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眠る月の皇子  作者: 古波萩子
第2章 けぶる翡翠の亡霊達
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 閑話・血統の埋葬

敦美あつみ。変なところで会うわね」

「――響華きょうか


 夜。『五位』刃佐間はざま逍遙しょうようの家宅前。制服姿の炎乃えんの響華きょうかと、軍服姿の機國きぐに敦美あつみは鉢合わせする。

 響華きょうかは門の中に足を進めず、肩を竦めると背を向けた。


「――入らないの?」

「やめたわ。ちょっと、これは違うわね。気の迷いよ。それより敦美あつみ。ストーカーの通夜なんて立場的にいいわけ? 水族みずぞく本家がうるさいんじゃないの?」

「――参列はしない。刃佐間はざまには直接会って聞きたいことがあって」

「そ」


 敦美あつみが玄関のチャイムを鳴らすと、直ぐに玄関の扉を刃佐間はざまが開けた。刃佐間はざまには事前に来訪の旨を連絡している。

 刃佐間はざまは家の中へ敦美あつみを促すが、敦美あつみは断った。


「――ここでいい。電話で聞くようなことじゃないと思ったから来ただけで、直ぐに帰る。……電拳でんつか族長の両親の本当の種族を知りたい」


 敦美あつみの言葉に、刃佐間はざまは瞠目する。敦美あつみは淡々と言葉を重ねた。


「――電拳でんつか族長の容姿は刃族やいばぞくの特徴が出ていたし、片親が刃族やいばぞくなのは間違いない。でも、もう片方の親は……? 戸籍上ではこちらも刃族やいばぞくになっているけど事実じゃない」

「『領王』様、何故なにゆえ事実ではないと……?」


 敦美あつみ刃佐間はざまの目の前に電脳画面を出現させた。『あいらふらいふ』で電谷でんやが撮った〝水城みずしろ輝夜てるやすED(エンド)に登場した、宙地原族そらちのはらぞくらしき金髪の少女のスクリーンショットを表示する。刃佐間はざまは難しい顔で眉根を寄せた。


「これが何でしょうか」

「――今日、今の皇族御三家……特に宙地原族そらちのはらぞくについて詳しく知る機会があった。今の宙地原族そらちのはらぞくは警戒心が強く、皇族に会う以外では姿を見せない存在だそうだよ。でも――」


 更にスクリーンショットを拡大し、荒くなった映像をクリアにした状態のものを表示する。宙地原族そらちのはらぞくの少女の緑色の右目と群青色の左目の中に電拳でんつかつるぎの姿があった。


「――これは、人工衛星や監視カメラの映像を探して持ってきたものじゃない。電拳でんつか族長が直接目の前で会った時に撮った画像を使って作っている。あまり言いたくないけど……宙地原族そらちのはらぞくが、ただの電脳族でんのうぞく族長如きと直接会っているなんて変だよ」


 刃佐間はざまは黙ったままだ。

 それでも敦美あつみは真っ直ぐな眼差しで訊く。


「――太陽族たいようぞく内には、『皇帝』を輩出しない傍系の後宮内侍従の血筋があるよね。彼らはたまに降嫁して、一般領民として暮らすことがあったはず。電拳でんつか族長の片親は、太陽族たいようぞくだったんじゃないの?」

