていることはわかっている、それでも許せるものでもない、こいつは自分を責めるあまりに俺達の気持ちを踏み躙っている、それを何よりもここでわからせておかないと行けない。


 「宏はすごいな」

 「すごないから後手に回って今キレてるだけやで」

 「それでも絵里子を思って、そして他の仲間の気持ちも考えている、俺にはできないことだ」


 慰めではなく本心なんだろうが、今の俺にはどこか痛く感じてしまう。


 「間違いや失敗なんて当たり前だ、それでもすぐにそれを取り返すだけの行動を考えれるお前は俺は素直に尊敬する」


 秀嗣のその言葉にどこか少しだけ救われたような気がした、俺の考えを認め後押ししようとしてくれる言葉に心強さを貰った。


 「明日またこいつ起きて落ち着いたら連絡くれるか」

 「わかった、お前も疲れてるだろうからあまり無理するなよ」

 「まだまだやること山積みやからなあ」


 そう言って秀嗣の部屋を出れば居間には残りのメンバーが揃っていた、まだ体が辛いはずの拓斗と智まで。


 「お兄、絵里子は?」

 「今は寝とる、たぶん朝まで起きん」

 「あの子、なんで、あんな」

 「何となしわかってるんやろ恵子も」


 その言葉で唇を噛み締め最近の異変に気付いていたのに止められなかった自分に後悔を滲ませる恵子、それはこいつだけではないんだろう。


 「拓斗は体調は?」

 「まだ多少違和感ありますが大丈夫です、力も少し休みましたから全部ではないですが馴染んできてます」


 本当に器用な男だ、それ以上に今は感情として休んでいられないと言うのが正解だろうな。


 「明日から俺は三宮でガチのレベル上げしようと思う」

 「何を言ってるんですか?姫様をどうする気ですか?」

 「明日あいつと話して決める気ではあるけどたぶんそうなると思う、その間秀嗣に見てもらっとく、あいつが異質で怖い言うならレベルで勝って妹なんてしょぼいもんやとわからすだけや」


 とんでもない暴論だ、そんなこと俺だって理解はしている、それでも全員が職業も変わりそしてレベルさえもあいつの上を行くことで変わる何かがあると俺は信じるしかない。


 「本気なんですね?」

 「俺は常本気や、やからって全員に強制する気もない、これが正しいとも限らん」


 向き合うべきじゃないのかと諭す俺がいるのも本当だ、ただ言葉でどれだけ説明してもあいつは理解はしても本当の納得はまだできない気がする。


 「総菜足りますかね、秀嗣の分は置いてかなあきませんし」


 まだ悩み答えが出きらないままの俺にのんびりとした声がかかる、のり君を見ればいつものように少し困ったように笑ってた。


 「俺もさすがに今回の事は絵里ちゃん怒るべきやと思います、でもただ怒るだけやとあの子はほんまの所で理解しきらん、だからこそでしょ?」


 何でもないように肯定してくれるのり君、恵子もやる気の顔になっている、それだけで俺はどこかほっとした。


 「わかりました、準備はしておきます」

 「高遠さん通じて三宮言ってるほうがいいちゃいます?この人数で大暴れやし」


 まだ辛いはずの拓斗と智まで行く気で話しをしている、あいつはいつになったら気付けるんだろうか、こうしてあいつを想い心配してくれている人がいると言うことに。


 それはどこかこれまで全て知らず、あいつに家族の重荷を背負わせ見ないふりしていた自分の所為でもあるんじゃないかと囁く俺がいる、だからと言って俺はそこに沈む気はない。


 だからこそのこれからで、だからこその仲間だ、あいつは一人背負えばいいとそれが姫巫女だと勘違いしていることに早く気付くべきだ。


 「今回は絵里子おらんし総菜は多めに持って行って、ガチでやる気や、各自無理はすんな」


 みんな思うことはあるんだろう、それでも俺に一任し任せてくれているこいつら、だからこそ俺は前を向く、後悔なんてあとで腐るほどできるんなら、今できるやるべきことをやるだけだ。



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