第10話 『黄泉オンライン』 その4・メイン〝光族の神祇官〟と宙地原の創世神話
正午にお向かいの草乃と恵兎が帰ったので、午後から『黄泉オンライン』を始めた。
電谷のキャラクターは、やはりオフライン表示だ。学校からは流石にログインしないらしい。
(えっと、メインクエストは神祇官に会うってところで止めてたんだっけ?)
ゲームを再開しながら、頭の中でこれからゲーム内でやろうとすることを考える。
メインを進めて、レベルを上げる必要があるのだ。
他領地へ自由に移動出来るようになるためのサブクエストが、確かレベル25。それを早めにクリアしておきたい。
(機國さん達はどこまで進んだんだろう)
輝夜達とは違う領地でゲームをスタートさせた敦美達のことを考えながら、メインナビゲーションを確認した。
《次のメイン目的・神祇官と面会する》と表示されている。クエストマークは水名晴樹の頭上についていた。
カーソルを晴樹にロックオンして話し掛けると、街中を俯瞰で映すムービーが始まる。時間が進んだことを示した街並みや空の風景が映し出された後、街の通りに屋台が建ち並び、色とりどりの提灯が飾られ、お祭りといった姿に街は様変わりした。
気付けば、祭り状態の街中にぽんっと輝夜のキャラクターは放り出されている。
隣には、巫女姿の闇束霞が立っていた。彼女にクエストマークがあったので話し掛ける。
《 「おはようございます。この間振りですね。お話は水名殿から伺っていますから、私が伯様にお引き合わせ致します」 》
輝夜が首を傾げると、闇束は巫女衣装の袖を掴んではにかんだ。
《 「こう見えて、闇族の神祇官見習いなのです。まだ私には神祇官としての細かい見極めが出来ないんですけど……」 》
闇束に先導されながら、祭り会場から少し離れた豪奢な天幕へと向かう。そこには新たな人物がいた。ムービーに切り替わる。
白装束の青年――? だろうか。角度によっては童顔で少年にも見える。ひょっとしたら輝夜と同じ10代の年齢かもしれない。白に近い金髪に紫色の瞳。どこかオドオドとしていて背を丸め、不安そうな目を輝夜に注いでいた。
《 「貴公が族長の言っていた人間か。だけど、本当に私と同じ悪霊が見えているのか? 闇族でも無いのにうさんくさい奴……。これ以上、私のような厄介な例外はいらないぞ……」 》
青年に声はない。渋い顔をする彼を闇束が頭を下げてなだめていた。彼と闇束は師弟の間柄という設定らしい。年齢も大して変わらない風なのに不思議だ。
青年の台詞テキストの名前部分はまだ《 ??? 》だが、輝夜は既に名前に見当がついていた。攻略サイトのQ&Aに書かれていた〝光耀様〟だと思う。
すると、『かぐや』が呟いた。
『――主上、9年前に会いに来たのはこの神祇官だったかと』
(え!?)
『当時はもう少し幼い姿でしたが、この方です』
(そっか……。この人が亡くなった神祇官……)
輝夜はゲームキャラクターの神祇官をじっと眺める。それでも会った記憶が思い出せずに肩を落とした。
実は御天日凰十の記憶も輝夜にはあまりない。輝夜は彼を慕っていたはずで頻繁に会ってもらっていたのだが、電拳剣との記憶の方が鮮明で――何というか、人は本当につらかった時期や嫌だったことはいつまでも覚えていて、楽しかった記憶は忘れやすいのだなとつくづく思う。
〝???〟の青年は、溜息を吐くと不承不承に話し出した。
《 「本来、神祇官は闇族しかなれない。他種族にはその資質の力が備わっていないからだ。しかし、私のような光族という例外もいる。私の名はコウヨウ。良い意味でも悪い意味でも稀代の神祇官といわれ、これでも伯の位持ちだ」 》
彼が名乗ったので、次の台詞テキストの名前には《コウヨウ》と名前が表示されるようになった。
《 「闇族でもないのに、私と同じ目を持つという貴公の言がどうにも信用ならない。証明してもらおうか。今、この領地で彷徨う3つの魂を黄泉へと還してみろ」 》
台詞は尊大なのだが、コウヨウは眉を八文字に下げて輝夜と目を合わせない。顔は俯き、若干自信なさげに身体は縮こまっている。そんなコウヨウの姿に闇束も眉を八文字にして不安そうだった。何でこんなに似ているんだろうか、この2人……。
《 「待って下さい、伯様。この人には伯様のように魂を消滅させる光の力なんてないです。私と同じお札で祓うやり方で良いんですよね?」 》
《 「え……? うんー……」 》
《 「どうしてそんな苦虫を噛み潰したかの顔を!? 普通は種族能力で悪霊のお祓いなんて出来ませんってば! 私だって出来ませんよ!? これ、余っているお札です。良かったら使って下さい」 》
輝夜は闇束からお札のアイテムを受け取った。5枚あり、消耗品だ。
同時に次のクエストが発生する。《指定場所で人魂を3体倒す》と表示された。指定場所は広範囲で、地図の中に記された円形の表示は街とその付近のフィールド全てだった。
(あ。ひょっとして本当はここで初めて戦闘をする段取りだったのか)
既に電谷とともに、道すがら人魂の敵を倒しているのだが、どうやらもう一度、同じ敵を3体倒さなければならないようだ。2度手間である。
(でも、俺ってヒーラーだけど攻撃出来るのかな……?)