「……彼の両親は刃族やいばぞくだと聞いています。それ以上、言えることはありません」


 伏し目がちに発せられた否定を敦美あつみは追求はせず、「――分かった。ありがとう」と一言告げて踵を返した。


 敦美あつみとともに響華きょうかも歩き出す。響華きょうか敦美あつみの隣に並んで、肘で軽く敦美あつみをつついた。


宙地原族そらちのはらぞくの話、誰から聞けたのよ」

「――電牙でんかび葦成あししげ。しかも自称宙地原族(そらちのはらぞく)を公言してた」

宙地原族そらちのはらぞく!? あの男が……?」


 響華きょうかが眉を潜め、敦美あつみは静かに頷いた。


「アンタがぶっ飛ばしたって聞いたけど、それが本当ならまずかったんじゃないの? 皇族でしょ」

「まだ誰も彼を皇族だと認識してないから、ただの犯罪者だよ」

「言うわね」


 響華きょうかは笑った。

 敦美あつみも微かに笑い返す。


「――でも、逃げられた。ただ、手応えはあったから負傷はしているはず」

「しばらくは、動きを封じられたってとこね」

「――攻撃するか、結構悩んだよ」

「何でよ?」

「――水城みずしろ君の味方のような口振りだったから。実際、彼が水城みずしろ君が毒を口にするのを防いでくれた」

「毒!? 彼は月族つきぞくでしょ。大地族だいちぞくに命を狙われる要素なんてないはずよね!?」


 響華きょうかは目を丸くして驚いた。

 敦美あつみは前方をきつく睨みつけながら苦々しく話す。


「――その思い込みで、私も水族みずぞくも、水城みずしろ君が口にするものをあまり気にしていなかったの。特に水族みずぞくは、飲み水に毒が混ぜられていても脅威にならないから、本当に気にならなくて盲点な部分だった。私達は電牙でんかび葦成あししげに、宙地原族そらちのはらぞく水城みずしろ君の命を狙っているって指摘されてようやく――2度とこんなこと起こさせない」


宙地原族そらちのはらぞくの……電牙でんかび葦成あししげ、ね」


 響華きょうかは微かに顔色をかげらせてぽつりと呟いた。


「……そっか。アイツ、電脳族でんのうぞくのくせに機械族きかいぞく敦美あつみじゃなく、私の好感度が異様に高いわけもようやく分かったわ。道理で――」

「――え?」

「……ストーカー族長の話よ。今考えると、確かに中身が太陽族たいようぞくっぽいのよね。気にくわない立場を正そうとする姿勢とか、電脳族でんのうぞく一族を纏めようとする、リーダーみたいな気質も含めて」

「――電拳でんつか族長の件は、まだ推測の域は出ないよ」


「だけど、敦美あつみ。9年前の領王制度廃止案ってやつの口約束を『皇帝』陛下がわざわざ実行した理由にもなりえるわよ。あの話、正直眉唾(まゆつば)ものだったのよね。電脳族でんのうぞくの族長が直接抗議しにきたからって、『皇帝』陛下が改善策をやってあげるって話に普通ならないわよね? 電脳族でんのうぞくは底辺の、地位すら存在しない種族なのよ。でも電脳族でんのうぞく族長が『皇帝』陛下の外戚なら話は変わってくるわ。『皇帝』陛下は、アイツを身内の1人にカウントしていたんじゃない?」


「――そうかもしれない。それに、宙地原族そらちのはらぞくもそう扱っていたと私は思っている」


 敦美あつみ響華きょうかは顔を見合わせ、互いに思い思いの嘆息を零した。


「なんか死んでから急に重要人物臭さが増したわね……。そういう意味でも、どうしようもないくらい厄介な男だわ」

「――私があい領地から追い出したせいで、真相は闇の中になった」

敦美あつみの? 違うわ。あの男の馬鹿馬鹿しい日頃の愚行のせいでしょ」


 響華きょうか敦美あつみの額を軽く指で弾くと、遠くなった刃佐間はざま家を振り返り見つめた。


「あの男、本当に馬鹿だったわよ。地位なんてものにこだわらなければ死ぬこともなかったんじゃないの」


 響華きょうかの憂いを帯びた横顔に敦美あつみは気付く。


「――響華きょうか……?」

敦美あつみも見たわよね。私に向けた辛夷こぶし火上ひかみ『領王』の動画」

「――うん」

「私、10年前に次期火族(ひぞく)の族長になることが決められたわ。火族ひぞく族長になるための条件は、現族長から炎乃えんの姓を授かること、それと素質だけじゃなく『領王』になって実力を示すことよ」

