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眠る月の皇子  作者: 古波萩子
第3章 叡智の眺め、MMO『黄泉オンライン』
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 第12話 『黄泉オンライン』 その6・皇族派閥の差違


《 >>水城輝夜:俺、家から出たらだめなんだけど!? 

  ハナヤギヒビキ>>敦美が帰って来たら教えるから電話してみて 

  >>水城輝夜:電話!?

  ハナヤギヒビキ>>前に連絡したって聞いてる。履歴に敦美の番号あるでしょ  》



(いやいやいや、仁芸にぎ君の番号しかないよ!? これ本当に電話して大丈夫!?)


 ヒイイィ……ッと輝夜てるやすは内心絶叫して自身の携帯電話履歴を見つめていた。持つ手がブルブルと震える。バクバクと動悸もしてきた。


 想いを伝える――一体どんな言葉で告白すればいいのだろう。「好き」の一言でいいとは思えない。「付き合って欲しい」と――? いや、輝夜てるやすは家出する算段をしているのに今後も一緒に居て欲しいと伝えるのはおかしいことである。では何をどう告白すればいいのだろう。そもそも何故告白するのが決定になっているのだろうか。

 輝夜てるやすはぐるぐると色々な思いが頭の中を駆け巡り、混乱の極みだった。


 響華きょうかはそんな輝夜の胸中をおもんばかることもなく、敦美あつみへの告白を決定事項としてサクサクと話を変える。



《 ハナヤギヒビキ>>じゃ、それまでレベル上げする? まだ他領地に移動出来るほどレベル上がってないみたいだし付き合うわ。団を作ってもいいわね 》



 そういえば、響華きょうかのキャラクターは辛夷こぶし領地出身として作ったと聞いていた。輝夜てるやすがいるのはたけ領地。響華きょうかは既にレベル25になっているのだ。輝夜てるやすの方は未だレベル4である。



《 ハナヤギヒビキ>>太陽族派閥は経験値アップの恩恵が大きいから。輝夜は経験値の恩恵無い月族派閥だからレベルが上がりにくいみたいね 》



 輝夜てるやす響華きょうかとパーティーを組んでレベル上げをすることになった。告白のことで気もそぞろな輝夜てるやすに、響華きょうかはこれまでのゲーム内での話を語る。

 響華きょうか達には、逐一電谷(でんや)から進行状態やゲーム内容について細かい報告があるらしい。その報告で比較すると、それぞれのゲーム内容にはかなりの差違があるのだそうだ。



《 ハナヤギヒビキ>>メインの神祇官。選んだ皇族派閥によって内容がスッカスカになるみたい。太陽族派閥の私と宙地原族派閥の敦美だと、霞も出て来ないしコウヨウ様のムービーがほとんど無い 》



(へ……?)



《 >>水城輝夜:何それ。領地が違うせいで?

  ハナヤギヒビキ>>攻略サイトの皇族派閥を見てみなさい 》



 輝夜てるやす響華きょうかに促され、〝よもぎ〟というプレイヤーが管理している『黄泉よもつオンライン』の攻略サイトを開いた。皇族派閥の項目を見る。



《 【所属する皇族派閥の比較】

  キャラクター作成時に選べる皇族派閥の恩恵は以下のものである。

  ●太陽族たいようぞく派閥……経験値+5%

  ●月族つきぞく派閥……特になし

  ●宙地原族そらちのはらぞく派閥……領地間移動費の半額


 ※※一見、何もメリットが無い月族つきぞく派閥には重大な隠し恩恵が存在する※※

  ①メインストーリーの増量

  ②メインストーリーにムービー増加(他派閥には存在しないムービー有り)

  ③闇族やみぞく神祇官じんぎかん見習いキャラクターの追加と、闇族やみぞく光族ひかりぞくの特殊シナリオ 

  ④大規模種族戦争イベント参加不可(※デメリット)

  ⑤パーティーを組んだ際、他派閥プレイヤーの取得経験値を半減。更に敵の攻撃30%カット(※デメリット?)


