第5話 『黄泉オンライン』 その2・ゲームスタート
『――教えてくれたゲーム……響華も誘っていいかな、水城君』
「う……うん。響華さんもいいよ」
『――ありがとう』
「じゃ、じゃあ、改めてメールでゲストアカウントとパスワード送るよ。ゲーム自体は『黄泉オンライン』で検索したら出て来るサイトで、ダウンロードするんだ」
『――分かった。家に帰ったらやってみるね』
「う、うん」
『――じゃあ、また』
そこで、通話は切れる。
輝夜は耳から離した携帯端末を、呆然と見つめて呟いた。
「あれ……? 俺、仁芸君とじゃなくて、何故か機國さんと話していたような……。夢……寝ぼけてる?」
「てるやん、しっかり! 夢じゃないですことヨ!?」
軽く錯乱する輝夜に、電谷がしっかりとつっこみを入れる。
輝夜はメールを誤送信したのだろうかと、携帯端末内の履歴を確認した。しかし、仁芸で合っている。それに敦美の携帯番号を輝夜は知らない。電谷も隣で輝夜の携帯端末の画面を覗き込みながら首を傾げる。
「博士の携帯が近くにあったのを代わりに取ったとか……? いやんっ、『マスター』ったらいくら弟のだからってプライバシーの侵害はいかんですぞー」
「あ、それで……。そっ、そっか。それ、うちの兄貴もたまにやるよ」
「マァッ、下のキョウダイって虐げられてるのがデフォなの!?」
「虐げられてるのかな? でも、そんな大袈裟なことじゃないと思うけど」
「そーいうもん? 俺はひとりっ子……? ってやつなんでその微妙な感覚よく分からんっすね」
輝夜は段々と冷静になってきて、はっと目を瞠った。
「機國さんと響華さんもゲームやるんだ!? って言うかさっきの俺、機國さんに変なこと言ってなかった!?」
「ナイナイ、大丈夫。むしろ電話を掛けてきた『マスター』の発言の方が謎に包まれておりましたワー」
「良かった……」
輝夜は、ほっと胸を撫で下ろす。
その様子を見て、電谷は「ふむ」と頷きながら顎に手をやった。
「てるやんって、本気で『マスター』が好きなんデス?」
「えっ!?!」
思わず動揺して、持っていた携帯端末を床に滑り落とす。輝夜は自分の顔が真っ赤になっているのが分かった。頬は熱いが心の中は焦って冷や汗を掻いている状態だ。
輝夜の慌てっぷりに、電谷は視線を泳がせてポリポリと頬を掻く。
「えーと、……告白は、しないの?」
「うぇっ!?」
「や、ごめん。野暮なつっこみだった」
電谷があえてPCの方に顔を向けたまま、頭を下げる。「てるやんは、おうちの事情もありますもんね」と続ける電谷の横顔を見ながら、輝夜は自分自身に驚いていた。
(そういえば……、全然自分の気持ちを伝えたいって考えたことない……)
敦美に好かれたいと思って色々と行動していたが、ストレートに告白をするという考えには至らなかった。――いや、無意識に目を逸らしていたのだ。輝夜は告白が怖い。
ふっと、拳を振り上げる昔の兄の姿を目の前に幻視する。輝夜はビクリと身体を震わせた。
『僕は、お兄ちゃんが好きだよ』
『お前……っ、月族じゃない俺を見下しているのか!』
背筋が凍る。幼い頃、震えながら一生分の勇気を出して伝えた親愛の言葉を、暴力で返されたあの日は――もう遠い。
「迷惑……迷惑になる、んじゃないかな。俺に告白されるって……」
輝夜が暗くうわごとのように零した言葉に対して、電谷はからりと明るい声で答えた。
「それはてるやん、『マスター』本人に伝えてみなきゃ分からないことっすよ! なんてったって『マスター』は、てるやんの素性も事情も全部ひっくるめて知っておりますからね。迷惑ならバッサリ断ってくれますよ! 悩むだけ損ソン! 当たって砕けてさっさと悩み解消しちゃうといいですぞ」
輝夜は白練色の瞳を瞬いた。電谷の遠慮の無い言葉に笑いが込み上げてくる。
「ふ、ふられるの前提……!」
「だって『マスター』忙しそうなんですもん! 恋愛より仕事タイプの女子にしか見えませぬ」
「確かに機國さんは、いつも仕事で学校に来てないけどそれって俺のせいで」
「いやいや、てるやんのせいじゃないっすよ。というか、てるやん全然関係ないから!」
「え……?」
