表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

7

続きです!

その後、少年の怪我に気が付いたエイダンさんはすぐに治療してくれた。イケメンで執事長の上に医療にも心得があるって一体エイダンさんは何者なんだろうか。


それから、なんだかんだと慌ただしくなり執事見習いを雇うという事はまた今度...と、なった瞬間────


「あ、あの!!」


先程まで俯いていた少年が、声をあげる。

その声に私達の動きはピタリと止まった。エイダンさんは驚きに顔を染める。おそらく、彼がこんなに大きな声を出したのは初めてなんだろう。

少年は今更自身の声の大きさに恥ずかしげになりながらも、下を向かず私を見据える。


「...ぼ、僕を、雇ってもらえませんか!!そ、その子の...執事として!」


その言葉に吃驚したのは私だ。

え?なんで?...もしかして弁償するって話の事で...?それで自分で働いて稼ぐって事?いらないって言ったのに!

私は断るため口を開こうとした瞬間、お父様がそれを遮った。


「君に、ウチの子を任せる事ができると?」


ゾワリと、まるで身体が圧迫されるようなその雰囲気に私はお父様を見上げる。

無表情に少年を見つめ、その答え以外応えさせないというようなオーラが背後に漂う。

私に怒る時のお父様とは違う、冷徹なお父様に私は顔は蒼白となった。そんな私の手を、お母様は大丈夫というように手を握る。

お母様の暖かな手で、心は少し落ち着いた。


少年の方は、手を震わせながらもお父様の目からは逸らさなかった。


「...確かに、さっきと今ではご信用できないとお思いですが...初めてだったんです」

「ほう?」

「...初めて、こんな僕にも優しくしてくれて、初めて、彼女の暖かな手の平で触れて...」


「初めてっ、誰かを守りたいとっ、...彼女の傍でっ、守りたいと思ったんです!」


長い銀の前髪から覗く、サファイアの様な瞳で力強くまっすぐにお父様と対峙する少年は、なぜだかとても逞しくみえた。

少年は更に「お願いします!」と腰を曲げ勢い良く頭を下げる。まるでお父様がそれを許すまで頭を上げないとでもいうように。

その様子に、お父様の雰囲気はフッと柔らかくなった。


「...顔を上げてくれ」

「そ、それはっ、!その、僕はっ!!」


「...そのままじゃ、ウチの子を任せられないだろう?あと荷物を持っておいで。住み込みで働かせようか」


その言葉に少年はバッと顔をあげ、泣き出しそうな顔で「あ、ありがとうございますっ!」と声を上げた。

それを見ていたエイダンさんはホッとした様に微笑み、お母様はうんうん、と頷く。どうやらこういうのが好きみたいだ。お母様、そういう感動系のが好きですもんね。


...さて。なんか勝手に進ませているようだが、私は彼を断ろうとしたんですけど?なんで執事になることになってんの?お父様?私に選ばせるというのは?


私のジロリとした目線にお父様は一瞬震え、私を振り返る。

少年はキラキラとした表情で私を見つめる。まるで飼い主を待つ犬のようだ。


「あ、アナベルは、どうだ?この少年、見込みはありそうだぞ...?」


勝手に決めた事に罪悪感があるのか、今更ながらに私に確認をとるお父様。くっそ、お父様だけだったらまだしもこんな純粋そうな少年に「無理です」なんて言えないっ!!

私はお父様を睨むと、すぐに少年に近寄った。

ちなみにその直後、お父様はお母様に泣きついた。


「...」

「あ、あの、お嬢様...?」


もういいよ。これから良くしていけばいいし、なによりこんな私を守りたいなんて言ってくれる人はおそらく少ないだろう。そうだよ、うん。あの執事攻略キャラを回避してくれるんだよ?なら執事にした方がなにかと得するしね。


「アナベル・マーティンです。これからよろしくおねがいいたしますわ」

「はっはい!こちらこそ、お嬢様をお守りできる様に最善を尽くします!!!」


私は彼に名を告げて、淑女のように礼をすると彼もそれを習って礼を返した。うんうん、執事見習いなだけあってマナーはちゃんと出来るわね。

あ、そういえば...


「なまえをきいてなかったわ、なんていうの?」

「あ、はい。自分はディランと申します!」


ん...?


「でぃ、『ディラン』...?」

「はい、そうですが...なにか問題でも?」


────あり過ぎる!!!!!


まって!え!?ディラン!!!?あの攻略キャラの!!?

私はゲームの中の『ディラン』を思い浮かべる。

そうそう、確か美しい銀色の髪に宝石のようなサファイア色の瞳...おや???

すぐに目の前の少年を見る。

サラリとした銀色の髪に、長い前髪から覗く美しいサファイア色の瞳...なんで分からなかったのだろう、彼の執事服にはあの白い宝石(ジュエル)が飾られてあった。


「うそでしょーー!!!!?」

「お、お嬢様!!?お嬢様ー!?」



あぁ、神様。あなたって残酷だわ。

まさか、少年が攻略キャラの『ディラン』だったなんて...。


その後の記憶はない。気が付いたら自宅の部屋でディランと共に伯爵令嬢としてのお勉強をしていた。



どうしてこうなった。


ようやくディランを出せましたー。今回はエイダンさんの登場は少なかったですね(笑)!

まだまだ出すので楽しみにしていてください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