「――だから弟子になったんだね」

「まぁ、そうね。でも人に怪我させないためにって、昔敦美(あつみ)に話した理由も嘘じゃないわ。むしろ私本人の理由はそれ。火族ひぞく族長を目指そうなんて思ったことすらないのよ。だからかしらね。巫倉みくら風我かざわ師匠とあい領地を出て行った時、火族ひぞく族長も『領王』も、私は心底なりたくないって思ったわ。私は2人について行きたかったわけじゃないけど、私が選ぶ前から身動き出来ない理由があったこと自体が理不尽で、堪らなく嫌だったのよ」


 響華きょうかは真紅の瞳を揺らせて苦笑する。普段の強気な響華きょうかとはまるで違う、弱々しい表情だった。


「闘技大会の前日に、両親に気持ちを伝えたわ。あの人達、何て言っていたかしらね。確かそう、「火上ひかみかたに無理に譲ってもらった炎乃えんの姓。私達に恥をかかせないでちゃんと『領王』になってきなさい」だったかしら。何なのかしらね? 両親は私を火族ひぞく族長以外にする気もなければ、まるで私が負けないと思っている傲慢な台詞しか言ってくれなかったわ。私は勝手に将来を決定されて腹が立った。普通の女の子として平凡に生きる道すらないなんておかしいじゃない。でも私は子供で、帰る家はそんな両親のところだけ」


「――それが、あの滅茶苦茶にした上位順位決定戦の試合……?」

「ええ。子供の反抗。両親への当てつけだったわ」


 響華きょうかはそこまで話すと、腰に手をやって夜空を見上げる。雲に隠れて星は全く見えなかった。


「あの時の馬鹿な子供のわがままが、未だに皆に迷惑を掛け続けているのよね。嫌なら闘技大会に出なきゃ良かっただけよ。それが最良だったはず。本当、よくもあそこまで中途半端なことが出来たわねって感じ」


 敦美あつみは、隣で黙って響華きょうかの自嘲を聞いていた。


「私、あれから後悔しないで生きてきたつもりだったわ。でも最近、あの9年前の試合を悔やむ自分がどこかにいるのよ。真面目にやれば私は敦美あつみに勝てたのか、それとも負けたのか? ……もし私があい領地の『領王』になっていれば、火族ひぞくの族長として、敦美あつみと、敦美あつみの大事な彼と水族みずぞくの味方になって大地族だいちぞくをどうにか出来たのにってね」

「――らしくないよ、響華きょうか

「ええ。そう、なのよね。こんなの全然私じゃないのよ!」


 響華きょうかは力強くそう言い切ると、敦美あつみに不敵な笑みを向けた。

 いつも通りの響華きょうかに戻って敦美あつみも安堵する。


「アンタに話して結構すっきりしたわ。ありがと」

「――私の方こそ響華きょうかに心配掛けてたんだね。ごめん」

「謝ることないわ。こっちが勝手にぐずぐずと考えていたってだけじゃない」

「――あ。響華きょうか

「ん?」

「――巫倉みくらなら、あい領地に帰って来て公共の電脳を乗っ取っているよ。電牙でんかび葦成あししげに協力しているみたい」

「は……?」


 響華きょうかの目が点になった。そして段々と目が据わってくる。


「……どういうことかしら。アンタ、今の今まで私に言うのを忘れていたみたいに聞こえたわね……?」


 敦美あつみはさっと響華きょうかから目を逸らす。

 その瞬間、響華きょうかは柳眉を釣り上げた。


敦美あつみぃーッ!!」


 夜道に響華きょうかの怒声が木霊こだました。









 あれから敦美あつみは、響華きょうかの怒りを何とか静めて家路についた。

 敦美あつみが次元移動で玄関の前に出て扉を開けると、弟の仁芸にぎが青白い顔で待ち構えていて面くらう。


「――ただいま。何しているの、仁芸にぎ

「ね、姉ちゃん、おかえり……。で、電拳でんつかさん……っが……」

「――うん。でも仁芸にぎが気に病むことないよ」


 敦美あつみは、つるぎ仁芸にぎにつきまとったためにあい領地からつるぎを追い出したのだ。つるぎが亡くなったことで被害者だった仁芸にぎが気に病んでいるのだろうと思い、慰めの言葉を掛けた。

