表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

5

続きです!!

お母様から出掛けると言い渡された私は、すぐに使用人達に外出用の服を用意してもらいお母様が待つであろう玄関に急いだ。

すると、そこには何故かお父様もお姿があった。


「おかあさま!おとうさま!」

「アナベル、そんなに急がなくてもよかったのに...」

「そうだぞ。病み上がりなんだからゆっくりでも良かったんだ」


二人は優しく私に声を掛ける。

ううむ、こうして見るとゲームの『アナベル』はなぜあんなに捻くれてしまったのだろう...。お母様もお父様もこんなにお優しいのに。


そうこうしているうちに、馬車の準備が出来たらしい。珍しく家族団欒でお出掛けだ。

伯爵家ということもあって、高価な馬車はあまり揺れない。

私の横にはお母様、目の前に座っているのはお父様だ。


「おとうさまもおかあさまにいわれておでかけ?」


舌足らずにそう言うと、お父様は「ん?いやなぁ、」と話し出した。


「今日はお前の為のお出掛けなんだ。ただまさか仕事から帰ってきた途端に言われるとは思いもしなかったよ」

「あら、いつでもいいって言ったのはアナタよ?」

「...わたしのため?」


そういえばよく見てみればお父様の服はお仕事用の服だ。いつもお疲れ様です。

って、私の為ってどういうこと??

そう言うとお父様はバツが悪そうに微笑むと、その問に答える。


「またあの召使いの様な輩がいたら危ないからなぁ、少し...いやかなり早いが専属の執事を付けようと」



「...え?」


────フラグ回収早すぎませんか!?


私はすぐに左右に首を振る。

いやいや、あれは全て私が悪いんだからこれから使用人を馬鹿にしなければいい話では...!!


「おとうさま、わたしには、は、はやいと...」

「だがなぁ...」

「アナベルったら、諦めなさい。それに貴女はすぐに動き回るから大人しくするためにっていうのもあるのよ?」


だからそれは前の『アナベル』だってば!!!

ていうか、それなら別に使用人達でもいいでしょ!!?

その言葉に、今度はお母様が反論する。


「あら?使用人と行動するのは嫌っていったのはどこの誰かしらァ?」


「...わたしです」


決して、決してあの美人で優しいお母様が般若の如く私を見つめていたなんてそんなことない。

ないったらない!!

...あぁ、お父様!お顔が真っ青ですっ...!






暫く馬車の中で談笑していると、不意に馬車が静かに止まった。

そしてすぐに馬車の扉が開く。


「お、ついたな」

「アナベル、段差に気を付けなさいね」

「はい、おかあさま」


地に足をつけ目の前を見ると、そこには大きな館があった。

...何処だろうかここは。そういえば専属執事を付けるとは言われても何処に行くとは教えて貰ってないような。


お父様とお母様は慣れたように館に入っていく。

ま、まってっ!!

私も急いで入ると、そこには何十人ともいえる執事が私達を出迎えていた。


「な、なにこれ...」


そんな、私の戸惑った声に答えてくれる者はいなかった。

すると、多くの執事の中から一人の男性がお父様とお母様の目の前に歩み礼をする。


「マーティン伯爵様、今日はお出向き感謝いたします。」

「あぁ、久方振りだなエイダン」

「今日は娘の執事をお願いいたしますわ」

「はい、かしこまりました」


お父様の方は顔見し知りらしい、あとお母様。執事をお願いしますとは何ぞ。

お母様の後ろからちょこんと顔を覗かせる。

私は下からエイダンさんという執事さんを眺める。


お父様よりも少し若い、キリッとした片眼鏡を掛けた男性だ。髪は少し緑がかっていてオールバックにしている。

所謂、知的イケメン。

なぜそんなイケメンがお父様の知り合いで、この執事が沢山いる館にいるのか不明だ。

いや、そもそもこの館こそ意味不明だ。

出迎える執事多すぎるだろ。


私の目線に気付たのか、エイダンさんと目が合う。

あ、やっばバレた。

すぐに目線を下にする。黙って見つめられるのってあんまり良い思いしないよね。


お父様は暫くそのエイダンさんと話すと、奥に進んで行く。

お母様はお父様の後に。

...え!?だからまってってば!!


私の両親はたまに私の存在を忘れる。




奥の客室で、私はこの館の事を教えて貰った。

ここら見習いからフリーの執事が仕事先を決めるための館だそうだ。

フリーの執事とは、とある事情でその家の執事を止めなくてはいけない人や解雇された人が多いそう。

見習い執事は、執事に憧れ執事としての勉強をしてきた若者なのだそう。特に十代が多いみたい。


ここは異世界のハロー〇ークかよ...。


エイダンさんはこの館中の執事長...リーダーの様な存在で、この館では誰もが憧れる執事だと言う。イケメンなだけじゃなかった。


お父様は昔、知人に勧められ執事を雇った事があるそうだ。その時知り合ったのがエイダンさんだそう。じゃあ私の家にもその雇った執事がいるのだろうか。


今回は私の専属執事ということで、見習い執事を雇うことになったそうな。私を連れてきたのは、折角だから自分で選びなさいという事らしい。

...これはフラグ回避できるのでは?適当に攻略キャラ以外の執事を選べば自然に『ディラン』は私の執事ではなくなる。なにこれ超ラッキー。


エイダンはすぐにレストランのメニュー表の様な物を私に見せる。


「この者達は、見習いの中でも突飛として優秀でございます。見た目も伯爵家に釣り合う程の者達を勝手ながら選ばせて頂きました」


中を覗くと、そこには証明写真が七・八枚ぐらい並んでおり下にはプロフィールが書かれている。

確かに見た目は将来有望そうな少年だらけだ。

...なんだかホストクラブに来たみたいなんですけど。

まぁ、攻略キャラの様な面倒な人達じゃなかったら誰でも良いので適当に目に付いた名前にしようと口を開いた瞬間────



ガチャガチャガチャーーーン!!!!



「「「「....」」」」


しんと、客室に沈黙が走った。

するとすぐに怒鳴り声が聞こえる。



「またお前か!!どうしていつもいつも!!この能無しが!!!!」

「すみません!!申し訳ございません!!!!」

「たくっ!面倒な事すんじゃねぇよ!!!てめぇなんか出てっちまえ!!!」

「ごめんなさい、ごめんなさい...!!」



気弱な少年の声と、頭に血がのぼっているであろう男性の声が扉越しに聞こえる。

お父様は目を細めてエイダンさんを見つめる。

彼は頭に手を当てて「またですか...」と小さく呟くと扉を開けた。

お母様は面白そうにその様子を眺める。



何笑ってんですかお母様。

執事の館は小説を書く前から書きたいと思っていたので満足です^^*

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