 〈他2つの隠し恩恵〉

  ・太陽族たいようぞく派閥……『皇帝』勅令イベント(大規模種族戦争の戦争先投票権)

  ・宙地原族そらちのはらぞく派閥……電脳族でんのうぞく族長会談イベント(他派閥では発生しない) 》



(え……何だこれ……)


 月族つきぞく派閥はキャラクター作成時に説明されないのがおかしいほど、メインストーリー面で優遇されているらしい。それと同時に、月族つきぞく派閥を選んで検証した人がいたのだということがこのサイトの情報量から窺え、輝夜てるやすは少し嬉しくもあった。

 響華きょうかの話によると、メインストーリーは更に出身領地でも分岐しているらしく、辛夷こぶし領地スタートだと牢獄から始まる。獄中で辛夷こぶし領主と会い、記憶喪失の旨を話して神祇官じんぎかんに会う流れだとか。辛夷こぶし領主は火辺ひべ権太ごんだという人物で、現実では火族ひぞく族長だそうだ。



《 >>水城輝夜:辛夷って火族本家の土地だったんだ

  ハナヤギヒビキ>>違う。火族の支配領地の1つが辛夷ってだけ。本家は椿

  >>水城輝夜:火族は領地が1つじゃないのか

  ハナヤギヒビキ>>そ。火上領王じゃなく族長に出てこられるとは思わなかった 》



 ゲーム内でヒビキが頭を抱えるエモートをする。響華きょうかにとって、とてもショッキングな人選らしい。考えてみれば、本家の領地以外で出て来た人物はつまるところこのゲーム内で族長では無いということである。輝夜てるやすも、水族みずぞく本家のあるたけ領地の領主として水名みずな晴樹はるき族長以外が出てきたら、少なからずショックを受けたと思う。



《 ハナヤギヒビキ>>宙地原族派閥のみが会える電脳族族長なんてもっとぶっ飛んだ配役だったし

  >>水城輝夜:え? 》



 興味を惹かれてチャットを待ってみたが、響華きょうかからその返答は無かった。

 代わりに、



《 ハナヤギヒビキ>>それより輝夜。ゲームは上の空でいいから告白内容ちゃんと考えときなさいよ 》



 強い念押しが入り、輝夜てるやすはPC前で真っ赤な顔を覆った。

 この外堀を埋められた感は何なのだろう。恥ずかしさで人は死ねるんじゃないかと半ば本気で思った輝夜てるやすである。





                 ◇◇◇





 15時。敦美あつみは朝から詰めていた領王執務室から一旦自宅に帰った。


 あい領地の共用電脳の支配権を握った相手を、幼馴染みの電照でんしょう巫倉みくらと仮想敵に定めた敦美あつみは、今日はずっと電脳ハッキング戦をしていた。そして遂に支配権を奪い返したのである。

 いくら電脳能力で巫倉みくらの方が格上でも、『領王』の敦美あつみとは精神メンタルに雲泥の差がある。気弱で常に全力が出せない巫倉みくらの性質上、敦美あつみが粘れば粘るほど、彼女だったならプレッシャーと焦りでミスを増やしていくだろうと思っていた。勝てなくても、完璧に敦美あつみが引き分け続ける操作をしていれば、時間が経つごとに盛り返して軍配が上がるのだ。

 何より相手が巫倉みくらなら手の内を知り尽くしていると言っていい。ここでこけるだろうなと思うところで本当にミスを出した時は、つい吹き出してしまった。やっぱり相手は巫倉みくらだなぁと再確認もしたのである。

 電脳ハッキング戦は敦美あつみの勝利で終わり、再び奪い返しに来る気配もない。流石に疲れたので家に戻って来たのだ。


「――ただいま」

「おかえり」


 母親以外の女性の声音に、敦美あつみは自室ではなくリビングに顔を出す。


「――響華きょうか、進んだ?」

「アンタ開口一番に聞くのがゲーム進行なわけ? やっぱり電脳族でんのうぞくのようね」

「――……」


 無言でジロリとソファでくつろぐ響華きょうかを睨む。

 しかし軽口を叩いた響華きょうかひょう々と敦美あつみの抗議を流してアップルティーを飲んでいた。



 昨夜、『黄泉よもつオンライン』で宙地原族そらちのはらぞく派閥を選んだ敦美あつみは、ゲーム世界の電脳族でんのうぞく族長会談イベントで非常に奇怪なものを見せられていた。


 ――電脳族でんのうぞく族長、電照でんしょう敦美あつみ


 名前どころか見た目も敦美あつみそっくりのNPCで、未だにどう受け止めるべきか悩んでいる。

 敦美あつみはこの設定について考えるたびに、機械族きかいぞく機条きじょう族長の言葉を思い出していた。


『私には、君が機械族きかいぞくの族長に収まる未来が見えない』


 あれは、機械族きかいぞく族長ではなく電脳族でんのうぞく族長になる未来の可能性を示唆していたのだろうか――……?

