男部屋
七章の後半あたり、本日は休み頃ですかね?
珍しい二人の会話です。
「なあ、二宮でのこと聞いていい?」
就寝前の少しゆっくりとした時間、声はどこかのんびりとしたいつもの声なのに拓斗の顔は真剣だった。
「それは、どうゆう?」
「達也に聞いた」
一瞬自分の顔が歪む、それだけで拓斗は何かを察するだろう。
「あいつも心配と申し訳ない気持ちでごちゃ混ぜやねん」
達也の気持ちもわからなくはない、あれだけの助力があり家族の命すら助けてもらってそれであの仕打ち。
ただ三人の関係を考えると仕方ないかと息を吐き自分を落ち着かせた。
「どこまで聞いた?」
「信也の尻拭いに摩耶の親父さんの暴言と摩央さんの暴走」
「ほとんどじゃないか」
つい苦笑になるのは仕方ない。
「あいつは心配をかけるからって自分からは言わん、それに達也達のことも考えて言わん、やから側に居った秀嗣に聞きたいねん」
拓斗の声は真剣で絵里子を心配していることなんて疑うこともなかった。
「なぜなんだろうな、絵里子はああ言われることを仕方ないと、相手のあの態度が正常だとでも言わんばかりで、自分が相手にしたことは力があるから当たり前だとそう言っていた」
「あほやろ、ほんま」
どこか悔しそうに見える拓斗。
「摩央さんの説明の時は?」
その言葉で俺は一瞬止まってしまった、それだけで聡いこいつは気づくだろう。
「達也も詳しくは言わんかった、ただ聞いた摩央さんの状態とあいつで思い当たるのなんて」
「絵里子から聞いているのか?」
「詳しいこと言うわけない、少ない情報と該当条件考えたらってだけ、やっぱ母親か?」
俺は言葉にすることができず、それでも表情読んだ拓斗は納得した様子だった。
「追い詰められてるんはなんとなくわかってたけど、弱音吐くような奴ちゃうし、口突っ込みにくいネタやったからなあ、どうせ自分責めてるんやろ」
どこか吐き捨てるような、それでいて痛みを感じている拓斗に俺は何を変えずべきなのか。
「恵子さんにもなんか遠慮してる部分あるし、あいつほんまあほなんやろな、ほんまに」
「泣きたいのは本当は誰なんだろうな」
ふと口から出たのはそんな言葉で、拓斗は。
「お互い様でしょ?」
と、笑った。
「俺も聞いときたいことがあるんだがいいか?」
「俺で答えられるなら」
「絵里子は、昔からああなのか?」
俺の言葉に拓斗は首を捻る。
「距離感が近いと言うか、女性として意識が薄いと言うか」
あー、と言いながら苦笑する拓斗。
「なんて言うんかなあ、女やと理解はしてるし男になりたいわけでもない、けど女であることを認めたくないって言うか嫌ってか不利と捉えてるって言うか、自分が女であることで周りに迷惑かけたくないってか」
珍しく拓斗が言葉に迷いながら繋ぐ。
「女であることでできへんことや女であることで起こる嫌なことを嫌ってる感じかなあ?その分自分の周りの女にめっちゃ親身で気を回すで、摩耶相手見てたらわかるやろうけど」
その言葉には苦笑で納得ができた。
「やからって男女分けて考えるわけでもなくて、懐に入れた人間には砂糖吐けるほど甘くなるし」
「お前も十分だと思うぞ?」
「俺はほんまの身内だけやで、それでも冷めてるもん。逆に絵里子は基本が優しいねん、人を無視できんタイプやな」
そう言うこいつも十分優しいだろう、冷めていると言うが大切なものを大切にしたいだけな奴だ。
そして二人がお互いを大事に、大切にしていることぐらいはすぐわかる。
「秀嗣から見て、絵里子ってどんなん?」
そう聞かれふと思い出す絵里子の笑顔と痛みを堪えるような表情。
「優しいな、誰かを想い痛みに耐えれる、それと一見強く見えるが…、本当は繊細で脆いのを無理矢理繋ぎとめている、そんなイメージか」
「間違ってないんやろうなあ」
あのとき垣間見せた絵里子の目はどこか深い闇に見えて、痛みや哀しみすらも自分のせいだと責めているように見えた。
その姿は触れてしまえば一瞬で砕けてしまいそうで、今にも崩れてしまいそうで不安より絵里子を繋ぎ止めたいと俺は思った。
「あいつほんまあほやから、勝手に相手の迷惑考えて思考狭める奴やから、秀嗣もこれから振り回されると思うけど頑張ったって」
拓斗の声は優しくその表情はしっかりと誰かを思う表情で、付き合いの長さを見せつけられたように感じた。俺もいつかこうなれるだろうか?
「拓斗は絵里子を…」
考えるより先に口から出た言葉は上手く言葉が繋がらず続かない、どこか本心を掴まさない目の前の男は飄々と表情を崩さないから余計に言葉が出てこない。
「ん?どないしたん?」
「いや、なんでもない」
「そっか、なら絵里子来る前に寝支度整えよか」
「ああ、そうだな」
最近知りましたが、会話文頭空白開けないほうが読みやすいんですかね?
↑本編で聞くべきことw




