一章 ❶ ワタシと始まり
どーも低脳イルカです。
オレスキの世界の別作品です。
面白かったら次も読んでください。
「ひぃぃぃぃぃっ!」
カァン!
「きゃぁぁぁっ!」
カァン!
「マルク」
「何?ユーゴ」
「いぃぃぃっやぁぁぁーーー!」
カァン!
「毎度の事ながら…大丈夫なんか?アレ?」
カァン!
「多分、大丈夫。それより集中して」
マルクの顳顬に青筋が立っている。
「わぁかってるけどさぁ……」
なんかお前が怖いんだ。俺はそう思った。
その時、レナが一身に受け捌いている攻撃に、綻びが生じたのをパーティーの参謀でリーダーのマルクは見逃さなかった。
「姉さん!ユーゴ!行くよ!!」
「「うん!」「おぅ!」」
「ファイアスプラッシュ!」
「ハァッ!」
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
怖い怖い怖い怖い怖い!!
何時も思う。本当はいつも足はガクガクだ。
出来れば早くお家に帰りたい。
逃げ出したい。けど家計の為に少しでも稼がなきゃ!
でも顔付きが嫌過ぎる!!
ヒィィィィ!!
んっ!?そこっ!!
上手くホブゴブリンの動きをコントロールして二体の動きをクロスさせた。慌てるゴブリンロード。
そして間髪入れずに体を横にスライドさせて道を作る!
その瞬間、最前衛の私の真横をマルクの魔法が通り過ぎ、追いつくような速さでシミターを持ったユーゴが駆ける。
火属炎系拡散魔法のファイアスプラッシュは、今相手にしているホブゴブリンなど小鬼系モンスターに有効なダメージ手段だ。
小鬼といっても種族進化しているホブゴブリンは、人間と同じくらいの体格だ。
体格はそのままで力や統率に長けたのがゴブリンロードだ。
ゴブリンに共通するのは、栄養失調のような緑色の体色、眉はなく、眼は大きく、鼻は低く潰れていて、頰まで裂けている口だ。
しかも、村に現れては私達女性を攫い強姦して、種族を維持繁栄させると言う女性共通の敵だ。
私の容姿は女としては恵まれているんだろう。
胸は結構あってお尻も大きい。
括れもちゃんとあって顔も悪くない…はず。
でも、プレートアーマーにアイアンシールド、モーニングスターを装備しているから、側から見たら男か女か見分けがつかない。
けれど…恐らく匂いで嗅ぎ分けているのだろう、私を『女』だと見抜いていた。
だって目付きがギラギラしていたし、よ、涎が…
そんな私がハンターをやっている理由は姉妹だ。
私は八人姉妹の長女で下に弟、妹、妹、弟、弟、妹、弟と続く。
父は現役のハンター、母は内職などで頑張っていて姉妹達も手伝いはする。
しかし流石に家計を支えるだけの能力はなく、父譲りのスキル『剛力』を通常継受させた私と、母の『魔導』を覚醒継受させた双子の弟のマルクは、ハイリスクハイリターンのハンターを選んだ。
以来、幼馴染のユーゴと三人でパーティを組んで、今やドーマの街の四等星候補だ。
あの後、きっちり最期のゴブリンロードとホブゴブリン二体を仕留めた後、人心地付いていた。
統率すべき軍団のいないゴブリンロードは、単なる力の上がったホブゴブリンでしか無い。
私達の前ではもう赤子の手を捻るようなものだ。
そうして目の前には、体が焼かれ頸動脈ごと首の半分まで裂かれていて、出血多量で絶命しているホブゴブリンと、頭部が半分陥没…と言うか抉られているゴブリンロードの死体が転がっている。
そんな中、私はヘルムを置いて水筒の水を口にしている。
「しっかし、俺らも強くなったなぁ」
「うん。最初の頃なんかもぅ…」
「姉さんがアレコレやしてくれてこっちはもうてんやわんやだったよ」
「あーーー聞こえないーい聞こえなーい」
「今思えば酷かったよなぁ…ゴブリンの群に特攻するわ、スライムの巣に特攻するわ、ジャイアントスパイダーの巣に引っかかるわ…」
「「よく姉さん「レナ」死ななかったよねぇ…」」
二人ともハモって遠い目してる…。
た、確かに〜色々やらかしましたけど〜。
でも何か一つくらいは良いことが…。
「ほら、ハーピーの群に襲われてた商人がいてさ、レナ頑張って助けに割って入ったじゃん。」
おっやっぱりあった!