 馬鹿馬鹿しいと思う。敦美あつみはまごう事なき機械族きかいぞくなのだから。


 だが、この『黄泉よもつオンライン』の世界は、どうやら電脳族でんのうぞくの地位が機械族きかいぞくより高い。その影響が機械族きかいぞく敦美あつみ電照でんしょう家の養子にしている配置なのだと考えられる。

 まさか電須でんす佐由さよしの願望が反映されているのだろうか。彼に対しては、いまいち権力志向のイメージが湧かない。もしその志向があるのなら、別次元のあい領地の裏側に引き籠もっている意味が分からなくなる。


(『黄泉よもつオンライン』に電須でんす佐由さよしは居るのかな。もし居るならそっちはどんな考えの人間……?)


 あまり深く意識してこなかったが、佐由さよし巫倉みくらの実兄で、敦美あつみのもう1人の従兄弟に他ならない。敦美あつみをゲーム内で義妹に設定している彼の心情は一体どんなものなのだろう。

 敦美あつみのことを彼は憎からず思っている――いや、本当に親しい親戚だと思っていたのかと、ゲームに触れて面食らったぐらいだ。そういう面からも敦美あつみは困惑している。


敦美あつみ。最近学校で何かあった?」

「――学校?」

「変な噂とか」


 響華きょうかが静かにアップルティーのカップを見つめている。敦美あつみはその凜とした横顔を眺めながら、響華きょうかと同じくらい学校に近寄っていないと、ここ最近の自身の状況に胸中で溜息を零す。


「――そういえば少し前に、電谷でんや水城みずしろ君のことで変な噂が流れてて、多分大地族(だいちぞく)が流してる! って息巻いていたと思う」

「その電谷でんや。今日キレて英貴ひでき達に噛みついてたわよ」


電谷でんやが……?)


 想像がつかず眉を潜めた。響華きょうかは不快感を隠さず、その表情は酷く険しい。


「あんまり聞き取れなかったのよね。でも廊下まで電谷でんやの怒鳴り声が聞こえていたわ。噂のことでくってかかってたっぽいのよ。電谷でんやに事情聞いておいた方がいいわ」


 敦美あつみは頷き、空中に電脳画面を出した。電谷でんやに連絡するが繋がらない。


「――電源切ってる」

「あー……、結構酷い目に遭わされてたから1人になりたいんじゃない。あれから時間は経ってるけど、まだ無理みたいね」

「――酷い目って、水瀬みずせ達に……?」

「まさか上位領地ランカーの人間に、卑劣な弱い者苛めをしている現場を見せられるとは思わなかったわ。あいの上位ランカーの男って最低なのしかいないわね!」


 響華きょうかが怒りを滲ませて声を荒げる。

 敦美あつみ響華きょうかの剣幕に、眉間の皺を寄せた。余程のことがあったのだ。


「――響華きょうかあずまは今いないから」

「……そうだったわね。秀寿ひでとし以外は愚鈍男どもで訂正しておく。秀寿ひでとしがいたら英貴ひでき達を止めてたわよ。非戦闘種族に力の暴力なんてありえないわ」


 敦美あつみも嫌悪感に顔をしかめる。何も攻撃手段のない電谷でんやに、英貴ひでき達は種族能力を使ったのか。


「――あずま電谷でんや、結構仲良いからね」

「そう、意外とね。雷族かみなりぞく電脳族でんのうぞくの天敵種族なのに電谷でんやは懐いてるわよね」


(それに比べて、電拳でんつか族長はあずまのことを物凄く怖がってた。あい領地から直接実力行使で追い出したのがあずまだったからかな。……懐かしい)