 ところが仁芸にぎは小刻みに震えながら涙声で訴える。


「ど、どうしよう……っ。俺無理だよ……!? こんな知らないものや人ばっかり、どうにか出来そうにない……! こ、こうなった、で、でで電拳でんつかさんのサーチだなんて……っ」

「――え?」


 仁芸にぎの様子がおかしい。よく見ると、仁芸にぎの両手は携帯端末を持って震えていた。


「『あいらふらいふ』アプリに……お、俺宛てのアップデートが。あの、姉ちゃんの友達の水城みずしろさんのやつ……」


 敦美あつみは弾かれるように、仁芸にぎが遠慮がちに差し出していた携帯端末を受け取る。内容を見て敦美あつみは顔を強張らせた。


「――仁芸にぎ、新しい携帯を買ってあげる。その代わり、これは貰う」

「分かった……。姉ちゃん、電拳でんつかさんの遺言さ、出来るだけ信じて叶えてあげて欲しい……! 頼む!」


 仁芸にぎはそれだけ言い切り、慌ただしくこの場を後にした。

 敦美あつみの提案に文句がないのは、仁芸にぎ自身が始めから携帯端末を敦美あつみに渡そうと考えていたからだろう。だから仁芸にぎは、敦美あつみの帰宅を玄関でひたすら待っていたのだ。

 敦美あつみは改めて携帯端末の画面を見る。

 そこには『あいらふらいふ』アプリのスタート画面を背景にメモが表示されていた。メモにはつるぎからのメッセージが書かれている。





『博士へ。〝水城みずしろ輝夜てるやすED(エンド)残りの分岐を全て追加。これが最後のアップデートだよ。現実で順番ずつ条件を満たして、6番目の真ED(エンド)を目指してみて。それで俺の視た世界の終焉が全て終わる。



 1・プレイヤー死別ED(エンド)……〈条件〉〝翡翠ひすい革命〟〝あい領地『領王』が機國きぐに敦美あつみ


 2・水城みずしろ輝夜てるやす葬式ED(エンド)……〈条件〉〝地下運河発見〟


 3・水城みずしろ輝夜てるやす失踪ED(エンド)……〈条件〉〝豪華客船の停泊〟〝あい領地電脳支配をしていない電拳でんつかつるぎの死亡〟


 4・滅亡来襲ED(エンド)……〈条件〉〝『黄泉ヨモツオンライン』炎乃えんの響華きょうかがプレイ〟〝影法師の目撃〟


 5・御三家崩壊ED(エンド)……〈条件〉〝月族つきぞく本家を炎乃えんの響華きょうか機國きぐに敦美あつみ電照でんしょう巫倉みくらが来訪〟〝獣櫛じゅうくし涼柁りょうたの御大襲名〟


 6・真・宙地原そらちのはら世界ED(エンド)……〈条件〉〝あい領地の闘技大会で以下の出場者が揃う。水名みずな篁朝たかとき風我かざわゆい水名みずなとおる電須でんす佐由さよし



 現在、10の条件のうち、〝翡翠ひすい革命〟〝あい領地『領王』が機國きぐに敦美あつみ〟〝地下運河発見〟〝豪華客船の停泊〟〝あい領地電脳支配をしていない電拳でんつかつるぎの死亡〟の5つがクリア済み。いやクリア予定かな? 博士、前に嫌なこと言ってごめん。じゃあね』





 敦美あつみは目を通して絶句する。これから起こる未来が全て書かれているような内容だった。真実かは分からない。だが、つるぎはこれが全て真実と信じて行動していた節がある。


 条件の1つ、〝あい領地電脳支配をしていない電拳でんつかつるぎの死亡〟


 つるぎは1年前にあい領地から追い出されるまでは、あい領地の公共の電脳支配に執着していた。自分自身の死亡を回避するための行動だったのかと思うと、敦美あつみの背に冷たい汗が流れる。そんな彼を敦美あつみあい領地から追い出したのだ。


 一旦、敦美あつみは深呼吸をする。

 ふぅっと重い溜息を吐き出して気持ちを切り替えた。


(後悔はしない――……。だってこれが本当なら、電拳でんつか族長を助けると水城みずしろ君が危険なんだもの……!)