「ユーゴ…その後姉さんハーピーの袋叩きにあって僕とユーゴで追い払ったの忘れた?」
「あっ…」
「空中にいるハーピーに手が届かずに、石投げて迎撃しても無理でしょ」
デ、デスヨネー。ワカッテタ、ワカッテタ…。
「まぁ、サポートのお陰で強くなれたと言えば間違いではない」
「マルク〜今後もおねーちゃんを宜しく〜」
「くっつくな!」
「ハイハイお熱いこって。で、いま気配探知したけどもうゴブリン供は居ないみたいだけど?」
「どうする、ユーゴ?」
「んー、そうだね…」
ユーゴはバックの中から手配書を取り出し、討伐数の確認を行っている。
現在の依頼書は、依頼対象や既討伐、採集対象の魔素量と魔素種を認識し依頼書に反映させる最新式だ。
更に、倒した魔物の経験値を蓄え配分させる機能も持つ。
まぁ、そりゃ〜一々魔物の耳や鼻を確認してたんじゃ何処にソレを捨てるんだって話になるよね。
今回の依頼は「成熟したゴブリンの巣の排除」だ。
「規定数以上には達してるし、ロード、ホブゴブリン、シャーマンも今回特に目ぼしい装備ももなかった…ユーゴ、捕まえられてる人いるかな?」
「んんー」
ユーゴはすぐさま目を薄くさせて、眉間に人差し指を当てて探知をしている。
「奥の…隠し部屋か?人の気配を感じる」
「じゃぁ、その人達を救出してから街に戻ろう」
「「うん!」「おぅ!」」
ヘルムを被る。盾を構えモーニングスターをいつでも振れるように気を引き締めて、先頭に立つ。
前方を視認しつつ、中衛のユーゴの探知を当てにしながら前方からの全ての攻撃を防ぎ、後ろへ逸らさない。
ガーダー、それが私が選んだ役割だ。
殆どのパーティーに一人いて地味に黙々と攻撃を裁く。
しかし、盾だけにならずきっちりダメージを与えていく。
ガーダーの師匠の言葉だ。
私はハンターズギルドのマイスター制度を利用し、お父さんの伝手を頼って名のあるガーダーに師事した。
盾が同時に武器になる。盾術は奥が深い。
基本動作は受け、弾き、引き、逸らし、いなし、叩き、突き、突進の八つだ。
これを頭でなく、体が自然に反応するまで修行時代を含めて二年かかった。
勿論その間も遊んではいられない。
必死で実践し、反省し、絞られた。
このサイクルは今も体に刻み込まれている。
この装備だってそう。全身鎧はかなりの高額だ。
でも、パーティーの要である私に、二人はかなりの負担をしてくれた。
それに答え、依頼を受けれるようになってから半年で十分に前衛をこなせた。
そこからは快進撃だった。
レア度B『剛力』のパーソナルスキルのレベルが一つ上がる度、敵の攻撃を容易く弾き返せる様にもなった。
今迄からかっていた年上で格上のハンター達に、一気に肩を並べるところまで来たんだ。
ここまで来て、つまづいてはいられない。
四等星からの実入りは五等星、ましてや六等星とは別格だ。
うちは三人と少数精鋭だからまだマシだけど、四人五人とパーティーメンバーが多くなるたびに経費も嵩む。
そこへ行くと、一人当たりの負担は増えるが経費に関しては、十分余裕を持ってハントを進めることが出来、負担の分成長も早い。
「ここだ」
洞窟中央付近の広場から奥の少し下がった所に、十人くらいが余裕で寝れる程の広さの空洞があった。
「何にもなさそうだけど?」
「姉さん警戒、ユーゴ?」
「おぅ」
ユーゴは壁を丹念に触りだした。
耳を当てたり、手でコンコンとノックしたり。
その間、袋小路になった今まで来た道を警戒した。
マルクは攻撃魔法を待機させながら、私とユーゴの中間の壁際に立って両方を気にしている。
「レナ、ここ。ここをモーニングスターで殴れ」
と言いつつチョークで丸を描く。
「わかった!軽くやるよ?」
「そだな」
素早く移動し、立ち位置をユーゴと変わる。
構えて力を集中させる。まぁ10%ってところかな。
「んー…ハッ!」
ドゴッ!
崩れ…ない!?