「――あ」

「何?」


 敦美あつみ電拳でんつかつるぎの顔で次元に投げ入れて放置していた花束を思い出し、次元空間から取り出した。白薔薇(ばら)の花束はくたりと色あせている。


「――忘れてた」

「うわっ、何よそれ」

「――灰兼はいかね『領王』の挨拶」

「……引くわね」

「――百本あるよ。半分いる?」

「枯れてるじゃないの」

「――まだ元気な子も……」


 枯れていない薔薇をより分けると、奥からメッセージカードが出て来た。敦美あつみはそれを手に取り、無表情でじっと見つめる。響華きょうかがからかうように口角を上げた。


「あら、ナンパ? まさか通じもしない連絡先でも書いてるの」

「――似たようなものだよ」


 シュッと指の間に挟んだカードを響華きょうかへ投げる。響華きょうかは受け取ったカードに口笛を吹いた。



 『しじまの鐘、ひなたぼっこ』



 一見、意味不明の羅列だが、2人は『黄泉よもつオンライン』のプレイヤー名と所属団名だと察する。ここのところ覗いている攻略サイトの管理人〝よもぎ〟が、自身のプロフィールに〝ひなたぼっこ団所属〟と記載していてよく目に入る言葉でもあった。


敦美あつみくず領地の『領王』にマークされてたわけね」

「――おかしい。灰兼はいかね『領王』は私をあなどってたはず……。こんなコンタクトを取ろうとする感じじゃなかったよ」

「うちに水城みずしろ篁朝たかときがいたから、アンタがゲームやっているかの一応の確認じゃない? どうせゲームやってない奴には謎の文字の羅列だし、その意味に敦美あつみが頭を悩ませて勝手に混乱してれば、それはそれであざ笑える。でも敦美あつみの反応を特に見る気は無い。どうでもいい――要は悪意のある悪戯いたずらね」


 敦美あつみが微かに眉根を寄せる。あい領地を巻き込んで翡翠ひすい領地ランカー達をはめた策といい、灰兼はいかねおもいの印象がどんどん悪くなっていく。

 そんな敦美あつみとは対照的に、響華きょうかは真紅の瞳を細めて楽しげにカードを見ていた。


 ガチャッと玄関の扉を開ける音がして、弟の仁芸にぎがリビングに入って来る。響華きょうか敦美あつみの姿に驚いて固まった。

 すかさず、仁芸にぎの頭に敦美あつみが手刀を落とす。「――ただいまは?」と凄むと、「た、ただいま……っ」と響華きょうかをチラチラ見ながら頬を赤くして、怒ったようなふて腐れた顔で仁芸にぎ敦美あつみの横を通り、冷蔵庫を開けて飲み物を出した。

 その背中を見て敦美あつみは嘆息すると、再び響華きょうかに視線を戻す。響華きょうかはカードをテーブルに放り投げて不敵な笑みを零した。


灰兼はいかね『領王』、ね。興味出てきたわ。折角(あい)領地に来ていたんだから会っておくんだった。惜しいことしたわね」

「――響華きょうか。こんな陰険な人が好みなの……?」

「こう、自分より強くて、すかしてちょっかいかけてくるような男の横っ面って張り倒してやりたくならない?」

「――……」


 同意しかねる。敦美あつみは全くやり返したいとは思わないので無言を返す。

 すると、飲み物を持ってさっさと地下の自室へ引っ込むと思っていた仁芸にぎが、響華きょうかの近くで足を止めた。


「きょ、響華きょうかさんは、自分より強い男がタイプなんですか……!?」

「は?」


 響華きょうかは脈絡のない仁芸にぎの問いに片眉を上げた。


「……まぁ、そうね。中途半端に強い男にろくなのがいないって分かったから、私より弱い男はもう論外でいいわ。つき合うのもウンザリ。期待するのも馬鹿みたいだわ」

「――響華きょうか……風我かざわ師匠と同じこと言い出してる」

「うっさいわねぇ」


 敦美あつみが呆れを含んだ目を響華きょうかに向け、響華きょうかはそんな視線を流してふっと柔らかく笑った。


「だから、悪いわね……敦美あつみ

「――え?」

「私、アンタより強い男の味方になることにしたわ」


 響華きょうかが満面の笑みを敦美あつみに浮かべる。これまで見たことがない晴れ晴れとした笑顔の表情だった。

 敦美あつみは真っ正面から向けられたその華やかな笑顔に戸惑いを抱く。


きょう…………?)