不安を抱えつつ、街の裏路地にいる《人魂 レベル1》と戦闘を始める。種族能力は【回復の水】しか使えないが通常攻撃は出来るだろうと考え、素手で殴った。
《ダメージ1》の表示が出て「!?」と驚く。あまりに与えるダメージが低い。
人魂の方は、レベル2の輝夜に《ダメージ5》の攻撃をしてくる。体力を削られるので回復しようとすると、種族能力発動を攻撃でキャンセルされた。
(ちょっ!? 俺死ぬ! 殺される!!)
何か無いかと慌ててアイテム欄を開き、お札が目に入った。それを使ってみる。すると、《ダメージ30》の表示で人魂が消滅した。
「強!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。消耗品なのでもったいない気がしていたが、イベントで貰ったアイテムは積極的に使っていけということだろう。お札を消費して残り2体の人魂もあっさり倒す。
クエストを達成し、再び天幕へと戻ろうとしたら物陰からコウヨウと闇束が現れた。
《 「本当に悪霊が視えているな。いいだろう、私が神祇官見習いとして記憶喪失の貴公の身元を引き受けてやろう」 》
(戻る手間が省けてありがたいけど、この2人、祭りの進行をしなくて良いのだろうか……)
ゲーム内のことながら、細かいところが気に掛かる。すると別の路地からNPC数人が徒党を組んで現れ、輝夜の疑問を解消してくれた。
なんとコウヨウと闇束に因縁をつけに来たのだ。神祇官は宮廷の偉い立場だと思っていたので、このイベントには非常に驚かされた。
《 「こんなところでサボりですか? 嫌ならとっとと神祇官を辞めて下さい。ただでさえ真っ当な神祇官なのか怪しい輩なんだから」 》
《 「なっ! 無礼です! 伯様は歴代で最も視る力を持つ神祇官なんですよ!!」 》
《 「どうだか。他の歴代の方々は、ちゃんと闇族だったっていうのにねぇ」 》
《 「貴方っ、伯様に族長候補として指名されなかったからって……!」 》
《 「闇束。このような私的な場で口にする話じゃない」 》
コウヨウに鋭く制止され、闇束はすごすごと引き下がる。絡んでいたNPC達も近くの屋台の柱を蹴りつけ、唾を吐き捨てながら悪態をついて去って行く。輝夜はゲーム内のこととはいえ、彼らのガラの悪さにドン引きしていた。全員水色系統の髪色だったので水族だと思われるのだが、あれが身内だとは思いたくない。
(って言うかリーダーっぽいNPC、水瀬英貴さんっぽくなかった……? ムービーじゃなかったからよく分からなかったけど。顔が似ていた気がする)
微妙に嫌な気持ちを抱えてアンニュイになりつつ、クエストクリアのSEを聞いた。レベルが3に上がる。
続けて、闇束から次のクエストを受けた。そのクエストは祭りを楽しむ話だけで、特に戦闘もなくサクサクと話が進む。
〝皇三の節会〟の祭りは、街の中心から少し南東に下がった広場に円形の石舞台が作られ、祭壇に置かれた神聖な原始の石を崇めるという儀式がメインだった。皇族御三家を讃えるだけの軽い催しだと輝夜は思っていたので、神聖で厳かな儀式の雰囲気に良い意味で裏切られる。
その石舞台に上がれるのは、神祇官のコウヨウのみ。石舞台の周りは一定の位置で注連縄が張りめぐらされ、一般の街のNPC達は近付いてはならない。近付けない彼らは遠くから祭壇を見つめ、手を合わせたり、頭を下げて思い思いに祈りを捧げていた。
輝夜はこの広場の景色と位置に見覚えがあった。現実で水城家と獣櫛家の家が建っている土地だ。
そしてあの石舞台。周りが湖でもなく石畳も簡素なものなのだが、『かぐや』が居る精神世界の場所に酷似していた。初めて見る儀式だというのに強烈な既視感が沸く。
輝夜は胸中で『かぐや』に訊ねた。
(これ、皇族御三家が表から消える800年前まで、現実でも本当にやっていた祭り……?)