 敦美あつみにはつるぎを犠牲にしてでも譲れない命がある。昔、選択の重要性を風我かざわゆいに教えられた。決断は、希望するものを選ぶのではなく、切り捨てられるものを決めてから選ぶのだと。そこに切り捨てるものへの思いやりや優しさなんて同情の感情を入れてはならない。


 敦美あつみつるぎの予言を信じることに決めた。

 今は恐らく2番目の〝水城みずしろ輝夜てるやす葬式ED(エンド)〟の状態。

 3番目の〝水城みずしろ輝夜てるやす失踪ED(エンド)〟に変えてゲーム内容を把握しなければならない。失踪という単語は不穏だが葬式より幾分もマシだと思える。




 敦美あつみは次元移動で港に飛んだ。くず領地の豪華客船を携帯端末で撮る。

 それから再び、刃佐間はざまの家に行った。遺体を撮るのは酷く不快な行為だったが、亡くなった本人が作ったゲームシステムでもある。敦美あつみは気分の悪さをぐっと我慢して、つるぎを携帯端末で撮った。

 すると、『あいらふらいふ』アプリのゲーム内でアナウンス表示がされる。



『終焉回避キーワード、豪華客船の停泊と電拳でんつかつるぎの死亡を確認』『水城みずしろ輝夜てるやすED(エンド)での失踪ルート解放』



(自分の遺体を撮らせるなんて、どうかしてるよ……)


 これを仁芸にぎにさせようとしていたのだ。悪趣味でしかない。

 胸中でつるぎをなじっていると、刃佐間はざまが神妙な面持ちで敦美あつみの傍にやって来た。

 敦美あつみは詫びの言葉を告げる。


「――度々、ごめんなさい。それにこんな恥知らずな真似をして」

「構いません」


 刃佐間はざまは慇懃に頷き、つるぎに視線を向ける。敦美あつみの行動はつるぎが絡んでいると彼なりに察しているようだった。刃佐間はざまは姿勢を正し、敦美あつみに深く頭を下げる。


「『領王』様、お願いがあります」

「――何……?」

翡翠ひすい領地監督のための赴任は、ぜひともこの刃佐間はざまに命じていただきたい」


 敦美あつみ刃佐間はざまの予期せぬ提案に目をみはった。


「――刃佐間はざま。でも今は」

「領地防衛、更に月族つきぞくの御方の護衛役として、上位領地ランカーの数が足りていない現状は重々承知しております。ですが、私はそもそも守りの手段を持たぬ能力者。戦場に赴いた方がまだ使える人間だと自負しております」

「――……」

つるぎが荒らしたという翡翠ひすい領地。彼の保護者として責任を取らせて下さい。代わりと言っては何ですが、私が領地ランカーから大地族だいちぞくを排除致します」

「――土部つちべをともに連れて行くんだね」

「はい。此度の件は、領地ランカーの仕事の名目で正々堂々と大地族だいちぞくの領地ランカーをあい領地から引き離す絶好の機会かと。砂岳さたけ先輩からも、土部つちべの面倒を頼まれています。どうぞお任せ下さい。土部つちべにも、大地族だいちぞくの犠牲者を見せる意義はあると考えております」

「――分かった。土部つちべをお願い」

「はっ」


 刃佐間はざまの敬礼を受け、敦美あつみは最後に黙祷をして刃佐間はざま家を後にする。

 結局(つるぎ)の通夜に参列する形となった。

 ふと、つるぎ仁芸にぎに参列して欲しかったのではないかと思う。


 こうでもしないと、誰も自分の葬儀には来ないと彼は思っていたのかもしれない。



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