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一章 ❹ ワタシとランクアップ後初クエスト②

後半です。

今回のワタスキ は心の描写とかを

オレスキより細かく書こうかと思っています。


つまり、何が言いたいかと言うと…

遅くなってごめんなさい。

「『散雷撃』!」


 ヴァヴァヴァヴァ!!!


 すかさず飛び出す私とユーゴ、案の上オーガは感電して動けない。


 こちらを見上げながらも、体の自由が利かず歯噛みするオーガ。


 流石は四等星フォースクラスの魔物だ。


「やぁぁぁぁ!!」


 しかしカウント中に集約した『力』を込めたモーニングスターが、斜め下から上に振り上げるような形で、まだ立ち上がれない一体のオーガの顔を吹き飛ばした。


 うん?


 吹き飛ばした?


 何故!?


 弱すぎる!!?


 これなら…いける!!


「はぁぁぁぁ!!!」


 横になっていたオーガに一歩で迫り、振り抜いて右肩の上にあるモーニングスターの鉄球を打ちおろす。


 グシャッ!!!!

 ドゴォ!!!!


 オーガの頭が潰れる音と、風穴の地面にモーニングスターの鉄球の直径以上の圧力が加わる音が同時に発生した。


「あ…あれれ?」


 体を起こし、モーニングスターを見詰めつつ、自分の力の向上に戸惑う…。


「姉さん!!よそ見しちゃダメだ!!!」


 マルクの絶叫が風穴内に木霊する。


 視線を前へ起き上がらせると、奥から現れたもう一体のオーガが特大の棍棒を振りかぶっていた。


 もう、このタイミングで回避は間に合わない。


 摺り足の重心移動で、半歩だけ右へ体をずらす。


 ずらしながら右腕のアイアンシールドへ力を集約しつつ振り上げる。


 一か八かのパリィに賭ける。


 ゴォッっという音と共に振り下ろされる特大の棍棒。


 少しだけ正中線をずらした状態で、全神経を研ぎ澄ませて合気をする。


 盾の師匠曰く、盾は合気だそうだ。


 どんな奴とでも気を合わせ、気を読み、気の流れを制する。


 それで全ての攻撃を盾で捌き、得物で打ち倒す。それが盾の生き様とまで教わった。


 死をも覚悟して尚生を求めると、人間の集中は時間を歪める。


 最大なはずの半歩が、更に半歩の半分。


 力の集約を、モーニングスターへも繋げるだけの心的余裕が生まれる。


 然も全力で且つスムーズだ。


 漸く特大の棍棒が、アイアンシールドへ到達する。


 振り上げたアイアンシールドに微細な『重み』を感じた。


 ここだ。


 夕焼けに染まる湖の、凪の水面に今、一雫の衝動が着水する。


 アイアンシールドは、その役目を果たしつつパリィではなく『受け流し』へ移行した。


 受けと言っても何グラムも有っただろうか?


 棍棒を巻き込みながら、右足を左足の後ろへ移動させる。


 すると体に回転が生まれ、滑らかに棍棒を地面へと誘導させた。


 今倒したモノよりも一回り大きいオーガ。


 体色も歪だ。


 そんなオーガが『御免なさい』と言わんがばかりに頭を下げている。


 勿論、逃すつもりは無い。


 勿論、止まるつもりも無い。


 そこへ、体の自然な動きの中で生まれた流れに乗って、左腕のモーニングスターが爆発でもしたかの様な唸りを上げる。


 次の瞬間モーニングスターの鉄球部が、オーガの右側頭部へ命中した。


 真実、頭は粉々だ。


 飛び散る頭部の肉片。


 壁に下手な芸術を塗りたくる。


 棍棒を手元に引き寄せようとする腕。


 何が起こったのかわからず、姿勢を戻そうとする体。


 数秒後、頭から次の指令がない事に気付いたのか、漸く動きを止めた。


「はぁっ、はぁっ、はぁーーーーー」


 終わった?