『分かりません。月族は皇族領地から外に出ることは叶いませんでしたから』
(そっか。……不思議なお祭りだなぁ。権力者の皇族御三家を敬おうってものじゃなくて、宙地原の創世神話を前提に皇族御三家を大事にしようって促すお祭りだなんて)
ゲーム画面内の祭壇に向かって喋るコウヨウの台詞は、小難しい言い回しで創世神話を語るものだった。輝夜は一応手元のノートに書き込んでいたが、途中で古文の教科書に載っている一文が含まれていると気付き、学校の教科書を取り出して見比べる。やはり同じ内容だった。
古文に載っている一文の現代語訳はこうだ。
創世神話曰く、宙地原の惑星の人類は石から生まれた。
最初が宙地原族。次いで時を同じく誕生したのが太陽族と月族である。
彼らが宙地原の惑星に、他の生物が生きられる環境を作りし原始創造の存在。
彼ら無くして、この宙地原の惑星は冷たき宇宙で現存できはしない。
(今まで創世神話を語る古文の言い回しって、随分と皇族御三家を誉め過ぎじゃないかって思っていたけど……。改めて読むと、警告みたいな文章だ。皇族御三家が居なくなると惑星が危ないって言ってる……? だからちゃんと大事にしろって念押しするのが〝皇三の節会〟っていうお祭りの主旨なのかな)
歴史の教科書も広げてみた。歴史の授業としては適当に流され、テストでも問題としては採用されない冒頭のページ、惑星の始まりという創世神話の現代語訳部分に目を向ける。
――広大な宇宙に浮かぶ塵芥とも言える無数の石の欠片。それらが渦のように集まっている空間があった。
ある時、赤い熱をまとった球がその渦に乗り、周りの石を溶かす。溶けた石達が1つに固まり冷えて、巨大な球体の石の惑星となった。
それが、宇宙に生まれた地平の平原――〝宙地原〟という惑星の誕生である。
宙地原となった無数の石の中には、様々な外宇宙の欠片――微生物が含まれていた。
空気も水も大地もない、無の惑星に適応するため、最初に動き出した微生物は生きられる環境を自ら生み出す進化を遂げる。
その進化を思考したのが、のちの宙地原族と呼ばれるもの。
その思考に影響され、炎をまとった石を吐き出したのが、のちの太陽族と呼ばれるもの。
炎の熱に惑星の地表が再び溶かされるのを防ぎ、その熱と光を抑えるための石の欠片を覆ったのが、のちの月族と呼ばれるもの。
最初の生物であり、原始生命体の太陽族、月族、宙地原族は、果て無き宇宙での時の中を生き続けながら石の中の様々な物質を活性化させ、惑星を生物が生まれる世界へと変え、長き活動時間に適応する進化をも遂げた――……
……眉唾だなぁと思わずにいられない。荒唐無稽で摩訶不思議なのだ、創世神話とやらは。この惑星には、ちゃんと空気と海と大陸と緑があるから余計にそんな否定的な考えになってしまうのかもしれない。
現に180年前まで宙地原の創世神話は架空のお伽話とされていて、歴史の教科書には載っていなかったとページの端に注意書きがされている。
小さな文字の注釈によると、転機は180年前の機械族の宇宙進出だった。
世界初の宇宙船を飛ばした機械族は、「この惑星の傍に天体は無く、粒子のような無数の衛星の欠片が浮遊するばかりで、後はただ、光の無い闇の宇宙空間だけが広がっている。何故、宙地原の惑星内から見た空に、存在していない太陽と月なる天体が観測出来、その恩恵まであるのかが全くもって不明である」と発表した。その証拠として公開された宇宙の映像は当時世界を震撼させたという。
宇宙から見た宙地原の惑星は、巨大な白い石そのもの。空気も水も緑も大地も無いように宇宙からは見える。オカルト過ぎる惑星だ。