「んー」
しくじったかな?と言う顔をしているユーゴ。
でも、私はユーゴの探知を信じてる。
「良いよ、ユーゴ。本気で入れる」
「マジで?」
「うん」
「じゃぁ僕がバックアップするよ」
「どうすんの?」
ユーゴは、通路と隠し通路に対して体を半身にして、両方を気にしながらマルクと話す。
「姉さんが壁を壊した直後に、向う側に壁を作る。それで向う側の被害を抑える」
「そういうことか…それならどうぞ。カウントはオレが取る」
「いい、マルク?」
「うん。姉さん」
私は左足を引き、意識的に『剛力』のスキルを解放し、集中を発現させながら身体中から左腕、左腕からモーニングスターへ力を注ぐ。
斜め後ろに立つマルクは『魔人』の吸魔を発現させ、急速に大気中の魔力を右腕の杖、テンマンズワンドの先端に集中させる。
「カウント始めるよ?3・2・1・ゴー!!」
「ハァァッ!!」
ドゴッ!!!!!!
「アース・ウォール!」
壁が崩れた…と言うより破壊した。土壁とその強化を行なっていたらしい。この手応えなら30%程の集中で良かったかも。
ちゃんと飛び散った壁の破片を、アース・ウォールが受け止めてる。
多分一番最初に戦ったゴブリンシャーマンが使っていたんだろう。
アレはちょっと可哀想だったな。
マルク考案の魔法『スリーピングフォレスト』で、洞窟中のゴブリンというゴブリンを一気に眠らせて、一匹ずつ確実に仕留めていたところ、異変に勘付いたゴブリンシャーマンが飛び出してきたのだ。
勿論、ユーゴの『探知』で感知されていて、大広間へ通じる道から飛び出た所を、脇に潜んでいた私が殴りつけた。
一体という事と、先制攻撃が許される状況だった為、『剛力』のスキルをふんだんに使い殴りつけた。
当たりどころが悪く悲鳴を上げさせた為、ゴブリンロードや、数体のホブゴブリンが起きてくる結果になってしまったが、数秒後ゴブリンシャーマンは動かなくなっていた。
そりゃそうだ、右肩口から腹部まで削り取られていたんだから。
剛力って怖い…と言うか、モーニングスターの鉄球部に何か別の力が働いているんじゃ無いかとも思う。
時間経過でアース・ウォールが崩れると中には灯りが灯っていた。
盾を体の前に起き、用心しながら中に踏み入ると、すえた匂いと虚ろな目をした薄着の女性が三人。
見える素肌に青アザが無数に有り、髪も脂でギトギト。
失語症に陥っているのか、「あ」と「う」しか話せない女性もいる。
直ぐにマルクが、小刻みに震える女性達に回復魔法を掛けて、その暖かさに女性達は漸く涙が溢れた。
また、数日内に生まれたであろうゴブリンの赤ん坊が一体。更に奥には骸骨が散乱していて宝物や金貨もそこそこ散乱していた。
取り敢えず、女性3人を毛布で包み、外に待機させていた馬車に乗せて先に帰させた。
一人が頻りに中を伺っていたが、私が首を振って諦めさせた。
すると、馬車の中から嗚咽が聞こえ始め、御者の方が帽子を深くかぶり直した。
恐らく女性はあのゴブリンの母親何だろう。
例え何であれ『母』の気持ちが揺すって来るんだろう…。
私も女だ。いつか子供が産まれてその子供を手放さなくてはならなくなったら同じ気持ちになるんだろう。
でも、『ゴブリン』を生かしておく訳にもいかない。
そもそも凶暴で粗野、規律はあるんだろうけど寛容が無くて残忍だ。
特に多種族の男は殺し、女は犯す。用がなくなれば喰らう。
度し難い。
それは三人の中に、共通認識として有ると思ってる。
伊達に三年(半実践二年、修行一年)も戦い抜いたわけではないんだ。
見えないけれど、最初の内は甘さから沢山の傷を負った。
私も、マルクも、ユーゴもだ。
マルクは静かだが、ユーゴは洞窟の入り口を爪先で蹴っている。
外面的な傷は、マルクが得意とする木属雷と風の同大属合一大治癒魔法の『風雷の調律』で治してしまう。
本当に出来た弟だ。お姉ちゃんは嬉しいよ。
でも、心の傷は時でしか癒せない。
さて、湿っぽくなったが一度中に戻り宝物をカードに収納し、白い粉を洞窟中に振りまくる。
コレもマルクの指示だ。
果てさて、うちの出来た弟は一体何を始めるつもりなんでしょう?
