家族の覚悟 恵子視点
二章お披露目は意外な結果以降、家族が神職になる前になります。
お兄の呼び出してあたしとのりが地下の居間に行けば、お兄は何かを難しい顔で考えていた。
「どないしたん?あたしもう寝たいんやけど?」
「絵里子の友達のこと」
「そんなん絵里子に聞いたらいいやん?絵里子は?」
「自分の友達なんて悪く言わんやろ?恵子はなんか聞いてるか?」
お兄に聞かれ考えるけど、そう深いことなんて聞いたことがない。
「胡堂くんはなんか絵里子に似てるって、たっちゃんは決めたらまっしぐらやけどそれまでヘタレ、摩耶ちゃんは喜怒哀楽はっきりしたテンション高め?」
「どうゆう情報や?」
お兄が苦笑しながらいいけどそんなもんしかあたしには情報なんてない。
「ただ高校からの仲やし、恋人おるときも胡堂くんやたっちゃんで文句言われたくないって言ってた。胡堂くんや自分に恋人おるときは多少関わり方変えたりしても関係切ることはなかったみたい」
「かなり親密そうやな?」
「親密ってか、たぶんお互いが大事なんちゃう?絵里子利用するようなことはないと思うで?」
あたしが軽くそう言えばお兄は意外そうな顔であたしを見てくる、これでもあたしだってお兄が心配してることぐらいは予想はつくし考えた。
「恵子も少しは考えてたんですよ、ただ最後は絵里ちゃん守ればいいや。で終わってますけど」
のりの言葉にお兄の顔がなんと言っていいのかわからない物になる、のりも苦笑してるけど、あたしは間違ったことは言ってない。
お兄は持ち直すと「お前は簡単でいいな」と大きなため息を吐いて真面目な顔をした。
「正直これからのことはどうなるかわからん、もしあいつの友達がここで家族面倒見て下さいってなったらどうする気や?」
「それは」
「最初は何とかなってもいずれ無理に決まってる、食料や魔物との戦闘、おんぶに抱っこ望まれても俺らじゃ無理や」
「お義兄さんのいうとおりやと思いますよ」
「やからこそしっかりと考えなあかんと俺は思ってる、その時に恵子、お前や」
まっすぐにお兄に見られ、あたしは首を捻る。
「絵里子が望むからって許したらあかんで、俺らにこれ以上の面倒見るだけのキャパはない」
「それは他人見捨てるってこと?」
「俺かてそうやりたいわけじゃない、それでも魔物も殺せへんで、自分らを守れと要求しかせえへん人間を守ることなんてできるわけない」
お兄の顔は真剣で、横でのりが喉を鳴らしたのがわかった。
「特に絵里子はその存在が特別や、あの地下だけじゃなく薬学やらしても細工やらせてもその存在だけで拉致監禁で研究物、もしくは壊れるまで血を抜かれて作らされるやろう」
そこでお兄はあたしの表情に気付いたのか、苦笑して最悪な。と付け足した。
「それでも絵里子の存在を知る人間が増えたらそれだけ危険は増える、お前もあほちゃうねんからわかるやろ?」
「絵里子を利用する奴はあたしが倒せばいいんやろ?」
「お前“人”殺せるんか?」
その言葉にあたしは表情を変えるつもりはない、そんなあたしを見て驚いているのはお兄とのりだ。
「できるとかできんじゃない、必要性はあたしかて考えてる。どうせ魔物倒してるねん」
お兄は顔を歪めて苛立ったように乱暴に頭を掻き、大きな息を吐く。
「それとこれとは別問題やろ?」
「世界が変わってレベルができて、それこそ横暴な奴なんて増えるやろ?だからこそあたしはレベル誰よりも上げときたい」
「嫁、こない言ってるけどのり君は?」
突然話を振られて一瞬たじろいでるがのりの顔も真剣だ。
「恵子ほどの覚悟はまだ持てません、それでも俺も絵里ちゃん守りたいしその為にもレベル上げや籠城するための備蓄、できる限りのことはします」
「二人とも本気なんやな?最悪最低限でもいいんやで?二人の家庭守れる程度で」
「なにあほなこと言ってるん」
お兄はそう確認するから今度はあたしが苛々しそうだ。続けてお兄に文句を言おうとするより先にお兄が口を開いた。
「なら、俺らで神職目指そか」
は?お兄なんて言った?
「お、お義兄さんそれ目指してなれるもんでもないでしょ?」
「はっきり言って厳しいやろな、それでも絵里子守るのには最善の蜘蛛の糸や、可能性なくても目指さん理由がない」
「でもどうやってなるんよ?」
「絵里子の話しぶりやとその神さんは絵里子を今も観察してる可能性がある、あとは俺らが強く願って、興味引いてもらって、三階のボス倒してみるってとこか?」
不確定とお兄もわかりながら、それでもどこか軽い口調でお兄は笑う。蜘蛛の糸、上手いことを言うと思ったが褒めるのは嫌で絶対に伝える気はない。
「神さんに会える確証ないんやんな?」
「当たり前やん、でも俺らがボス行くとき絵里子ついて来るやろうからな」
それを見込んでのお兄の計画なんだろう。
だったらそれに乗ってやろう、珍しく兄らしく頼りがいあるところを見せたお兄のためにも、一人異質なものになってしまい本当は怯えてる妹のためにも。
「なら、明日からもうちょいハードにレベル上げしよか」
のりを見て言えば、なんとも言えない表情でも頷いてくれた。