この謎は現在も解明されていないし、今後も永久に解明されない。機械族が宇宙の調査をそれ以降辞めてしまったためである。人工衛星は打ち上げても、惑星は科学的に調査し解明するべきものではないというのが機械族族長の弁、らしい。
創世神話は架空か史実か――。現代に置いても賛否両論で答えが出たわけではないが、その宇宙の映像以降、歴史として取り扱うことになったと締めくくりに書かれている。
輝夜は、ぼうっと歴史の教科書をめくりながらゲームを進めていく。
ゲーム内のイベントでは、現在の皇族御三家を讃えるという話の流れでコウヨウの締めくくりの台詞に見知った名前があった。目が釘付けになる。
《 「御天日凰十『皇帝』陛下、御神地皇殿下、御満月夜重殿下、お三方の安寧をここに願う――」 》
「みあめひおうとッ?!」
思わず裏返った声が口から飛び出す。ガタンッと立ち上がってしまった。
(ちょっ!? このゲーム、凰十さんもプレイヤーだったんだよね!? それともこの『皇帝』役をやってたの!? ええっ!? どういうこと!?)
慌てて2階の自室から1階のリビングへ行き、窓際に座る篁朝に興奮気味に話し掛けた。
「凰十さん、ゲーム内で『皇帝』設定だったんだけど! ゲームはしてなかったの!? それともゲーム内の『皇帝』凰十さんって設定だけで本人じゃない!?」
「……」
篁朝の答えはない。篁朝にぼんやりと虚ろな目を向けられて、輝夜ははっとする。瞬間的な高揚はなくなり、冷静になってきた。
「いや……急にごめん、何でも無いよ。兄貴、ご飯食べ終わったんだね。お皿下げるよ」
篁朝の傍にあった皿を台所で洗い、2階の自室へと戻った。御天日凰十の名前に、ついテンションが上がってしまったが、今の篁朝に聞いても答えは返ってこないのは分かっていたことだ。落ち着かなければ、と息を吐いてから気分を変える。
ゲームの祭りに関する一連のクエストは、先ほどのコウヨウの台詞で終了した。場面転換をしたと思ったら、街の風景が最初の状態に戻っている。屋台や石舞台は綺麗さっぱりと消えていた。
メインクエストは経験値が多いのか、レベルが4に上がる。このまま進めていけば、自然とレベルが上がっていく形なのだろう。
しかし、戦闘のクエストが間違いなくあるはずなので、ヒーラーの攻撃力の無さを経験した輝夜は少々不安に思う。
新しい種族能力を覚えたが、《【水の壁】水の防御壁を前方に出す。 効果:精神力を20消費して、40秒のダメージ無効化》という現実でも水族がよく防御として使っているのを目にする能力だった。攻撃力が無い。
装備を揃えるのが良いかもしれないと思い立ち、祓い屋や道具屋といったNPCが経営している店を覗いてみる。店には大刀・弓といった殺傷力のありそうなものから、扇子・鏡・勾玉・注連縄・お札といった戦闘には一見役立ちそうに思えないラインナップが正々堂々武器と称して並んでいた。
しかしどれも高く、最低でも15000皇三銭する。ゲーム通貨は現実と同じだ。ちなみに輝夜の現在の所持金は950皇三銭である。
消耗品のお札は1番効果が低いランクのものが1枚500皇三銭。1枚は買えるが悩ましいところだった。
(そういえば、プレイヤー同士でも売買があるんだっけ)
〝旅の行商人〟というNPCが近くに立っていた。彼に話し掛けると《【旅の行商人】はプレイヤー同士の売買をするマーケットです。買う行為にはレベルが必要ありませんが、出品する場合は特定のサブクエストをクリアし、領地間移動を解禁する必要があります。》とテキストの解説が出る。
マーケットは沢山の商品名が膨大に載っていたが、ほとんどの出品数は0。出品が1件あるものでも、9年前の出品履歴や落札履歴を最後に動きが止まっているものばかりで、輝夜の顔色が曇る。
