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一章 ❹ ワタシとお説教

 今日は朝から受付が多かった。


 昨日四等星フォースに昇格したばかりで、勢いに乗る『オリオンズベルト』もだ。


 お昼前から夕方まではかなり時間もあり、受付済みの依頼書の整理、依頼の受付、報告書の纏めも行ってる。


 カラン♪


 ハンターさんにしては早いから、依頼かなって思ったら『オリオンズベルト』の面々だわ。


 何かしら…?雰囲気が重いわ。


 四等星フォース初めての依頼でやっちゃったのかな?


 まぁいいわ。優しく接してあげましょう!


「あの〜」


「はい。今日は早いんですね?」


「何かありました?」


 ここでいきなり『失敗しちゃいました?』とか聞かないのが思いやりです。


 分かってても、優しく接する事で受付嬢の株も上がるというもの!


「いや、何もないということはないんですけど…」


 そうそう。本当は言いたくないのよね。


 誰もが『依頼未達成です』なんて言いたくないものね。


 しかも、四等星フォース初の依頼が失敗だなんて。


 さて、ここで控え目に話を切り出していこうかな?


「とりあえず…依頼の確認を…」


「あ、それ終わったんです。」


「えっ!?ど…どういう事ですか?」


「はい。ではコレ…」


 既に用意してあったのか、さらりと依頼書を提示された。


「えっ…と……。終わってますね…。


 しかも…オーガ(魔化)!!?」


「はい…」


 えっ、えっ!?どういう事!?


 今朝送り出した時、確かオーガ3体の討伐だった様な…


 お、おかしいわ!?…そ、そうよ!こういう時こそ原本の確認よ!!


 ばっと、何時ものところに置いている依頼書のファイルを引っ張り出し、四等星フォース用の付箋を引き上げ、上から順に捲っていく。


 新しい依頼書程上に置いてあるのですぐに見つかった。


「えっと…今回の依頼は達成…そして特別手当が

 つきます!!」


 なっなんで!?今日四等星フォースに上がったばかりなのに…何か秘密が…


「本当ですかっ!あー良かった〜」


「やっぱり何かあったんですか!?」


「いや〜うちの姉上が武器を壊しちゃって…」


「えっ?それは…戦闘は大丈夫だったんですか?」


 戦闘中に武器が破損する。


 それは下手すると戦線崩壊する一大事のはず。


 大変危険な状況だったはず…。


 更に、魔化オーガとの戦闘…どんな状況かはわからないけど、全滅したかもわからない…


「…ん?どうされました?」


「ちょっと良いですか?」


「はい?」


「もっと!もっと危機意識を持ってください!!」


 何時もおっとりしているマルクさんがびっくりしている。


 それはそうだ。


 今まで『オリオンズベルト』に怒ったことなんかない。


 破竹の勢いでクエストを突破して来た。


 狩人ハンターとして優秀だった。


 でも、これからは違う。


 より質の高い危険と進んで遭遇しに行く。


 いつか、この若いパーティーから犠牲者が出るかも…。


 そんなのは嫌。


 だから怒らなくちゃ。


 このパーティーの手綱を握るこの子を。


「ご、御免なさい」


 マルク君は反射的に頭を下げている。


 数は少ないが軽食エリア、そしてオリオンズベルトの面々がびっくりしてる。


「私は…私は分かりません!」


「!?」


 マルク君は驚いてる。


狩人ハンターの皆さんが、どんな危険と戦っているか全く分かりません」


 マルク君は黙ってる。


 周囲はしんとして次の言葉を待っている。


「私はここで、みんなの帰りを待つ事しか出来ません」


「はい」


「昨日までそこで騒いでいたパーティーメンバーが、いきなり見えなくなる事もザラです」


「!!」


「あまりとやかく言いません。慎重に行動して…「御免なさい!!」!?」


 いつのまにか、マルク君の横にお姉ちゃんのレナちゃんがいて、頭を下げている。


「すみません。私の所為なんです!」


 ちょっと吃驚した。


「私がスキルを見誤ったばかりに…」


「そう…。レナちゃん。私は2人のお父さんを知ってるわ。」


「はい」


「お父さんも、結構仲間内から怒られてたの。前に出過ぎだって」


「仲間を助ける為に身を呈すのは格好の良いことかもしれない…」


 一呼吸置く。


「でも、貴方達パーティーは三人しかいないし貴方はガーダーなの。ガーダーが一番最初に倒れるようなことがあってはダメ。絶対よ!」


「はい…」


 ふぅ、お説教はこんなものかしら?