 響華きょうかが何かを決断したと思った。

 今まで『領王』の地位も、領地ランカーの立場も、普通の学生生活すら投げ捨てて、何も選ばず縛られずに自由に生きてきた響華きょうかが――……


「ねぇ、敦美あつみ。今日はこれから仕事の予定あるかしら?」


 手元に戻ってきたあい領地の共用電脳の支配権を電徳でんとく遙一よういちに渡す必要があるが、それは明日でもいい。頭の片隅で明日の予定を立てて響華きょうかに答える。


「――今日はもう無いよ」

「そう」


 響華きょうかがニヤリと笑った。真紅の瞳をキラリと輝かせ、どこか悪戯をたくらんでいる表情である。敦美あつみは長年の付き合いから、この幼馴染みが何か仕掛けてくると内心身構えた。

 ふと思い立ち、敦美あつみはポケットから仁芸にぎの携帯端末を取り出す。『あいらふらいふ』アプリのために、『黄泉よもつオンライン』を遊んでいる響華きょうかの姿を撮っていないことを思い出したのだ。

 仁芸にぎは携帯端末を見て、はっとすると慌てた。


「そっ、そうだ、姉ちゃん! 俺の携帯番号、別のに変更しといた! 知り合いにも新しい番号教えたし、その……姉ちゃんに連絡する人には姉ちゃんの番号教えといたから……」


 最後はごにょごにょと尻すぼみになる仁芸にぎに、敦美あつみは頷きつつも「――私に連絡?」と首を傾げる。それだけ言うと、そそくさとこの場から仁芸にぎは去って行った。



 敦美あつみの自室に移動して、響華きょうかと『黄泉よもつオンライン』の画面が入るように写真を撮ってみる。ところが『あいらふらいふ』アプリは反応しなかった。


「――?『黄泉よもつオンライン』を響華きょうかが遊ぶのが条件のはずだけど」

「もしかして、私自身より私の作ったキャラが重要なんじゃない?」


 響華きょうかに言われて、響華きょうかのキャラクター〝ハナヤギヒビキ〟のステータスを映したPC画面を撮る。そうすると『あいらふらいふ』アプリのゲーム内で『終焉回避キーワード、『黄泉よもつオンライン』炎乃えんの響華きょうかがプレイを確認』とアナウンス表示が出た。

 認識されたことにほっとする。響華きょうかを見ると、キーボードをぽちぽちと触っていた。


「――何してるの?」

「ちょっとチャットをね。……あら、プレイヤー検索で〝しじまの鐘〟って奴、本当にいるわね。後でゲーム内メール送ってみたら?」

「――響華きょうかは送らないの? 張り倒したいって言ってたじゃない」

「メッセージカード貰ったのはアンタでしょ」


 直後に、敦美あつみの目の前に受話器のアイコンが浮かぶ。電話だ。

 しかし、見覚えの無い番号だったので瞬時に発信元の解析をする。

 水城みずしろ家からだった。敦美あつみは目をみはる。


(えっ……まさか水城みずしろ君……!? どうして!?)


 わたわたと焦る敦美あつみの視界の隅で、響華きょうかがにんまりと笑う姿が目に入る。綺麗な真紅の瞳は喜色を滲ませ、悪戯が成功したと語っていた。

 敦美は瞬間的に頬を朱に染める。仏頂面を作り、響華きょうかを睨み付けて1度深く息を吐き出す。

 落ち着かなければ。仁芸にぎ敦美あつみの連絡先を教えたと言っていたのはこのことだろう。きっと用事があるのだ。

 出来るだけ落ち着いた声音を出せるように咳払いをして、敦美あつみは電話のアイコンを押す。


「――はい」

『も、もしもし……機國きぐにさん。み、水城みずしろです』


 緊張した輝夜てるやすの声が聞こえてきて、敦美あつみの鼓動が高鳴った。

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