 しかしさっきの事があったのだ、警戒を緩めない。


 盾を前にして、首の可動域と視野範囲で周囲を見渡す。


 今度は完全に終わったみたいだ。


 ユーゴもオーガを一体仕留めている。


 そして気付いたのは


 マルクもユーゴも目を丸くして、こちらをジッと見つめている事だ。


 〜・〜・〜・〜・〜


 何…だ?


 今の姉さんの動きは尋常じゃない…。


 僕が発した言葉では間に合わなかった筈だ。


 全てにおいて異常だった。


 反応速度、盾の受け流し、モーニングスターによる攻撃。


 目ではわからないけど、あの破壊力なら恐らくスキル『剛力』による力の集約も行なっていた筈だ。


 流れる様にオーガを仕留めるための動きを紡いでいくさまは、その全てが残像の様に綺麗に僕の目に映った。


「姉さん…」


 声をかけようとした僕の横を影が通り過ぎる。


 ユーゴだ。


 ズンズンと、どこか怒っているかのような足取りで姉さんに近づいていく。


 姉さんはモーニングスターを腰のウェポンフックにかけ、ヘルムを脇に抱えている。


 そんな姉さんにユーゴは、ギリギリまで近づくと意を決して上体を逸らし、


 頭突きを見舞った。


「ん〜〜〜〜。」


 姉さんはかなり痛かったらしい。


 こちらからは見えないが、恐らくユーゴも痛いのだろう。


 額に手を当てて少し前傾姿勢になっている。


 痛みが落ち着いたのかユーゴは姉さんに視線を向け


「この、阿呆!戦闘中によそ見するやつがあるか!!」


 姉さんは泣きそうな子犬の様になりながら


「ご、ごめん…なさい」


「……ハァ〜」


 ユーゴは震える様な溜息を溜息をついた。


 ユーゴも姉さんが大切なのだ。


 だから怒らなくてはいけないのだ。


「取り敢えずあれだ、後片付けして比が高いうちにとっとと帰ろうぜ?」


 ユーゴはこっちを見ながら安堵の顔を見せた。


 〜・〜・〜・〜・〜


 正直、さっきのレナの動きは異常だった。


 今までのレナからは見て取れない動き…。


 レンジャーの師匠が言っていた世界と繋がるってやつなのかもしれない。


 参ったなぁ…あいつガーダーなんだけどなぁ。


 新たに追加支給された収納カードに、頭以外はほぼ無傷のオーガを収めていく。


 俺が担当したオウガも、首の頸動脈を切る勢いで太い首の半分以上を切った為、動ける様になった頃には出血多量で失血死した。


 ん?マルクが依頼書を見ながら小刻みに震えている。


「どうしたマルク?」


 そう言いつつマルクに近寄ると、レナもつられて寄ってきた。


「ん?」


「いま、姉さんが倒したのって…魔化オーガだ」


「うん?」


「だから、いま、姉さんが倒したのは魔化オーガだ」


「そんな訳ねーだろ?今のレナがどんなに頑張ったってあんなに木っ端微塵にはならねーよ」


 ユーゴは依頼書を訝る俺たち二人の目の前に突き付けてきた。


「あ……」


「いぃ……」


 そう、討伐魔物欄の『ゴブリン』『オーガ』の項目の下に『オーガ(魔化)』記載されていた。


 ちょ…魔化オーガって高位四等星フォース三等星サードあたりが相手にするんじゃないのか?