「じゃぁ…外に出ようか」
「おぅ」
「うん」
「マルク…一体何すんだ?」
「んー姉さんもユーゴも、入口の正面に立たずに脇に逸れて離れてくれる?」
「マルク?手に持ってるそれ何?」
「銅線」
「そんなもの何に使うの?」
「んー。見といて」
そう言うと、強めの風魔法を洞窟内に送り込んだ後、銅線を握って自身も離れる。
「姉さん、ユーゴ耳抑えてて」
「「うん?」」
一瞬銅線に雷が走った気がした。
ドォォォォォォォン!!!!!!!!
「「…………………」」
「おー凄いなぁ」
「じゃ、じゃ無いわヨォォォォ!!!
あんた一体何やったノォォォ!!?」
「えっと…実験?」
「実験!?って何ノォ?」
「爆破消毒」
「はっ…?爆破消毒っじゃ無いわヨォォ!
見て!ユーゴの目が線よ!!!」
「あ〜ユーゴごめんね」
「緩い!緩すぎよ!!ユーゴ!あんたもなんか言いなさい!!」
「俺…お家…帰りたい……」
「ユーゴーォォォォォォ!!!」
この後、依頼達成の報告が終わり我らドーマの期待の星オリオンズ・ベルトは無事(?)四等星にランクアップした。
一番キレていたのは、よく出来た我が弟だった。
設定やらなんやら
以下三人のステータス
マルク:オリオンズ・ベルト
クラス:マジシャン
HP:★★☆☆☆ MP:★★★★☆
体力:★★☆☆☆ 魔力:★★★★★
反射:★★☆☆☆ 技量:★★★★☆
スキル:
魔法:★★★★☆ 魔操:★★★★☆
火術:★★★☆☆ 木術:★★★★☆
水術:★★★☆☆ 金術:★★☆☆☆
土術:★★☆☆☆ 陽術:★★☆☆☆
陰術:★★★☆☆
パーソナルスキル:
魔人:★★★☆☆
スキル『魔人』ランクS
LV1:魔道
LV2:魔力向上
LV3:吸魔
LV4:???
LV5:???
右腕:テンマンズワンド
左腕:ガーダー
背部:レザーマント
頭部:マジシャンズハット
胸部:マジシャンズローブ
脚部:レザーブーツ
アクセサリ:深淵の指輪
〜・〜・〜・〜・〜・〜
ユーゴ:オリオンズ・ベルト
クラス:レンジャー
HP:★★★☆☆ MP:★★☆☆☆
体力:★★★☆☆ 魔力:★★☆☆☆
反射:★★★★★ 技量:★★★★☆
スキル:
探知:★★★★★ 解除:★★★☆☆
小剣:★★★☆☆ 中剣:★★★☆☆
双剣:★★★☆☆ 射撃:★★★☆☆
パーソナルスキル
器用:★★★★★
スキル『器用』ランクC
LV1:上手
LV2:複数スキルの成長促進
LV3:効率
LV4:複数スキルの成長促進
LV5:滑らか
右腕:シミター
左腕:(シミター)
背部:レザーマント(クロスボウ)
頭部:レザーヘルム
胸部:レザーアーマー
脚部:レザーブーツ
アクセサリ:深夜の指輪
〜・〜・〜・〜・〜・〜
レナ:オリオンズ・ベルト
クラス:ガーダー
HP:★★★★★ MP:★★☆☆☆
体力:★★★★☆ 魔力:★★☆☆☆
反射:★★★★☆ 技量:★★★☆☆
スキル:
盾術:★★★★☆ 戦棍:★★★★☆
パーソナルスキル
剛力:★★★★★
スキル『剛力』ランクB
LV1:集中
LV2:全体的な身体能力の向上
LV3:発現力高速化
LV4:全体的な身体能力の更なる向上
LV5:理不尽な力
右腕:アイアンシールド(中盾)
左腕:モーニングスター
背部:レザーマント
頭部:プレートアーマー
胸部:プレートアーマー
脚部:プレートアーマー
アクセサリ:黒豹の指輪
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
マルクの使用魔術
◉ファイアスプラッシュ
(火属炎単一魔術)
炎を弾けさせ、複数の敵を炎上、火傷させる。
◉スリーピングフォレスト
(木属風+陰属冥の混合魔術)
強力な魔法の眠りの風を広範囲に拡散。密閉空間では効果が拡大。
◉風雷の調律
(木属雷と木属風の同大属合一大治癒魔術)
風の癒しと回復促進の混合魔術。風で傷を癒しつつ雷で回復を促進させる、外と内の両方から
癒す事で、傷が残りにくく治りも早い。