番外編 アルム
この話は、龍が異世界へと飛ばされる前の、異世界でのお話。
小説でも登場している、アルムの日常風景を描いたものです。
この話の中に重要な情報もあるかも...?
俺はアルム。10年も前にここに飛ばされてきた。
もと軍人だ。軍では部隊の隊長をしていた。
10年前この世界に飛んでくる前は戦争で俺は敗れ
殺された。しかし、その瞬間視界が歪みブラックアウトした。
気づくとこの世界にいた。10年前俺が飛んで来た頃は
この世界には7人の人間しかいなかった。他には
街が有るだけだった。そして、飛ばされた時に
言われた言葉、
〈この世界で勝利し続けろ。1000勝した者に、願いを叶える〉
に従い戦っている。
まぁ、俺はもと軍人なせいか能力値では全ての能力が
すば抜けていた、ガランの爺さんも最初の7人の1人だ。
最初の内は7人の中で決闘の真似事をしていた。
やがて、この世界は人口が増えていき今の現状にいたる。
そして俺はこの世界をより安全で面白いものにするために
戦い続けている。
「ふぁ、眠いな...」
また、おかしな思い出を思い出しちまう。今は昔とは違う、
セリーヌやギルドのメンバー達、守るものができた。
昔のような戦い方では通用しない。守れない。
まぁそんなことはどうでもいいんだよ。
今日は街に出てみるか...
◆街
最近じゃぁこの世界も随分と住みやすくなった。
街を見わたしゃ、どこもかしこも人で込み合っている。
「お、アルムじゃねーか、ウチよってけよ!」
「すまん、今は用事があるまた今度な。」
そう、今日はセリーヌのために何か買ってやるつもりで
街まで足を運んだんだ。セリーヌはこの世界で唯一信頼でき
安心しきれる奴だ。ギルドの管理はほどんどセリーヌがしている。
セリーヌも7人の中の1人だった。まだ10歳そこらのガキでも
無差別にこの世界に飛ばしているのか、という怒りがわいた。
まぁそんなセリーヌにたまには恩返しの1つや2つでもしてやらにゃ
拗ねちまうからな。拗ねるとアイツは面倒だ...
「しっかし、女の興味あるもんなんてわかんねぇぞ...」
無計画に出てきちまった。まぁ歩いてりゃなんか見つかるだろ。
セリーヌは基本的に武器や防具しかねだらないやつだ...
好みなんぞ分かるわけがない。
10年一緒にいても分からん奴だ。隠し事が得意らしい。
とりあえずは知り合いの店を当たるとするか...
まずは、っと。
化粧品...アイツは持ってるから駄目だ...
花...性にあわん。
となるとやっぱ武器...
やっぱり俺にゃぁ戦闘の物しか浮かばない。
ガランの爺さんのとこにでも行くか。
◆ガランの工房
「爺さん、今良いか?」
この爺さんは正直苦手だ、俺をいつもバケモノ扱い
しやがる。しかし、鍛冶の腕は一流だ、向こうでは
昔、武器を作っていたらしい。今、頼んでいる俺の武器も
着々と出来上がっているはずだ。
「おお、アルムか、よう来たな。今回はなんの用じゃ?
防具もこの際更新するかの?そんな薄っぺらい、装備じゃ
のうて、鉄をつけろ鉄を。」
「うるせぇよ、俺はこの装備が気に入ってんだ、口出し
すんじゃねえ、それに今日は俺の用事じゃねぇし。セリーヌ
が使えるような武器は無いか?できれば短剣が良いんだが。」
「セリーヌの嬢ちゃんに合う武器?どれ、そこの棚に女性
用の短剣ならあるが...」
ここの棚か.....あんまりアイツに合いそうな物は無いな。
「爺さん、できれば細工は少なめだができるだけ綺麗なもんで
要求筋力値が低めのないか?金はいくらでも払う。」
「金はいくら積んでも変わらんワイ。そうじゃな、
これなんか、どうじゃ?太さもちょうど良かろう?」
ガランが差し出したのは確かに綺麗で太すぎずそれでいて、
申し分ない強さの物だった。
「良いじゃねえか、これいくらだ?」
「50万リオンじゃ。」
「かなりとってんじゃねぇか...」
まぁいい、いくらでも払ってやるさ。ギルドに帰ったら
すぐに渡してやろう。
◆剣の旅人、ギルド館
「セリーヌ、ちょっと良いか?」
「なあに、先生?あらたまっちゃって。」
「その、なんだ、普段からお前には感謝してる。
だからこれは感謝の証だ。俺にはお前の好み
は分からん。やはりこういう物しか買えん。」
短剣を差し出すとセリーヌは驚いたような顔をしながら
受け取った。
「先生、これ、私に?」
「まぁ、おう。」
「嬉しい!、ありがとっせんせいっ」
そう言ってセリーヌは満開の笑顔を見せている。
コイツのこの顔だけは昔からかわらん、この顔を見るために
この先、見守って行くのも悪くないかもな...
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
アルム、おバカなのかカッコいいのか分かりませんね。
でもそんなアルムが好きなんです。
次回は、龍のお話の続きを書いていきます。
またこのようなお話を書いてほしい方は言ってください。
感想お待ちしております。