「私が調子に乗って、オーガ二体と魔化オーガを倒しちゃったのが原因なんです!本当に御免なさい!!」


「「「「「はっ?」」」」」


 ハンターズギルドホールにいた、全ての人が疑問符を発した。


 私も15の時から受付嬢を始めて、もう3年になる。


 でも、ガーダーがたった一人でそんなに倒せた事例を聞いたことが無い。


「ど、どんな事をしたらガーダーが、オーガ二体と魔化オーガを倒す事が出来るの!?」


「チームワークと!『がっ!』といって『どばっ!』っとやれば大丈夫です!」


 ダメだ…余りに抽象すぎて、もう何を言っているのかさっぱりわからないよ…。


 マルク君は俯きながら、顔の上半分を右手で抑えている。


 …一つだけ分かった事は、レナちゃんは天然だけど、ガーダーに有るまじき攻撃力を有しているという事だけ。


「マルク君…」


「はい…」


 マルク君は手の隙間からこちらを見た。


「苦労…するわね…」


「はい…」


「なんか…お説教して御免ね…」


「い、いえ…」


 その後、サクッと精算して、『オリオンズベルト』の面々はハンターズギルドを出て行った。


 ◆◇◆◇◆◇◆


「じゃぁ姉さんは今から、師匠のトコで良いんだよね?」


「うん」


 ハンターズギルドを出たすぐで立ち話。


「そして、明日はお休みにしよう。幾ら何でも働き過ぎだし」


「そぉ?」


「レナはスキルの副作用で、体力が馬鹿みたいに跳ね上がってるからわかんねーよ!」


「えぇ…確かにスキルの副作用はステータススターには反映されないっていうけど…」


「そこ辺りは不思議だよね。僕のスキル『魔人』はスキルスターには反映するのに…」


「まぁな…そこら辺は何故かわからん。


 で、話は元に戻るけど、一度武器のメンテやクラスアップ、


 クラス専用スキルの習得出来ねーか師匠んトコに行きたい。


 今日の件で、攻撃力不足な感じしたしな…」


「僕も師匠の所に行って、もっと多彩な魔術の

 勉強をしたい」


「私の場合、武具のメンテナンスや診療するごとに師匠と会うからね」


「と、言うわけで今日と明日は骨休めって事で!」


「じゃぁ姉さん、ユーゴ、ここで解散!!」


「「はーい」「おぅ」」


 ◆◇◆◇◆◇◆


 一人で歩く街の中は何か落ち着かないなぁ。


 いつも、マルクとユーゴが傍にいたからなー。


 と、考えつつ北東部の鍛治屋兼、武具屋兼、ガーダーの師匠のところへ歩いてる。


 北東部は生産系の人達が多く住んでいる地域だ。


 小さい頃から、お父さんに連れられて来た所為もあって、結構顔馴染みの人も多い。


「おっ、レナちゃん。今日はドルガンのとこかい?」


「うん。武器が壊れちゃって…」


「そうか、今日は朝から見かけたから、工房へ直接行ってみなー」


「有難うおじさーん」


 という簡単なやり取りと、挨拶を繰り返してドルガン師匠の鍛冶屋に辿り着いた。


 煉瓦造りの街並みにピッタリ合う二棟の家。


 片方の、中位のサイズの母屋が住居兼武具屋。


 離れの小屋が鍛冶屋だ。


 カーン。カーン。


 確かに工房から槌の音が響いてる。


 ムンティスの鍛治師匠の所に、新技術を学んでくると行って半月、漸く戻ってきた。


 その間の武具のメンテナンスは、師匠知合いの鍛冶屋さんを紹介してもらい頼んでた。


 けれど若干の違和感があって、師匠の腕を確認した。


 さて、直行で鍛治工房へ足を向け扉の前に立つ。


 母屋の玄関ドアは木造だけど、鍛冶屋の玄関ドア金属造りだ、


 何か意味があったんだけどもう忘れちゃった。


 さて鍛治をしている時は、音は殆ど聞こえないらしいのでちょっと強めにノックした。

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