「『マスター』の自業自得っすね。長年サボってた授業の補習をしているようなもんデス。いや、ガチであのお人、ずっと放置していた自分の仕事を急にやり出したから忙しいだけなんで。本来はねぇ、てるやんが引っ越してこなくてもやってなきゃな仕事なのです。てるやんが気にする要素は全く無し!」
「そう、なんだ……」
輝夜は、電谷にはっきりと断言されたことで胸のつっかえが軽くなる。
「でも俺から告白って、命令みたいにならないかな。月族、だし……」
電谷は不思議そうに輝夜を見て、首を横に傾げた。
「はて? この自宅に軟禁状態のてるやんのどこに命令なんて権力があります?」
「うっ……」
グサリと胸に刺さる的確な指摘だった。「フハハハ、告白からは逃れられぬのだ!」と電谷はコミカルに笑った。
「そっかそっか、てるやんは『マスター』が好みっと。俺と同じで年上好きかと思ってたから、結構意外な感じ」
「やっくんは年上好きなんだっけ」
「フヘヘ。やっぱね、大人の女性の存在感って良いよね。芯のしっかりした、自分を持っている女性が好きだよん」
「響華さんみたいな……?」
輝夜は、地下運河で頼もしかった響華の背中を思い出す。しかし、電谷は難しい顔をして腕を組んだ。
「んー、エン様かぁ」
「同い年だから好みじゃない?」
「や、エン様はね。罵り方もスッパリとしてて、手厳しく素晴らしい逸材なのですが」
「罵り方……?」
「エン様は俺と同類っていうか、藍領地で自分の居場所を探してキョロキョロしているのが、ちょい俺の中のしっかり者像と外れるんっすよ」
一瞬、電谷の顔に悲哀の色が浮かんだように思った。
(〝自分の居場所〟――……ああ、そうだ。やっくんは藍領地を自分の故郷だって、電脳技術屋の仕事を大事にしていたんだ。でも、友達と他の電脳族のためにそれを手放した。本当は辞めたくなかったんじゃないか……?)
輝夜の頭の片隅で、自身の家出の計画がよぎり、後ろめたく感じた。電谷は輝夜と違い、逃げずに周りに強制された電脳族族長を務めるのだ。
輝夜の中で迷いが生まれる。本当に電須佐由に連絡を取って頼むようなことなのか、自問自答する。しかし答えは出ない。
(『かぐや』は――……)
『かぐや』に答えを求めようとして、直ぐに打ち消した。彼に頼るのは間違っている。輝夜が決めるものなのだから。
「ではでは、てるやん。そろそろ休憩はここまでにして、ゲームのキャラクター作成を再開しましょー!」
「あ、うん。そうだね」
電谷に促され、輝夜も気分を切り替える。PCの前に座り直した。
「やっくん。俺、ランダムで行くよ」
「ほほう。リアルと同じ顔とは冒険しますな!」
「佐由さんのゲームをやっている他の人って、翡翠革命で兄貴の味方側だった人達だけで関係ない一般領民は遊んでないはずなんだ。そんなに現実と区別しない方が、そういう人達とゲーム内で会った時に話し掛けやすいと思う」
「じゃ、俺も便乗して。この際名前もリアルのままいきます?」
「うん」
「ひゃぁっ、本名と顔晒しプレイとか初めて! ヒジョーに恐ろしいですわぁ! ドキドキ!」
輝夜はキャラクター作成の決定ボタンを押す。すると、確認のシステムメッセージが表示された。
《 水族は竹領地スタートです。所属する皇族派閥は月族になります。皇族派閥の恩恵は特にありません。
このキャラクターでゲームを始めますか? はい・いいえ 》
「皇族派閥の恩恵って何だろう。それに竹領地ってどこ?」
「藍領地の昔の名前っすよ」
「え!? そうなんだ!?」
「正確には、藍領地と他の4つの領地の全部を含めた島全体の領地のことを、竹領地って呼ぶのさ。皇族御三家が表に居た時の大昔の領地名ですな。領地争いのせいで、5つに別れちゃったらしいからねぇ」
電谷は輝夜の疑問に答えながら、自分の方の決定ボタンを押した。
《 電脳族はスタート領地が自由に選べます。領地を選択して下さい。
所属する皇族派閥は、太陽族・宙地原族・月族が選べます。支持する皇族家を選択して下さい。皇族派閥の恩恵は、太陽族が経験値+5%、宙地原族が領地間移動費の半額、月族は特にありません。
このキャラクターでゲームを始めますか? はい・いいえ 》