 レナの武器はモーニングスターだぞ?あり得ないだろ…。


 っと思って、レナの腰のウェポンフックに吊るしてあるモーニングスターを見ると、鋼鉄製のモーニングスターが反っていた。


 いや、鋼鉄が反るなんて…。どんだけ力込めたんだ…。


 頭が痛くなりそうなので一旦考えるのをやめ、取り敢えずマルクに提案する。


「お宝探して早く帰ろうぜ」


 〜・〜・〜・〜・〜


 魔化オーガが出てきた通路の先に、結構な量の金貨と武器が溜め込んであった。


 その中に、反ってしまった私のモーニングスターの代わりになる様な武器もあったけど、呪われている可能性もあったので街に帰り次第師匠の所に行く事が決定した。


 帰り道、と言ってもまだ昼をちょっと過ぎたあたりで、他のパーティーと何度かすれ違った。


 早すぎる帰還に依頼失敗か?と態度が漏らしていた。


 まぁ違うんだけど…。


 勿論、何もせずにただ歩いていた訳じゃない。


 三人で今日の反省会を行ないながらの帰路だ。


「ん〜やっぱりレナのアレはおかしい」


「僕もそう思う」


「でも…何も上がってなかったよ?」


「多分、そこじゃないんだと思う」


「どういう事?」


「ちょっと気になる事があるんだ…姉さん、取り敢えずスキルボードを僕たちにも見える様にして見せて?」


「うん」


 まだ街に到着していないので、経験値の分配はされていない。


 つまり、昨日のままのステータスだ…


「ユーゴ…ほらコレ…」


「っ!!はっ…はぁっ!!?」


「何何何!!?」


 マルクとユーゴの視線が痛い。


「ステータスのパーソナルスキル…読んでごらんよ…」


「へ?」


「いいからレナ、読め」


 ユーゴ…怒ってる?


「パーソナルスキル…『怪力』…」


 ふむ…。で?


 だめだこりゃ…という顔を二人はした。


「姉さん、姉さんが持ってたスキルは?」


「怪力」


「スキルランクは?」


「B」


「今のスキルランクは?」


「A……!!!?」


「気付いたか…」


「要するに、姉さんは似た様な名前でスキルレベルがそのままだったからスキルランクをスルーしてたんだよ」


 ゴン。


 ユーゴが頭を拳骨で殴る。


「いったーーーい」


「痛いじゃねーよ。俺ら危うく全滅する所だったんだぞ?」


 マルクに助けを求めてもマルクはそっぽを向いている。


 今回ばかりは助けてくれないらしい。


 10分程お説教を喰らうと街が見えてきた。


「姉さん。スキル確認の時は僕かユーゴに見せる事。いいね?」


「は、はぁい」


 しょんぼり…。


「しかし、マルクよく気付いたな?」


「ん?小さい頃父さんから聞いたんだよ」


「何て?」


「俺のスキルでこんな事があってなーってさ。


 状況が似てたからそう思ったらそうだった」


「成る程…親父さんならありそうだな…。


 そしてその血を120%受け継いだんだな…」


 目を線にしてこっちを睨んでくるユーゴ。


「あーあれだ、今から言うのは独り言だ…忘れてもらって構わない」


 私もマルクも急に前に出て、先を行くユーゴの背中を見つめた。


「あのな、俺はお前らが好きだ。


 俺は孤児だし拾われた時なんか孤児院に一人だけだった。


 淋しかった。


 毎日、広い寝室に一人だけ寝かされてな。


 確かに飢えは無かった。


 けれど、凍える様に淋しかった。


 お前らが、修道院に遊びにきた。


 レナが手をとって、マルクが怯ながらも付いてきた。


 それが俺にどれだけ光をもたらしたかわからない。


 その日から変わった。


 明日に希望が持てる様になった。


 次、いつ遊びに来るか待遠しくなった。


 俺は、神様に救われたんじゃ無い。


 いや、神様が引き合わせたのかもしれない…。


 それでも俺は…お前達に救われたと思ってる。


 だから俺は、お前達を無くしたくない。


 だから頼むよ。俺より先に死なないでくれ」


 最後の方は声が震えていた。


 泣いているのかもしれない。


 でも私は、私達は、街に着くまでユーゴの横にさえ立つ事が出来なかった。

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