(翡翠革命で亡くなった人達の利用履歴か……)
悲しくなってマーケットは閉じたが、収穫はあった。どうやらプレイヤーはお札が作れるらしい。製作者の名前入りの出品があったのだ。
9999999999皇三銭という、売る気があるのかないのか分からない出品価格で置かれていた――後々、これは本当に売る気がなく、マーケットを倉庫代わりに使う結構メジャーなやり口なのだと知るが。
輝夜は自分で作れるのなら作ろうと思い立つ。
ゲーム内の特殊な電脳を開き、攻略サイトのクラフトの項目を見る。
厄除け屋というお札や御守りのアクセサリーを製作するサブジョブがあると書かれていた。
厄除け屋がある領地の一覧に竹領地もあったので、輝夜は早速地図を見ながら厄除け屋に向かう。厄除け屋の主人には特殊クエストマークがついていた。
話し掛けると、《厄除け屋の職業に就きますか? はい・いいえ》の選択肢が出る。《はい》を選ぶ。《厄除け屋のサブジョブが解禁されました》というアナウンスが出て、クラフト製作の説明が入った。
最初から作成出来るお札作りは簡単で、原材料の紙(1枚5皇三銭)と硯(使用回数無制限300皇三銭)、一般流通筆(使用回数99、100皇三銭)と一般流通墨(使用回数99、50皇三銭)をNPCから買って、製作ボタン1つで完成するものだった。
NPCの道具屋が1枚500皇三銭で売っている物を同じ金額で10枚作れるのである。しかも厄除け屋の主人は特殊なNPCで、プレイヤーが作成したお札1枚を150皇三銭で買い取りをしてくれる商いもしていた。このお得感に輝夜は喜んだ。
最初は武器を買うためのお金稼ぎのつもりでお札を作っていたが、次第に製作自体が楽しくなってきて、時間が経つごとに目的を忘れ、熱心にお札作りに励み続ける。
厄除け屋のレベルが8に上がると、お札の文字を好きに打ち込めるというシステムがアンロックされた。色々悩んだ結果、どうにも気恥ずかしくて定型の《悪霊退散》のまま作ることにする。
(でも自分だけのお札かぁ……。ブランドみたいで面白い機能だな)
電谷が『黄泉オンライン』の過疎化を嘆いていた気持ちが分かる。一般に公開されていて沢山の人がこのゲームで遊んでいたら、もの凄くカオスで面白かったんじゃないかと思う。
唐突にピロンッと音が鳴った。
《ハナヤギヒビキからフレンド申請がありました。許諾しますか? はい・いいえ》というメッセージが出て目を丸くする。
座り込んでクラフトをしている輝夜の目の前には、いつの間にか青い髪のイケメンの青年が立っていた。
頭上にあるプレイヤー名は〝ハナヤギヒビキ〟と表示されている。
イケメンの口が動いていたので、話し掛けられているのに気付く。全く見ていなかったゲームのチャット欄を見た。
《 ハナヤギヒビキ>>こんにちは
ハナヤギヒビキ>>何やってるの?
ハナヤギヒビキ>>レベルいくつぐらい?
ハナヤギヒビキ>>ひょっとしてタイピング苦手?
ハナヤギヒビキ>>フレンド登録しよう
ハナヤギヒビキ>>何かやりたいクエストあるなら手伝うけど 》
(無茶苦茶話し掛けられてた……!!)
初めて知らない人とチャットするかと思うと、ドキドキと鼓動が早くなり緊張する。
勇気を出して入力ボタンを押した。
《 >>水城輝夜:初めまして、こんにちは 》
それに対して、相手は首を傾げるエモートをした。
《 ハナヤギヒビキ>>輝夜。私、響華だから 》
天体のこと:本物の太陽は、水素ガスの球体で宇宙の巨大な原子炉みたいなものです。
だから太陽族とは一切関係がありません。
炎を纏った石を太陽として便宜上太陽族を名乗る彼らは、疑似太陽の種族だと認識していただけたらと思います。