「あ、良いなぁ。電脳族は派閥を選べるんだ。派閥の恩恵って、要するにゲーム内の特典なのか。何で月族って何も無いんだろう」
輝夜が月族に何も特典が無いことにがっかりする。その隣で電谷は眉を潜めていた。
「んん? なにゆえ、水族は皇族御三家が自由に選べない仕様……? これまさか現実の関わりと同じ……? えっ! ホントなら凄い情報の塊なんだけど!? ちょい待ってもらえる、てるやん! 他の種族も見たい!」
慌てて電谷は《いいえ》を選択し、やり直す。
「全種族見てみるのか?」
「それは後で。ただ、藍の上位領地ランカーの種族がどこの派閥なのかは早急に知っておきたいっ。まぁ、全員電脳族と同じ立ち位置で、自由に皇族御三家三択になっていると心の底から思って……いや願っておるのですが。ってありゃ? 闇族が無い」
種族選択で、闇族の文字がいくら探しても見つからなかった。
「闇族って選べないみたいだね」
「電脳族があるのに、闇族ハブとは一体、ウゴゴゴ……」
「でもそれ以外の種族は全部選べる感じかな」
電谷は、水族と闇族――『三位』『八位』『十位』を除いて、藍領地の上位領地ランカー全員の種族を下から順に選んでいった。
●『九位』炎乃響華の〝火族〟――《皇族派閥、太陽族のみ》
「ほーん。まぁ、これは当然っすね」と電谷は頷き、「火族も固定なんだ」と輝夜は水族だけが特別なわけじゃないことに、ほんの少し安心する。
●『七位』紙垂野司の〝紙族〟――《皇族派閥、宙地原族のみ》
この瞬間、「はあああ!?」と電谷が苛立ちを含んだ大声を出して立ち上がった。輝夜はびっくりする。
「宙地原族支持派ァ!? か、間者が! こんなトコに伏兵がッ!! 翡翠領地と葛領地のテロの時、こんな人が藍領地全体の警備担当やってたってこと!? 港の下位領地ランカーの警備が全然いなかった時間があるってまさかまさかじゃないだろうな!?」
画面を指差して電谷は憤慨する。港という単語に、剣の死に関わりがあるかもしれない人物だと分かり、輝夜は微かに顔を顰めた。
●『六位』色部直晃の〝彩色族〟――《皇族派閥、皇族御三家から自由選択》
●『五位』刃佐間逍遙の〝刃族〟――《皇族派閥、太陽族と宙地原族から選択》
「うっ……あのハザ様まで、地味に宙地原族と関ってた可能性あるのか……ショック過ぎる」
「剣さんが関わっていたから、入っているだけじゃないかな。俺の護衛をやってくれた時、凄く気を遣ってくれて良い人だったよ。さっきの『七位』の人も一族は宙地原族支持だけど、本人は関わってないかもしれないだろ?」
「……うーむ、そーかもですが。てるやん、お人好しっすな」
輝夜のフォローに電谷は苦笑する。しかし次の種族で目を丸くした。
●『四位』時蔵石斗の〝刻族〟――《皇族派閥、月族のみ》
「何……だと……?!」
電谷は驚愕していたが、輝夜はやっぱりそうなのかと納得していた。何故なら、時蔵は輝夜に書道と礼儀作法を教えに来てくれている先生、火住由理の夫だと聞いていたからだ。
●『二位』雷秀寿の〝雷族〟――《皇族派閥、皇族御三家から自由選択》
●『領王』機國敦美の〝機械族〟――《皇族派閥、太陽族と月族から選択》
(機械族は、宙地原族とは全然関わらないんだ)
輝夜が敦美のことを考えている隣で、電谷は「皆さん、何も知らない顔して裏で色々思うところあったってことっすね……。黒い! 黒いよ、藍領地上位ランカー……!」と衝撃を受けていた。電谷は一通りうちひしがれたポーズを取ると、むくりと顔を上げて姿勢を正す。
「じゃ、ゲーム始めましょー。電脳族は領地を選べますんで、てるやんと同じ竹領地&月族派閥にしますね」
「うん」
電谷の変わり身の早さにも、だいぶ慣れてきている輝夜である。
キャラクター作成の確認メッセージに対して《はい》を選択すると、画面が暗転する。真っ白な文字で文章が表示された。
《 黄泉の狭間。世界の強者は、死者か生者か――……? 》
次第に画面が黒から白に変化していき、白い文字はその白の中に埋没して消えていく。
続いて現れたのは、深い青色。白色を侵食していき、泡のような形で白色は消えて去った。ザバーンというSE音が流れる。
(海?)
