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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幸運の寿命

作者: 三崎清光

 私は昔から運が良かった。

 幼少期では、鬼ごっこの鬼を決めるじゃんけんで負けたことのない程度だったが、学生時代は選択問題を適当に解いても正解し、好きなアーティストのライブもすべて当選するほど運気が高かった。そのころになると自分の運の強さを自覚していたためか、努力もせず運に頼るような生活をしていた。

 そんな私が大学を卒業し就職した数年後、運気のピークを迎えた。一口だけ買った宝くじが高額当選したのだ。


「今まで運良かったし、もしかしたら・・・・・・」


と、軽い気持ちで買った宝くじが当選した時は、一瞬で大金を手に入れた優越感とほんの少しの恐怖を覚えた。なぜ恐怖を感じたかはまだ分からなかった。

 ある日、いつものように運よく商談を成功に終え気持ちよく帰宅した。床に就こうとしたその時、一通のメールが届いた。


「なんだこれ、幸運調査学会? 宗教の勧誘か?」


件名には、あなたの幸運度測ってみませんか? などと宗教じみたことが書いてある。どこでアドレスを知ったのか疑問に思いながらも、気に留めずスマホを机に置き床に就いた。

 その後、毎日のように同じメールが届くようになった。初めは、毎日同じ時間に届くメールを気味悪がっていたが、だんだん慣れていき、全く気にしなくなっていった。

 

 メールが届いてから何日経っただろうか、いつもの変わらない朝、ニュースのある特集が目についた。テレビの中ではいかにもな学者が力説をしていた。


「このように、人が一生のうちに持てる運気は決まっているのです。大体の人は使い切る前に寿命を迎えてしまうのですが、ごく稀に使い切ることができる人がいるのです。使い切るということは・・・・・・どうなるかわかりますね? そういった人たちのために我々幸運調」ピッ


「もうこんな時間か、仕事行かなきゃな」


途中でテレビを切り、急いで家を出て職場へ向かった。

 運よくバスが一度も停まることなく最寄りのバス停まで行きついたこともあり無事間に合った。しかし、職場についてすぐスマホを家に忘れていることに気づいた。急いでいたとはいえ、今まで忘れ物などしたことがなかった私はおかしいと思いながらも自分のデスクに向かった。

 仕事を終え、家に帰ると靴下に穴が開いているのを見つけた。


「おかしいな、買ったばかりなのに・・・・・・」


穴の開いた靴下をゴミ袋に入れ、スマホを確認してみると例のメールが届いていた。いつもと違う時間に届いているメール。こんなこともあるか、とスマホを置こうとしたとき、今朝見たニュースで胡散臭い学者が言っていた言葉が頭をよぎった。


「まさかな・・・・・・」


妙に早まる鼓動を押さえつけるように、ごくり、と息をのんで恐る恐るメールを開くと、


「あなたの幸運度、残り5%」


軽快な音楽とともに、くじ引きを引いたような映像が流れ、この文字が浮き出てきた。

くだらない。やはり迷惑メールの類だったのだろう。そう自分に言い聞かせ眠りについた。


 翌朝、職場へ向かう途中雨が降ってきた。予報外れの雨だ。バス停まではまだ距離がある。運よくコンビニが近くにあったのでそこで傘を買うことにした。コンビニを出て傘を差そうとした瞬間、スマホにメールが届いた。そこには、


「あなたの幸運度、残り1%」


一瞬で血の気が引いていくのを感じた。以前感じたことのあるような恐怖感に襲われ、傘を投げ捨てて走り出した。得体の知れない何かに追いかけられているような気がして。

気が付くと雨は止んでいて、足を止め顔を上げると、そこには赤に変わった信号機とその奥に見たこともないほど綺麗な虹が見えていた。直後、横からの強い衝撃を受け、眩む意識の中でスマホから通知音が聞こえた気がした。


 

 

 

ありがとうございました。

良かった点や悪かった点をコメントしていただけると幸いです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい範囲の字数でうまくまとまってると思いました。 面白かったです。
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