海岸の景色が、ゲーム画面に現れた。
ゲーム内の輝夜は、浜辺に打ち上げられたようだ。この時点でキャラクターを動かせる。
初めてやるゲームに輝夜はわくわくしていた。しかし、いざ意気込んで動かしてみると、キャラクターを動かせるだけで何も出来ない。
「やっくんの方も同じ状態?」
「うむ。でも同じ海岸にいるっぽいのに、てるやんのキャラが見えんね。もうちょっと進めないとオンラインモードにならないのかも」
「そっか」
キャラクターを動かして、海岸沿いの道に出る。すると画面が変わった。
「うおっ、ムービー!?」
「これは放っておいても自動で進行するの?」
「するはず。うわっ、メインシナリオにムービーあるとかヒジョーに商業っぽい!」
画面の中の輝夜は、走ってきた1人の少女にぶつかった。
《 「きゃっ、ごめんなさい!」 》
頭を下げて謝る少女に、ゲームの輝夜は首を横に振る。ほっと顔をほころばせた少女は、ふと輝夜の顔を凝視した。
《 「貴方、一体どこの誰……? 不思議な感じがするわ」 》
ゲーム内の輝夜は、口を開閉して手を上げる。少女は驚いた顔をした。
《 「種族と名前しか覚えてないの!? 記憶喪失だなんて!」 》
(あ、自分のキャラクターって喋らないんだ)
ゲーム内の少女は音声があるので、ジェスチャーだけで話が進められるのが不思議な感じがする。
隣の電谷は口をあんぐりと開けて唖然としていた。
「あれ。やっくん、どうかした?」
「ここここの黒髪ロングの美少女、ヤミ様……!? エエエェ……!? 音声まで本人なんですけどぉッ!?」
電谷は素っ頓狂な声を上げる。
「ヤミ様?」
「うちの『十位』闇束霞様! うえっ」
「ええっ!?」
輝夜は思わず、電谷の顔と交互にゲーム内の少女を2度見した。あの男装の闇束と同一人物には見えない。輝夜は素直に感心する。
「やっくん、よく分かるなぁ」
「藍領地の掲示板でヤミ様の女装? 的なコラ画像を何度か見てたんで」
「そうなんだ。はぁ……この子が、あの護衛の人か。女の子って可愛い格好すると本当化けるよね」
「おっと、それてるやんが言う?」
「は?」
輝夜はむっと口を尖らせる。一方電谷は素早く視線を天井に逸らして口笛を吹き、失言を誤魔化す気である。輝夜もあまり掘り下げたい話題ではないので聞かなかったことにした。
ゲーム内では、少女姿の闇束がフレアのスカートを揺らして街の方角を指差す。
《 「街の中心地にこの領地の主の屋敷があります。まず、そちらに向かってみて下さい。きっと助けて下さると思います」 》
闇束は輝夜にそう教えると、くるりと身を翻す。1度、輝夜の方を振り返ったが、結局そのまま背を向けてこの場を去って行った。
そのムービーが終わると、通常のゲーム画面に切り替わる。
先ほどまで居なかった電谷のキャラクターが画面内に現れ、レベル・体力・精神力など、様々な表示のバーや数字、コマンドが画面に出てきた。
「やっとオンラインゲームになりましたなぁ」
「凄い! 隣にやっくんのキャラがちゃんといる」
輝夜が感動しているのを見て、電谷は挨拶代わりに自身のキャラクターをぴょんっとその場でジャンプさせた。輝夜もジャンプさせてみる。ぴょんぴょんと謎の跳ね合いの掛け合いが続いた。
「何か面白い」
「フフフっ! 人と一緒に遊ぶのがオンラインゲームの醍醐味ですからネ!」
ゲーム画面には、《次のメイン目的・領主の屋敷へ向かう》という細かな指示の表示もされている。
電谷に促され、輝夜はステータス画面を開いてみた。
《 水城輝夜
水族/ヒーラー 月族派閥
レベル1
体力:15
精神力:28
反射神経:22
運:50
種族能力:【回復の水】 》
(ヒーラー? 回復の水??)
疑問符がいっぱいな頭で、カーソルを「回復の水」の上に移動させると説明文が出た。
《【回復の水】喉の乾きを潤す水を出す。 効果:精神力を5消費して、体力を12回復する》
(飲み物を出す能力って……。み、水は確かに出すけどさ……。水族が出した水は、普通飲まないから……!)
輝夜が説明文に頬を引き攣らせた時、電谷が叫ぶ。
「えぇっ!? 電脳族がタンクぅぅ!? 攻撃も防御手段も無い種族なのに!? そりゃ別の意味で他種族のヘイトを常に取ってますけども! うわーっ、これ納得したくないッ」
《 電谷
電脳族/タンク 月族派閥
レベル1
体力:35
精神力:19
反射神経:50
運:1
種族能力:【異空間の小部屋】 》
電谷のステータス画面を覗いて、輝夜は目を瞬かせる。
「タンクって何?」
「壁役のジョブ。盾といいますかね、1番に敵に突っ込んで行って敵のヘイトを――ヘイトっていうのは敵視のことなんですが、敵の注意をずっと引きつけて、他のパーティーメンバーに敵の攻撃がいかないように戦闘終了まで耐えるのがお仕事」
「1人でそんなことをしていたら死ぬんじゃないか?」
「そこでヒーラーさんの出番っすよ。ヒーラーのてるやんのお仕事は、パーティーメンバーのHPが減ったら回復すること。このゲームだとHPって体力のことっすね。精神力がMPのことっぽい」
「やっくんが敵の攻撃を耐える役で、俺が回復して、それで敵って倒せるのか?」
「一応、タンクの攻撃力でも倒せると思いますが、かなり時間が掛かるはず。ぬう……アタッカーがいませんとな。敵を倒すのはアタッカーのお仕事なのデス。『マスター』とエン様、どっちかアタッカーを選んでくれると良いのですが」
「オンラインゲームって、役割分担があるんだ」
「そうですよ。オフラインゲームと違って、レベルカンストさせて無双なんて基本不可能な仕様。後はこれMOなのかMMOなのか……戦闘出来るトコまで進めないと判断出来ないっすね。サクサク進めていきましょー。ていっ」
突然ピロンッと音が鳴って、「わ!?」と輝夜は驚く。
《電谷からフレンド申請がありました。許諾しますか? はい・いいえ》というメッセージが出る。
「フレンド?」
「離れていてもズッ友だよ!」
「え」
若干引いた輝夜に、電谷は外したことを照れながらコホンと咳払いをして言い直す。
「フレンドだと一緒に行動してなくても連絡が取れて、ゲームによっては相手がどこで遊んでいるかとかが大抵分かる。てるやんも俺に投げてね」
「へぇ」
輝夜と電谷は、更にパーティーを組んで街へと歩き出した。
「しかし、闇族がキャラクター作成で選べなかった理由は、メインシナリオに闇族が絡んでるからでしょーかね。ヤミ様がムービーで登場したって辺り、結構重要な出会いの演出だったはずですし。こうなってくると、他の領地でもヤミ様が登場なのか気になるなぁ。でもタイトル画面は光族の七芒星だったのは、はて?」
輝夜は電谷の考察を聞きながら、剣のアプリゲームといい、どうして電脳族は本人の許諾無しに実在の人物をゲーム素材に使うのだろうと、闇束を気の毒に思い、内心で剣と佐由に呆れていた。




